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6月6日の「Tokyo Pride」では舞台の冒頭部分を披露

6月は「プライド月間」と呼ばれ、多様性と受容のシンボルであるレインボーフラッグが随所で見られる季節だ。世界各地でLGBTQ+のコミュニティーを祝福し、差別や偏見を排し、権利啓発を目指したイベントが行われる。
そんなプライド月間に当たる2026年6月26日(金)〜28日(日)の3日間、世界有数のゲイタウン・新宿二丁目にある小劇場「こった創作空間」で、劇団「薔薇族」の旗揚げ公演ミュージカル『薔薇族’70』が開催される。3日間で6公演のチケットは販売から2週間を待たずに完売。追加された2公演も発売日に即日完売と、注目度の高さがうかがえる。
「薔薇族」とは何か――。日本のゲイカルチャーに詳しい人なら、その名を聞いたことがあるだろう。薔薇族とは、1971年に創刊され、2004年に廃刊となった日本で初めての商業ゲイ雑誌だ。後に続く数々の商業ゲイ雑誌の草分け的な存在である。
まだインターネットもなく、今以上に同性愛差別が激しかった時代。多くの人がカミングアウトすら難しい状況の中、同誌は男性の同性愛者たちにとって、自分以外の「ゲイ」の存在や生きざまを知ることができる、数少ないよりどころだった。
ミュージカルは、薔薇族の「文通欄」を軸に展開する、2台のピアノで紡がれる60分間の作品だ。文通欄とは、文通友達をはじめ、バンド仲間の募集、物品の売買など、読者同士が交流できる投稿コーナーである。
誌面には募集要件だけでなく、問い合わせ先として住所や郵便私書箱、メールアドレスが掲載されていた。今日の個人情報の観点では考えにくいが、インターネットが普及し始めた1990年代後半〜2000年代前半まで、文通欄のある雑誌はわずかに残っていた。30代以上であれば、うっすらと記憶している人もいるかもしれない。
しかし、薔薇族の文通欄は、一般的なものとは一線を画していた。前述の通り、当時は同性愛への差別が激しい一方で同誌は全国の書店で販売されていたため、記載された個人情報は市区町村名と年齢に限られ、投稿者のプライバシーには細心の注意が払われていた。
投稿者と連絡を取りたい場合、まず読者は編集部宛てに手紙を送る必要があった。編集部が手紙を投稿者へ転送し、返事が来れば、そこから初めて個人間のやり取りが始まる仕組みである。
しかも封筒には、薔薇族からの郵便だと分からない封書に包むという配慮も施されていたという。そのため、やり取りだけでも何カ月もかかることがあった。まして、実際に会おうと待ち合わせをするだけでも、今とは比較にならないくらいハードルが高かったのである。
そんな薔薇族の文通欄に着想を得て生まれたのは、シンガーソングライターの外崎銀河によるミュージカルだ。ミュージカル『十二国記』では稽古ピアノを、舞台『千と千尋の神隠し』 の韓国公演では指揮を務めた経験を持つ外崎は、「見せ物として消費されるBL作品ではなく、当事者の視点から同性愛者たちの生を描きたい」という思いから、劇団を立ち上げた。
外崎は、2000年生まれの25歳。薔薇族どころか、雑誌の文通欄そのものをリアルタイムで目にしたことはない世代だ。だからこそ、さまつな現実に縛られることなく強い興味を持って55年前の同性愛者の心の機微を大胆に描けるのかもしれない。
出演者には、ゲイというセクシュアリティーをオープンにして活動する俳優・水越とものりをはじめ、アライ(ally=仲間や同盟を語源とし、セクシュアルマイノリティー当事者を支援する人々を指す)のメンバーが名を連ねる。
前述の通り、本公演のチケットはすでに完売している。しかし、6月6日(土)に開催される「Tokyo Pride」では、公募アーティストとしてステージパフォーマンスを行うことが決定している。当日は、ミュージカルの冒頭部分が披露される予定。作品の世界に少しでも触れてみたい人は、公演時間をチェックしてみてほしい。
「今後は薔薇族の80・90年代も描いていきたい」と、外崎は前向きだ。時代ごとに同性愛者を取り巻く環境は移り変わっている。2026年3月には最高裁判所が全国で続く同性婚訴訟について、大法廷で審理・判断する方針を示し、同性婚の合法化まであと一歩のところまで来た。同性愛者たちが歩んできた歴史を振り返るためにも、今後の劇団「薔薇族」の動向に注目したい。
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