

藤井亮
1979年生まれ。愛知県出身。武蔵野美術大学・視覚伝達デザイン科卒。 細部まで作り込まれた"でたらめでくだらない映像"で数々の話題作、受賞作を生み出してきた。今作でも、監督・脚本だけでなく、アニメーションやキャラクターデザイン、背景制作など多くのパートを担い、独自の世界を構築している。
映画『大長編 タローマン 万博大爆発』公開間近、監督にインタビュー
タイムアウト東京 > 映画 > NHK発カルトヒーローが映画に、藤井亮が明かす制作の舞台裏
2022年にNHK Eテレの深夜帯で放送していた5分番組、『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』。本作は「1970年代に放送されていた特撮ヒーロー番組」という体裁の下、岡本太郎の言葉や作品群を盛り込んで制作された異形のフェイクドキュメンタリーだ。
このほど、2025年8月22日(金)から『大長編 タローマン 万博大爆発』として、劇場公開される。
Ⓒ2025『大長編 タローマン 万博大爆発』製作委員会
映画版もあらゆる意味で前代未聞の作品に仕上がった。腰砕けのコメディーでありながら、観客を強くエンパワーメントし、目まぐるしいほどのスピード感と情報量で突き抜ける。リアルとフィクションを、昭和と令和を、笑いと感動を、巧みに液状化させている。
かつて近松門左衛門は『虚実皮膜論』において、「真の芸は、現実と虚構の間の薄い膜にこそ潜んでいる」と説いたが、まさにそれを地で行く映画だ。「なんだこれは!」と本能が危険信号を発する圧巻のデタラメぶりは、一体いかにして構築されたのか。同シリーズの監督・脚本を手がけた藤井亮に話を聞いた。
―テレビシリーズから劇場版を制作するまでの経緯を教えてください。
テレビ版のシリーズを10話、それから『タローマンヒストリア』『帰ってくれタローマン』を制作して、いったん終わりかなって思っていたんですが、アスミックエースから『映画をやりませんか?』って話が来ました。
当初はテレビ版の総集編プラスアルファぐらいの内容を考えていたんですけどが、ちょうど昭和100年だし、万博(2025年日本国際博覧会)もある。テレビ版でいろいろと岡本太郎の言葉を伝えてはきましたが、万博に対する岡本太郎の想いは伝えていなかったなと思って、それをテーマにしようと思いました。
藤井亮
ー映画としてテンポ感がすごいですね。ワンカットが平均5、6秒ぐらいだし、とにかくすごいスピードと情報量で圧倒されました。あのテンポ感は監督の意向ですか?
編集に関しては、一度つないだものをさらに僕が短くして、ガッツリ手を入れました。テレビ版の5分尺のテンポ感で、105分突っ走ってみたかったんです。映画でありながら『タローマン』のテンションを崩さないことに挑戦したいなと。
1970年代風の映像を当時のように編集すると、今の感覚では冗長に見えてしまうんです。テンポ感に関してはかなり現代的というか、とにかくハイスピードでいこうっていうのは決めていました。
ー映像の質感も面白かったんですが、あれはフィルム撮影なんですか?
撮影とか編集はゴリゴリデジタルなんですけど、最後の仕上げをとにかくアナログ風にしています。ビデオデッキを経由したり、スクリーンに投射して再撮影したりして、ざらつきを加える。一回空気を通すとだいぶ見え方が変わってくるので。
Ⓒ2025『大長編 タローマン 万博大爆発』製作委員会
ーかなり笑える映画でしたが、ストレートに笑わせにくるというよりは、ズレた感じ、外した感じの「おかしみ」が満載の映画でした。
笑わそうと思ってやってるギャグより、至って真面目にやってるけど逆にそれが面白い、っていう方が好きなんです。ベースの構造はふざけてはいるんですけど、作る時は真面目にっていう姿勢でやっています。
「特撮パロディーだよ」っていうのを前面に押し出し過ぎると、本当に特撮が好きな人は嫌な気持ちになるじゃないですか。
ーいわゆる誰もが知るような有名俳優は一切出演していませんが、キャスティングはどういう基準で選出したのですか?
70年代に実在した番組って体裁を作る上で、みんな知ってる役者さんが出てきたらちょっと興醒めしますよね。「この人、こないだ○○出てたよね」みたいになっちゃう。
だから、メジャーじゃない人の方が面白いかなって。「昭和っぽい顔」というのがキャスティングの基準でした。
藤井亮
ーセリフが全編アテレコになっていますが、これはどういった狙いがありましたか?
