ジャマイカで生まれた、独特のリズムと体に響く気持ちいい低音……。レゲエは、日本でも根強い人気を誇る音楽だ。
ひとえにレゲエといっても、その種類はルーツやダンスホールなど幅広い。本記事ではさまざまなレゲエのかかる店をセレクト。レゲエならではの音響設備、いわゆるサウンドシステムが魅力のヴェニューはもちろん、店主自身がレゲエクルーのMCを務める店舗も取り上げる。
世界は混沌としている。だからこそレゲエを聴いていい時間を過ごしてほしい。

ダブの真価はサウンドシステムで体感せよ、店主が語るレゲエバーの楽しみ方
タイムアウト東京 > 音楽 > 新宿「OPEN」が世界中のレゲエファンにとって聖地であり続ける理由
1960年代にジャマイカで誕生したレゲエが、ボブ・マーリー(Bob Marley)の存在により日本へ本格的に上陸した1970年代後半。それ以来、ルーツレゲエだけでなくダンスホールの出現も伴うことで、レゲエミュージックはここ日本に根強く生き続けている。そう、日本でレゲエは大人気なのだ。
東京・新宿でレゲエクラブ「REGGAE / DUB club OPEN(レゲエ ダブ クラブ オープン)」(以下、OPEN)を営む工藤晴康も、レゲエに魅せられた一人。レゲエ好きが高じて夢中になってのめりこみ、いまだその最中だ。サウンドシステムへの探究心が反映された同店では、レゲエにまつわるさまざまなサウンドが極上の音となり再生され、体感できる。その音に関する信頼は絶大で、今ではローカルだけでなく世界各国からOPENでのレゲエタイムを楽しみに人々がやってくる。
レゲエをこよなく愛する人々に共通するのは、「ラブ&ピース」。工藤は人生をかけて、来店者が心からいい体験ができるよう店をプロデュースしている。東京ナイトライフの中で、特別な店として長年存在し続けてきたのは、工藤のレゲエへの愛があってこそなのだ。
そんな工藤にレゲエとの出合いから店の成り立ち、そしてレゲエバーの楽しみ方についてインタビューした。
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―工藤さんは、どのようにしてレゲエに出合ったのですか?
私は東京・杉並区の西荻窪で生まれ育ったのですが、高校時代に母が始めたスナックを手伝うようになったんです。店にはステレオがあってレコードをかけていたほか、ジュークボックスも置いてあり、私はその「レコード係」として、カウンターの中で母の仕事を手伝っていました。
お客さんがいろいろなレコードを持ってきてくれて、その頃はフォーク、ジャズ、ブルースなど、1950~60年代前半の音楽が中心でした。1970年代に入るとロックも出てきて、さまざまな音楽をかけていたんですが、ある日お客さんが「ボブ・マーリーって知ってる?」って言って、彼のメジャーデビューアルバム『Catch a Fire』のレコードを持ってきてくれたんです。それを聴いた瞬間、一発でほれました。当時はまだ日本でボブ・マーリーを知っている人なんて、ほとんどいなかった頃でしたね。
―ボブ・マーリーの曲のどの部分にほれましたか?
実は、私が最初に真剣に取り組んだ楽器はコントラバスだったんです。中学校の音楽室に1本だけ置いてあって、昼休みにそれを弾いて遊んでいたのが始まりでした。そこから「ベースの音」が大好きになりまして。ロックならブラック・サバス(Black Sabbath)のように、ベースが低く録音されているレコードを集めて聴いていました。
それで、ボブ・マーリーを聴いたら、やっぱりベースが太くて深いじゃないですか。それが体に「ズシン」と響いてきて、レゲエが一気に自分の中で大きな存在になっていったんです。ボブ・マーリーだけじゃなくて、ジミー・クリフ(Jimmy Cliff)やバンドのサード・ワールド(Third World)なんかも、やっぱりベースが心と体に響くんですよね。それで、どんどんレゲエにのめり込んでいきました。
当時、日本にはレゲエはほとんど入ってきていなくて、1970年の大阪万博のときにシマロンズ(The Cimarons)というバンドが来たという話は聞いていましたが、実際に観に行ったわけではなかったです。まだ「レゲエ(REGGAE)」を「レガイ」とか「レガー」って読む人もいる時代でしたから(笑)。
―その頃からレゲエに夢中なのですね。
そうですね。そこからずっと追いかけてます。それと私は「サウンドシステム」という文化にも、ものすごく興味を持ちました。どうしてこんなに低音が鳴るのか? この低音は一体どうやって作ってるのか?というところにどんどん引き込まれて、夢中になったのです。
それで調べていくうちに、ジャマイカにはコクソン・ドッド(Coxsone Dodd)や、デューク・リード(Arthur "Duke" Reid)といったプロデューサーがいて、彼らが元々は酒屋を営んでいたという話を知りまして。自分たちのビールを売るために、スピーカーを積み上げて大音量で音楽を流し、それで人が集まってきた。そこからサウンドシステム文化が始まったらしいんです。「大きな低音の方が人を喜ばせる」という発想に感動して、「自分もサウンドシステムを作ってみたい!」と思うようになりました。
当時はロックバンドをやっていたので、ベースアンプやギターアンプを積み上げて、その上でレゲエを流したりして遊んでましたね。バンド活動と並行して、サウンドシステム作りも楽しんでいました。
―サウンドシステムはどのように研究していったのですか?
