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シンガポール発のコーヒーブランド「アルケミスト(ALCHEMIST)」が日本上陸を果たした。2025年6月24日、表参道に旗艦店をオープン、そして翌週の6月30日には浅草に200平方メートル・70席を誇る大型店がオープンした。

2016年に創業した「アルケミスト」は、東南アジア随一の美食国家・シンガポールで激しい競争を勝ち抜き11店舗を展開している。創業者ウィル・レオ(Will Leo)に、同店が大切にする哲学や日本出店に込めた想い、そして今後のビジョンについて話を聞いた。

たった4坪のスタンドから始まった物語
2016年、シンガポールのオフィス街の片隅にわずか4坪の小さなコーヒースタンドが誕生した。それがアルケミストの原点だ。メニューは潔く、コーヒーのみ。アレンジコーヒーやスイーツなども手がけない。
その代わり、その一杯に徹底してこだわり、生豆の選定から焙煎、抽出まで一切妥協を許さない。ウィル曰く、どの過程をおろそかにしても最高の一杯は作れないのだという。根底にあるのはまるで職人さながらの真摯な姿勢だ。

コーヒーは果実。その時季の最高の一杯へのこだわり
「アルケミスト」では、コーヒーを「季節ごとに変化する果実」と捉えており、世界各地から年間80~100種の選りすぐりのシングルオリジンを仕入れ、その時季に最もおいしい一杯を提供する。
また、価格や知名度に左右されず、世界中から本当に優れたコーヒー豆を仕入れることに注力。エチオピアなどの主要産地以外に、タイやインドネシア、イエメンなど一般的にはまだあまり知られていない産地の豆が全体の2割を占めているのも特徴だ。
少ロットでしか手に入らない希少豆は1週間単位で入れ替わることもあり、訪れるたびに新しい出合いを楽しむことができる。シングルオリジンの焙煎は中浅いりを基本とし、コーヒー本来の甘みを引き出すことを最重視している。

同店では、ハンドドリップで淹れるシングルオリジン(800円~、以下全て税込み)を常時4種類用意。また3種類のオリジナルブレンドは、カフェラテなどのエスプレッソドリンクでも注文可能である。
店頭で販売される豆は常時10種類以上を取り揃え、気に入った味わいをその場で購入することもできる。青山店ではフードメニューとして、同じ表参道にあるベーカリーカフェ「ゴントランシェリエ」のパンを4種類用意している。

店名にもある「アルケミスト」とは、錬金術師、同社ではバリスタのことを指す。バリスタを単なるコーヒーを淹れる人ではなく、コーヒーの可能性を引き出す職人と捉えているのだ。
同社では独自の教育プログラムを設け、感覚・理論・技術を深く学ぶトレーニングを受けた上で、テストを通過した者しか客にコーヒーを提供することはできない。取材時に飲んだカフェラテのスチームミルクが大変きめ細かく繊細で、同社が重視するバリスタの高い技術を垣間見ることができた。

柔らかな光が包み込む、ミニマルで心地よい空間
アルケミストの美学は、空間設計にも表れている。店舗デザインを手がけるのは、シンガポールの建築ユニット「Wynk Collaborative」だ。意図的にシンプルに保つことでコーヒーそのものを引き立てたという。
また、店舗によって少しずつ個性を持たせており、青山店は光がたっぷりと射し込む店内に木々が緩やかに配されており、都会の喧騒(けんそう)から離れほっと一息つける空間に仕上げられている。

バリスタの立つカウンターにはあえて大きなマシンを置かず、バリスタと客がコミュニケーションを取りやすいように設計されているのも特徴だ。対話を通じて自分好みの一杯を見つけたり、バリスタの丁寧な手技を間近に見て楽しんでほしい。

2028年までに日本国内で10店舗展開を目指す
海外初出店の地に日本を選んだ理由についてウィルは「私は長年にわたり日本の職人文化に敬意を抱いてきた。日本には本質を求めて真面目に取り組むことを認めるカルチャーがある。私たちの哲学は日本の職人文化と似ているので、日本でも共感してもらえるのではないかと考えた」、と語る。
今後は出店スピードよりも質にフォーカスしながら、2028年までに国内で10店舗展開できればと考えている。また、アジア圏を中心にグローバル展開も進めており、2025年10月には台湾への出店を予定している。今後はアルケミストブルーのカップを片手に街歩きを楽しむ人が世界中で見られるかもしれない。
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