実は、ほとんど俳優本人の声ではないんです。昭和っぽい顔で、かつ昭和っぽいしゃべり方もできる人ってそんなにいないので。基本的にキャストは昭和っぽい顔を基準に選んで、声の人は昭和っぽい声を探すっていう。そのやり方なら、低予算でもリアルな昭和感が出せるかなって。
博士と風来坊は本人がやってるんですが、それ以外はほぼ別の人がアテレコしてます。
ー普段お笑いとかって観ますか? オフビートとハイテンションが入り混じったギャグセンスがすごく新鮮だったので、どんなものに影響を受けているのか気になりました。
あまりお笑いに詳しくない、というコンプレックスがあるんですよね。ギャグっぽいもの作ってるわりにはあんまり知らなくて(笑)。
ーなるほど。映画ならどんな監督や作品が好きですか?
ジェームズ・ガン(James Gunn)の、全体的にどこかふざけている感じが好きですね。あと、「全然ちゃうやん!」って言われそうなんですけど、スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)もずっと好きです。
「一番好きな映画は?」って聞かれると大体『ジュラシック・パーク』って答えがちです(笑)。趣味・嗜好(しこう)にひねりがないコンプレックスはありますね。
ー本作では1970年代特撮へのリスペクトをささげていますが、当時の特撮カルチャーへの思い入れなどあれば聞かせてください。
僕、79年生まれなんですけど、この世代は「特撮冬の時代」とい言われていて、『仮面ライダー』とか『ウルトラマン』が制作されなかったんですよ。
当時は『仮面ライダー百科』みたいな本から情報を得て、テキトーなうそ設定を真に受けていました(笑)。オリジナルをガッツリ吸収できなかった世代なので、1つ上の世代に対してコンプレックスはありますね。
コンプレックスがある分、特撮にしても岡本太郎にしてもめちゃくちゃ調べちゃうんですよ。
藤井亮
ーモキュメンタリーは「いかにもありそうなうそをつく」のが肝だと思うのですが、そういったうそを作る際のコツってありますか?
やっぱり、外堀をいかに埋めるかでしょうか。突飛なうそを1つ考えたら、それをいろんな角度から補強してあげる。
『タローマン』でいえば、映像の質感であったり、昭和っぽいしゃべり方であったり、山口一郎さんのインタビューであったり、とにかくディテールを作り込むんです。そういう補強されたうその方が、観てて気持ちいい感じがするんですよね。
Ⓒ2025『大長編 タローマン 万博大爆発』製作委員会
ー本作は、1970年当時に想像していた未来都市としての2025年が舞台となっていますが、監督が「未来」を感じる東京のスポットってありますか?
2022年に解体されてしまったと思うのですが、「中銀カプセルタワービル」が僕がいちばん未来を感じる場所です。1972年の建物なんですが中途半端に新しい建物よりも俄然、未来を感じました。
外見もですが、内装もまさに当時のSFそのままの世界で、一度遊びに行かせてもらったことがあるのですが、宇宙船の中にいるようで最高でした。いつかあんな丸窓のある自室をつくってみたいですね。
中銀カプセルタワービルを訪れた際の写真
『大長編 タローマン 万博大爆発』は2025年8月22日(金)全国公開
配給:アスミック・エース
藤井亮
1979年生まれ。愛知県出身。武蔵野美術大学・視覚伝達デザイン科卒。 細部まで作り込まれた"でたらめでくだらない映像"で数々の話題作、受賞作を生み出してきた。今作でも、監督・脚本だけでなく、アニメーションやキャラクターデザイン、背景制作など多くのパートを担い、独自の世界を構築している。
ホームシアターが当たり前になった昨今。映画館はというと、自宅では味わえないより特別な体験を提供すべく日々進化している。IMAXや4DXなど上映システムの発展が目覚ましい一方で、鑑賞スタイルも選択肢が増えている。
さて、本リストを作る上で問題になるのは、「カルト映画とは一体何か」ということ。これを定義するのは決して容易ではないが、一つ確かなのは、それが「ファンの熱狂的な情熱により、公開時をはるかに超える収益を後から生み出した映画」であるということだ。
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