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「野田琺瑯」の製品がフルナインアップ、清澄白河に初の直営店がオープン

店舗限定のアイテムも先行・限定販売

Kaoru Hoshino
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Kaoru Hoshino
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野田琺瑯
Photo: Kisa Toyoshima | 内観
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清澄庭園にほど近い住宅街の一角に、1934年創業の日本のほうろうメーカー「野田琺瑯」の待望の直営店がオープンした。真っ白なほうろう製品を思わせる白を基調とした外観は、下町の街並みに馴染んでいる。

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Photo: Kisa Toyoshima外観

意外にも、創業90年余りの歴史の中で全製品が揃う直営店はこれまでなかったが、長年のファンからの熱い声に応える形でついに誕生した。店内に入ると、まず目を惹くのがアイランドキッチンだ。

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Photo: Kisa Toyoshimaアンティークな雰囲気漂う12角形の「ロイヤルクラシックケトル」

まるで実際の生活空間のようなディスプレイで、客は自分の暮らしの中でほうろうを使うシーンを具体的に想像しながら買い物を楽しめる。ここでは単に商品を販売するだけでなく、作り手と使い手が交わる場所を目指しているという。

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Photo: Kisa Toyoshima内観

職人技が宿るほうろう

そもそもほうろうとは、鋼板の表面にガラス質の釉薬(ゆうやく)を焼き付けることで生まれる素材。野田琺瑯の工場では、土台を成形後、下地の釉薬を約850度で焼き付け、その上にそれぞれの色の釉薬を重ねて焼成している。

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Photo: Kisa Toyoshima内観

見た目が均一なほうろうは、一見すると機械で作られた工業製品と思われがちだが、実は熟練の職人技に支えられている。たとえば、成形した鉄を歪ませずにヤットコで掴む作業は、習得に10年はかかるという。

また、釉薬を均等に施す作業にも長年の経験を要する。ほうろうとは、一つ一つに人の手が吹き込まれた工芸品でもあるのだ。

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Photo: Kisa Toyoshima成形した鋼板に下地の釉薬をかける様子を撮影した写真

長く愛される理由

表面がガラス質であるほうろうは、食材の臭いや色移りがないため、ジャムなど酸の強い食品や、梅干し、ラッキョウ、味噌といった保存食に適している。

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Photo: Kisa Toyoshima創業初期から製造している「ホーロータンク」

電子レンジは使えないが、直火やオーブンに対応している製品が多く、IH調理器との相性の良さでも注目されている。IHは磁力によって鉄を直接加熱するため、鉄を下地に持つほうろうは熱効率が高く、エネルギーロスが少ないのだ。

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Photo: Kisa Toyoshima内観

丁寧に扱えば長く使用できるのも長所。創業者の家族で専務の野田和聖は「親子3代にわたって受け継がれている製品もあり、長く愛用されることがメーカーとしての誇りです」と語る。

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Photo: Kisa Toyoshima「野田家では日常生活のほとんどでほうろう製品を使用しているんですよ」

そんな魅力尽くしのほうろうだが、時代の移り変わりとともにタッパーなどが台頭し、かつて日本に100社以上あったほうろうメーカーは衰退。現在、国内で鋼板ほうろう造りの全工程を自社で一貫生産しているのは野田琺瑯のわずか1社のみとなった。

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Photo: Kisa Toyoshimaビーカーの内側に記された「メヤス」に、時代の大らかさを感じる

ここでしか手に入らない限定アイテム

1970年代には花柄が描かれたほうろう鍋が結婚祝いの定番となるなど、かつては生活に欠かせない存在だった。中でも梅干しやぬか漬けを仕込む保存容器は各家庭の必需品であり、梅やラッキョウが出回る6月がメーカーの繁忙期だったという。ほうろうにシーズンがあったというのは、今聞くと新鮮な驚きがある。

店内には、創業当初から愛され続けるロングセラーをはじめ、2003年の発売以来、今や台所の定番となった「ホワイトシリーズ」、さらには店舗先行販売品や、ここでしか手に入らない限定アイテムまで全製品がずらりと並ぶ。これまで全製品を一度に見られる機会はほとんどなかっただけに、ファンにとってはたまらない空間となっている。

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Photo: Kisa Toyoshimaホワイトシリーズの商品

店舗限定のプレートの表面をよく見ると、釉薬のムラなど、一点ごとに異なる個性がそのまま残されている。こうした商品を通じて、ほうろうが工業製品であると同時に、陶芸と同じ「焼き物」としての味わいを持つことを伝えたいという意図があるそうだ。

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Photo: Kisa Toyoshima店舗限定商品のプレート。ほかにも藍色と茶色がある。
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Photo: Kisa Toyoshima店舗限定販売のプレート
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Photo: Kisa Toyoshima店舗先行販売の「ロングスプーン」「マルチレンゲスプーン」

野田家の日常から生まれた定番

野田琺瑯の製品開発には、並々ならぬ時間がかけられている。野田家の人々が実際に自宅で使い、本当に良いと確信したものだけが商品化されるという。

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Photo: Kisa Toyoshima保存容器が全て琺瑯で統一されている野田家の冷蔵庫を店内で再現

ホワイトシリーズもまた、現在の会長である野田浩一の妻・善子の「自分が使いたい保存容器が作りたい」という切実な思いから誕生。当時は「真っ白で装飾のない保存容器は売れない」と社内では反対意見も多かったが、それでも発売された結果、現在では広く愛される商品となった。

その人気の背景には、日本の食文化との親和性がある。だし汁や素材本来の色合いを大切にする和食において、料理を最も美しく引き立てる器として支持を集めてきたのだ。

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Photo: Kisa Toyoshimaほうろう容器の利用術とレシピを紹介した野田善子著『野田琺瑯のレシピ』

100周年に向けて

今後は、ほうろうがどのように暮らしの中で使えるかを伝えるため、料理研究家を招いたイベントやワークショップも開催していく予定だ。

現代は、丁寧な暮らしを実践する人々に長年支持されている一方で、料理をあまりしない層の増加や、電子レンジ中心の生活スタイルの増加など、若い世代への普及には課題もある。若い世代にもほうろうの魅力を知ってもらうため、同店ではキッチン用品としてだけではない新たな使い方を提案する。

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Photo: Kisa Toyoshima業務用としても実用的な浅形の容器。レトロなデザインに新鮮さや魅力を感じる人も多い
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Photo: Kisa Toyoshima銀座の名喫茶「カフェ ド ランブル」から、「お湯を1滴、2滴と置くように注ぐことのできる湯口を」という、依頼を受けて作られた「ランブルポット」

例えば、ビーカーをカトラリー入れに、ポットを花瓶にするなど使い方に決まりはない。「道具箱」の容器におでんを入れることを提案した料理研究家もいたという。

ほうろうは調理道具としてだけでなく、暮らしのさまざまな場面に取り入れられる道具でもある。料理好きはもちろん、インテリアとして取り入れたい人にも新しい発見があるはずだ。

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Photo: Kisa Toyoshima内観
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Photo: Kisa Toyoshima看板もほうろう製

100周年を目前に控えた野田琺瑯が提案する「暮らしの道具」が、日々の暮らしを見つめ直すきっかけになるかもしれない。

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