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音楽家の渋谷慶一郎が最新の人型ロボット「アンドロイド・マリア」を発表

より即興的な反応が可能、11月にコンサートデビュー予定

テキスト
Hanako Suga
アンドロイド・マリア
©︎ATAK | 「アンドロイド・マリア」
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音楽家の渋谷慶一郎が代表を務めるレーベル「ATAK」が、最新の人型ロボット「アンドロイド・マリア」を発表した。本作は、さらなる身体性と表現の進化を追求し、「世界一美しいアンドロイド」の実現を目指した作品。テクノロジーと芸術の融合によって生まれた「新たな生命体」ともいえる存在だ。

「ドバイ万博ジャパンデー」
アンドロイド オペラ『Scary Beauty』

渋谷はこれまで、初音ミクによるボーカロイドオペラ『THE END』などの既成概念を覆す作品で、国内外から注目を集めてきた。特に近年はアンドロイドとの舞台芸術に取り組み、2018年にはアンドロイド「オルタ2」による『Scary Beauty』を発表。アンドロイドが指揮し歌うという構成で、人間と機械の共存を描いた実験的な音楽作品として話題を呼んだ。

2022年には「ドバイ国際博覧会」の日本館で「アンドロイドオペラ」シリーズ作品「MIRROR」のプロトタイプを発表。2023年にはパリのシャトレ座では、AIが生成した歌詞や仏教声明、ピアノと電子音楽が交錯する70分の完全版を初演した。

アンドロイド・マリア
©︎ATAK「アンドロイド・マリア」

アンドロイド・マリアは、渋谷がこれまで手がけてきたアンドロイド・オペラの到達点であり、新たな始まりだ。従来の空気圧駆動を用いた「オルタ」シリーズとは異なり、50以上の関節すべてをモーターで制御することで、よりリアルで滑らかな動きを実現する。演出や対話においても、内蔵のカメラとマイクによって観客の存在を認識し、即興的な反応が可能だという。

名前の由来は、渋谷が若くしてなくした最愛の妻にある。「死はひとつではない」という「THE END」以来の一貫したテーマが、アンドロイド・マリアにも受け継がれている。

外見には古代から現代までの女神像や菩薩(ぼさつ)像のエッセンスをAIにより取り入れ、下半身には無数のチューブが地下茎のように絡み、生命と大地のつながりを象徴する形が施されている。マリアは単なる機械ではなく、音楽や記憶、感情、知性が交差する創造物。観る者の内面に語りかけ、新しい舞台芸術の可能性を提示する。

本作には、AIアーティストの岸裕真によるコンセプト設計や対話プログラム、コンピューター音楽家の今井慎太郎によるプログラミングなど、20人近いコラボレーターが参加している

2025年11月5日(火)には、東京で本格的なデビュー公演を予定。詳細は、夏に発表される。また、2027年にはヨーロッパ初演が予定されており、英国ロイヤル・バレエ団のサー・ウェイン・マクレガー(Sir Wayne McGregor)が演出、建築家の妹島和世が舞台美術を手がける大規模なコラボレーション作品として展開される予定だ。

アンドロイド・マリアが現代の新たな演者として、今後の舞台芸術の在り方を塗り替えていくことを期待したい。

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