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完全会員制のエンターテインメント居酒屋「ももまる」に突撃してきた

全身ピンクの名物店長「レディーモモ」って?

Rikimaru Yamatsuka
テキスト
Rikimaru Yamatsuka
作家
ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabu | 「ラーメン居酒屋 ももまる」
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その店は、渋谷駅から徒歩5分という超好立地の地下1階にある。完全会員制のラーメン居酒屋「ももまる」。「完全会員制」「ラーメン居酒屋」と早くもイメージがわかないワードが並ぶが、ここは全身ピンクの名物店長「レディーモモ」が腕をふるう絶品料理が味わえる名店だ。

全身ピンク? レディーモモ? 謎は加速するばかりだが、なんでもこの「レディーモモ」、アクロバットを繰り広げながら接客してくれるらしい。意味がわからない。全身ピンクの店長がアクロバットを披露する完全会員制のラーメン居酒屋? 「渋谷の超一等地にある」&「料理がめちゃくちゃうまい」というだけで、すでに飲食店として充分すぎるほどのプライズがあるのに、それにあきたらずアクロバットを披露する店長。サービス精神ほとばしること山のごとし、あまりにも気になる、気になりすぎる。というワケで、さっそく突撃取材してまいった。

ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabu「ラーメン居酒屋 ももまる」

完全に目が澄み切っている

某日、15時すこし前。われわれ取材班が店の前でスタンバりながら、果たしてどんな人なのだろうとドキドキしていると、その人物は現れた。ピンク色のキャップ、ピンク縁のメガネ、ピンク色のタンクトップ、もう遠目の時点で「あっ絶対あの人だ」と秒でわかった。

ももまるの名物店長・レディーモモである。非常にエネルギッシュにハキハキ喋るし、明らかにガタイがいいし、何より目が完全に澄み切っている。本当にすごい人はたいてい目が澄み切っているものだ。すでにタダモンじゃないオーラをビンビンに発するレディーモモに導かれ、半開きのシャッターをくぐって店内へ足を踏み入れると、これがまた強烈だった。

ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabu「ラーメン居酒屋 ももまる」

ピンクを基調としたサイケデリックな色彩が横溢し、カラフルな小物や雑貨が所狭しと並び、いたるところに小ネタのように変なステッカーや貼り紙がちりばめられ、天井にはアクロバットに使用する雲梯やブランコ、吊り革などが十数個、ボルトでガッチリ固定されている。

この時点で到底ツッコミきれないほどの情報量だが、ここでは秘密なのだが、加えてユニークすぎるメニューなど脳が理解を諦めるほどのインパクトがある。

ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabuメニューの一部
ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabuオリジナルドリンク

モモは澄み切った目を向けながら、立板に水でグルーヴィーに経歴を語ってくれた。

筋金入りのエンターテナー

名古屋出身。実家は飲食店で、父が料理を担当し、母が接客担当の喋り役だった。父母の快活な働きぶりを間近にみていたモモは、やがて料理を作ることと接客することによろこびを見いだすようになり、繁華街で働き始めた。

経験を積み、若くして鉄板居酒屋の店長に就任。張り切るのも束の間、オーナーから「短いホットパンツで接客してみて欲しい」という指示が飛んできた。「恥ずかしいから嫌です」と最初は断ったが、「絶対面白い」と言うオーナー。熱意に押されて、やってみることにした。

ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabuエネルギッシュなモモ

しかし、どうせやるならば自分も楽しんでやらなければつまらない。ホットパンツ姿でハイテンションに働いた。そのいでたちから同性愛者と勘違いした酔客の「この中だったら誰がタイプ?」的なダル絡みにもしっかり乗っかってみせるなど、持ち前のサービス精神を発揮し、盛り上げに徹した。そんな努力の甲斐あって、名物店長として評判を呼び、売上が伸び始めたという。

「接客は楽しませてナンボだと思っていて。僕はみんなハッピーになってほしいんです」と言い切るその目は澄み切っていた。エンターテナー気質とは、こういうことをいうのだろう。

懸垂&ブランコ

居酒屋の店長を10年以上つとめたのち、名古屋に「ラーメン居酒屋 ももまる」を「じんまる」の代表・石丸敦とともに2010年にオープン。当時「〇〇居酒屋」というような、既存ジャンルにアルコール提供をプラスした飲食店は珍しく、そこで興味をひこうという考えだった。そしてただ奇を衒うのではなく味も本格派でなくてはと、北海道までラーメン修行に行った。

「開店当初はお客さまも少なく暇だったので、天井の鉄骨にぶら下がって筋トレをしていたんですよ(笑)。そのうち、ブランコを設置してパフォーマンスをしたらお客さまが喜んでくれて……」とモモ。

