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思い描いた通りに設計した建築の中で見る「建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ」

思考から作品、使い方まで建築の全てを楽しむ

Chikaru Yoshioka
編集
Chikaru Yoshioka
Editor/Writer
建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
Photo: Kisa Toyoshima | 用途が決まってないまま自由に内藤廣が設計した「紀尾井町清堂」
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テキスト:Asuka Miyamoto

「使い方は出来上がってから考えるので、思い描いた通りに造ってください」というのが、クライアントである一般社団法人倫理研究所の理事長から建築家・内藤廣へのリクエストだった。それを受けて設計したのが「紀尾井町清堂」。この吹き抜け大空間とそれを巡る回廊で、「建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂」展が開催中だ。用途が決まってないまま自由に設計した建築を、内藤が自ら使ってみた展示となっている。

建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
Photo: Kisa Toyoshima回廊に沿った手帳展示と大空間の吹き抜け

何でも詰め込んだ1冊の手帳を通じて約40年分の思考をたどる

回廊には、1985年から約40年間にわたる手帳が並ぶ。年代ごとに印象的な一ページと1冊の手帳レプリカ。そこに、内藤本人による短い文章が添えられている。何に興味を持ち、何を考え、悩み、日常を過ごしてきたのかに、ふんだんに触れることになる。

建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
Photo: Kisa Toyoshima手帳の展示風景 ※取材のため許可を取って撮影
建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
Photo: Kisa Toyoshima手帳の展示風景 ※取材のため許可を取って撮影

市販の手帳1冊に全て込めた形態を統一する面白さ

1冊の手帳をめくりながら、当時の関心ごとをつかむ。また、住宅の平面図、思考の概念図、ランドスケープまでスケールに関係なく、全て描かれた手帳は資料としても珍しい。 手帳の中にはファミリーレストランの紙ナプキンに描かれたスケッチや、展覧会のチケット、新聞の切り抜き、花、トラスの模様、法律書、スケッチや図面まで実にさまざまだ。

建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
Photo: Kisa Toyoshima自由にめくることのできるレプリカの手帳 ※取材のため許可を取って撮影

アイデアから建築になるまでを結びつける、手帳に関連する建築作品

手帳の記述に関連し、当時設計された代表的な作品の図面・写真が壁面に並ぶ。さまざまな事柄が詰め込まれた手帳から作品に仕上がるまでの過程を、手帳から飛び出すような感覚で並行して楽しめる。

建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
Photo: Kisa Toyoshima回廊に沿って展示された手帳と、壁面の図面

完成した建築に置くインスタレーションも見どころ

1階の広々としたスペースには、手帳の資料から発展した「東日本大震災への鎮魂」
と題する、1万8800個のガラスピースをリング状に再構築したインスタレーションが展示されている。

建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
Photo: Kisa Toyoshima1万8800個のガラスピースを使用した「東日本大震災への鎮魂」

また、2階には近著から印象的なコメントを選んだ「言葉の曼荼羅(まんだら)」の作品が、平面に展示。自ら設計した建物を使う方法を示している。

建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
Photo: Kisa Toyoshima「言葉の曼荼羅」の展示風景
建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
Photo: Keisuke Tanigawa紀尾井町聖堂の外観

シンプルで美しい造形の建物を設計する印象の内藤だが、本展は、その背後に深い思考や選択のプロセスがあることを知る貴重な体験となるだろう。開催は2025年9月30日(火)までの火・木・土曜日で、入場は無料。ぜひ訪れてほしい。

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