先日、「東京都庭園美術館」で行われた「アール・デコ博覧会開催100周年記念 夜会 ~ART DECO NIGHT GARDEN PARTY~」に行ってきた。かつて朝香宮夫妻がパリで感銘を受けたアール・デコ博覧会の開催100周年を記念して開かれるイベントで、詳細を見ると何とドレスコードについて記載がある。いわく、「1920~30年代のモダンボーイ・モダンガールの装いでお越しください」とのことだ。
今夏のほとんどをヨレヨレのバンドTシャツとヨレヨレの綿パンで過ごしたオレにとってかなりハードルの高い要求だったが、クロゼットを漁りまくり、なんとか無地のシャツと父親の形見のスラックス(足が鬼みじけぇ)を見つけ出す。「誰が何と言おうとオレはモボだ」と強く思い込みながら会場へと向かったのだが、意外と別にそこまで気合いを入れなくても大丈夫だった。
ドレスコードとはなんぞや
われわれ取材班が会場となる庭園に着いたとき、すでに2、300人ほどの客がいたが、カンカン帽をかぶったり麻のスーツを着たりしてガチガチのガチにめかし込んでいる人は2割ぐらい。参観日ぐらいのノリでそれとなくエレガントにまとめている人が5割で、ビシッと着物でキメた人がチラホラいて、あと残りはまぁキレイめなカジュアルルックという感じだった。
ZAZEN BOYSのTシャツにダンロップのキャップといういでたちの中年男性さえおり、「ドレスコードとは何ぞや」という感慨を得た。まぁとにかくそんな感じだったので、オレは浮くもことなく、後ろ指ひとつ指されぬまま無事に取材ができたわけだ。
そんな中、とりわけ気合入ってるなと感じたのは、取材中に「キミタチハドコノメディア?」などと偉そうな感じで話しかけてきたジェントルマンである。服装といい振る舞いといい、おそらく「どうだ明るくなつたろう」のコスプレに違いない。大正時代に戦争特需で儲けた実業家に扮しているのだ。口調もリアリティがあり、マジで超気合入ってるナーと思った。イケてるイケてる。
空気感や風情を味わうことを是とする
で、庭園に特設されたステージの催しを鑑賞したのだが、なんというか、全体的にふわっとした印象を受けた。実質ではなく、空気感や風情を味わうことを是とするイベント。
まず最初、日本モダンガール協會代表の淺井カヨと音楽史研究家の郡修彦が登壇し、蓄音機でのレコード鑑賞という出し物から始まったのであるが、蝉時雨がジャワジャワ鳴りまくっているし、頭上には飛行機がビュンビュン飛んでるし、どう考えても音楽鑑賞には適さない環境である。
この状況で「いやぁ、蓄音機とSP盤はやっぱり音の立ち上がりとパンチが違ぇなぁ」などと言えるやつがいたら、そいつは間違いなく稀代のインフルエンサーになれるだろう。そんな環境下で鳴らされるブラームスやハイケンス。それを棒立ち&真顔で見つめるおしゃれ人たち。かなり状況としては異様だ。
真夏の夜のジャズ
お次はジャズの演奏である。「東京芸術劇場」とのコラボレーションによるミニコンサートと銘打たれた企画で、トランペットとホルンとトロンボーンの金管三重奏が現れ、なにを演奏するのかしらと思ったら『オー・シャンゼリゼ』をプレイした。アール・デコ→パリ→シャンゼリゼという、完全な善人しか思いつかない直球の選曲である。
『オー・シャンゼリゼ』は個人的にかなり好きな曲であるが、やはり完全生音+野外となるとさすがにいささか分が悪い。風で楽譜飛んでたし。その後も『マイ・フェイヴァリット・シングス』とかをやっていた。トロンボーンの人がすごくうまかった。
おめかしして写真撮るって楽しいよね
で、ここでちょっと会場をウロウロしてみる。まず、写真を撮ってる人がすごく多い。いい感じに枝が垂れ下がってる木の下とか、お花のアーチの前とかでポーズを取ったりして「はいチーズ」なんつって、かなり楽しそうにしている。ガチでおめかししたとき特有の、多幸感に満ちたハイが会場いっぱいに充満しており、はっきり言って悪くない気分である。
その中で、とりわけ楽しそうにしている女性4人組に声をかけてみる。何でも女性たちは会社の同僚、かつヨガ教室のクラスメートであって、「レトロな音楽好きが集まるイベントがあるらしい」と聞きつけて集合したとのことだった。古着屋で買ったというクラシカルなワンピースとヘッドドレスを身につけた女性たちはとてもおしゃれで、写真を撮り合ったりおしゃべりしたりしながらいい感じに過ごしていた。
「チャールストン」を30分でマスター
で、ふたたびステージへ。東京リンディーホップアカデミー主宰でインストラクターの戸山雄介による1920年代のダンスステップレッスンが、生バンドの演奏とともに行われるとのことだった。しかし、そのバンドがクラリネットとスネアドラムの2人というかなり削ぎ落とした編成で、一抹の不安がよぎったものの、結果としては大丈夫だった。
この頃になると客入りはさらに増えており、ちょっと後ろの方へ行くとほとんどステージが見えないという状態であったが、まるで伝言ゲームのごとく、前にいる人の動きを真似つつステップを踏む。
教えてもらったのは「チャールストン」という1920年代に一世を風靡したステップで、両足を交互に跳ね上げるダンスなのだが、やはり大人数で集まってワチャワチャ体を動かすのは楽しい。こういうのは適当に参加すると面白くも何ともないので、かなり本気でやった。おかげでとてもいい汗をかけた。
汗を拭きながら会場を出て、薄暗くなってきた目黒を歩きながら、今日は知らない世界を存分に見学したなと思った。忘れかけていたが思い出した、バッチバチにめかしこむというのはとても楽しいことなのだ。次回はスリーピースのスーツをあつらえて行こうと思う。
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