ここからも非凡なアイデアマン&行動力に溢れた野心家の顔がうかがえる。

ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabu懸垂するモモ
ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabuブランコも設置している


かくして「ももまる」は「名物店長のいる店」としてブレイク、SNSなども相まって人気を集め、ついに名古屋テレビの取材を受ける。その番組が3県にわたり放送されたところ、話題が話題を呼び、出演依頼が押し寄せた。「ナニコレ珍百景」など全国区の人気番組で取り上げられ、客足はぐんぐん伸びていったが、ピークは2013年、かの「月曜から夜ふかし」に出たときだったという。

この頃は最高で1日に160人の来客があったというからすごい。しかしTVは認知度をアップさせてくれた反面、客層も様変わりしてしまい、ダル絡みが多くなった。またメディアがほどこす「演出」にも違和感があった。

東京上陸

そして2018年4月、モモは上京する。渋谷店の開業にあたっては、前述した「じんまる」代表の石丸と、「エイジアキッチン」代表の吉崎英司の3人で、ももまるインターナショナルを設立し、店を作り上げた。

吉崎が立ち上げ・運営にかかわっている渋谷の「太一」地下にある現物件が空いたことがきっかけに、「そこで店をやってみないか」と打診してくれたのである。つまり、今取材しているこの店のことだ。

「名古屋の『ももまる』は薄暗い雑居ビルの奥に立地しますが、この物件の入口までの階段の怪しい雰囲気が重なり、東京でやるならここだ、と思ったんです」。

ももまる
Photo:morookamanabu怪しげな入り口

桜並木で知られる渋谷区桜丘町にあるこの場所を、モモはとても気に入った。桜にちなんで、大好きなピンク色をフィーチャーした内装や制服にしよう。大好きなガガになぞらえて「レディーモモ」と名乗ろう。オリジナルで生きていこう、とにかくインパクトのある店にしよう。 

かくして、あふれんばかりのアイデアを詰め込んだ「ももまる」が渋谷に爆誕する。前代未聞のお店はSNSでたちまち火がつき、著名人が多く訪れるようになった。モモの夢は、レディー・ガガに来店してもらうこと。店内にはドンペリがガガとコラボした限定ボトルが飾られていたが、これはガガが来るその日まで残している。

ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabu店内の様子

「僕はお客さんを楽しませたい。それって、自分がいかに楽しんでやるかが大事なんですよ」

そう言い切るモモのスタンスは、飲食店の店長というより、完全にエンターテナーのそれである。楽しい時間を作りたい、完全会員制になったのもその一心からだそう。SNSから火がつき人気を博したものの、またしても客層が荒れてしまったゆえ、常連客の勧めもあって2023年に完全会員制にすることを決意したのだという。

ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabu店内の様子

「楽しむ勇気と覚悟がないとうちは無理なんですよ。メニューを見てもらったらわかると思います。たとえばこの『〇〇チューハイ』(※メニュー名は行った時のお楽しみ)は、お客さんにあることをしながらお酒を出すんですけど、僕は相手が誰だろうと全力でこれをやります。デヴィ夫人が来たときに全力でやったら、すごくウケてくれました」

楽しい空間を作るためには、客も一緒にノってもらわなくてはならない。だからこそモモは客を選ぶ。完全にエンターテナーである。だから紹介づてで新規の連絡が来た場合、最初に「変態ですか?」と聞くのだそうだ。「そこですぐに『変態でーす!』って即答できる人は、絶対バイブス合うんで大丈夫なんですよ」という。

プロすぎて敬服

変態といえば、気になるのはメニュー表に並ぶ数々の謎ワードだが、「コレって何なの? とか聞くお客さんいるんですけど、これ手品のタネと同じなんで、僕が何やるかは言えないんですよ」とのこと。ちなみにメニュー表で一番高かったのは「台風」で価格が1万円、ムチャクチャ気になったが、何をするのかはもちろん聞けなかった。 

ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabu店内の様子

しかしそう言いながらもサービス精神旺盛なモモは、撮影のために数々のアクロバットを繰り広げてくれた。「クレイジー乾杯」は、雲梯に膝でぶら下がり、逆さになったままグラスを飲み干すという「人間ってそんなことできんの!?」でしかない技で衝撃的だったが、天井を軽々飛び回ったり、足の甲だけでコウモリのようにぶら下がったり、その身体パフォーマンスは圧巻だった。

ラーメン居酒屋 ももまる
Photo:morookamanabuアクロバティックな動きを披露してくれたモモ

「アップとダウンはしっかりやります」、激しい運動ののちも息ひとつ切らせずに涼しい顔で語るモモは、エンターテナーであり、アスリートであり、すなわちプロだった。本当に面白すぎる人である。今度は営業中に行きたい。

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