当時は現地にあるシステムを解体したりして、仲間と一緒に勉強したりしていました。細かい技術を自分で徹底的に研究したというよりは、「こういう音が作りたい」というのを仲間や専門家の人に伝えて、それで作ってもらった感じですね。例えば、「体にズン!とくる」とか、抽象的なことを言ったりしていたんですけど。
―OPENを始めようと思ったきっかけは何だったのですか?
サウンドシステム好きが高じてOPENを始めたというのもありますが、その前に青山に「MIX(ミックス)」というクラブがあって、そこに入っていたサウンドシステムをさらに改良したんです。マーシャルのベース用アンプをクラブのど真ん中に置いて、ミックスの音をより良くしたんですね。
その結果、当時月1回開催していた「ハードコア・レゲエ」というイベントは、音が良過ぎてライターの火がつかないほど人がギュウギュウに集まりました(笑)。
当時の東京のクラブシーンはまだ黎明(れいめい)期。まさに「実験場」という感じの時期ですね。特に大事だったのは、まだアナログ機材だったということ。だから、各DJによる音のチューニングがすごく重要だったんです。
その後、新宿ゴールデン街の端っこで「EDGE(エッジ)」という店を1年半ほどやっていたんですが、同じ時期に新宿には「CATALYST(カタリスト)」というクラブがあって。後にOPENのサウンドシステムを作ってくれたカワモトガクシ(GAXI)と一緒に、そこのサウンドシステムを手がけました。
カワモトガクシとはその頃からの付き合いで、私の「こうしてほしい」という抽象的な要望を、きちんと音として形にしてくれる大切な仲間です。
―レゲエのサウンドシステムの特徴的なことは何でしょうか?
ジャマイカンスタイルのサウンドシステムはすごく特殊なんですけれども、いろいろな音楽をかけると分かりますが、結果的に何でも受け入れてくれるんです。例えば、古い時代のジャズをかけてもいい音がする。
スピーカーを1カ所に集めて音をどう囲むかを目指すんですが、そうすると奥行きが出てくるんですよ。要は音が真っすぐ出る。それと、スピーカーは高く積めば積むほど、音が横に広がっていきます。
私はアメリカで、グレイトフル・デッド(Grateful Dead)の「ウォール・オブ・サウンド」を体験しているんですが、あれもスピーカーを高く積んでいて、野外で音を鳴らすと、音が真正面から真っすぐに届く。それと似た発想ですね。野外で鳴らすという考え方自体が、すごく面白いです。
とはいえ、ジャマイカでスピーカーを1カ所にまとめた理由については、2カ所に分けるのが面倒くさかったからじゃないかなんて説もあるんですよ(笑)。設計や計算もしなくて済むし、実際に1カ所に積み上げてみたら「あれ? めちゃくちゃいいじゃん」ってことになった……。意外と、そんな単純な話だったのかもしれません。
―現在OPENで使用しているサウンドシステムは、いつ導入したのですか?
下の部分は、店がオープンしてから28年間ずっと使い続けているものなんですが、今年の7月に上の部分を大きく変更しました。新しく導入したのはホーン型スピーカーで、本来は野外用のもの。室内では音が壁にぶつかって反響するから、あまり適さないとされているんですけど、これはカワモトガクシからの提案でした。
で、実際に設置して音を出してみたら、これがすごく良かったんですよ。まだ微調整の段階ではありますが、全体的に開放感が出てきた。
面白かったのは、上のスピーカーを変えたことで、逆に下の音がクリアになったことですね。出している音自体は変わっていないはずなんですが、キックの音が明確に聞こえるようになり、私たちにとっても予想外の出来事でした。
レゲエって、ルーツだけじゃなくて、ダンスホールとか、ヒップホップ寄りのスタイルもあるじゃないですか。そのどれにもオールマイティーに対応できているので、今のシステムはかなり完成形に近づいてきたのかなと思います。
―OPENの歴史を教えていただけますでしょうか。
このお店の近くにあった「69(読み:ろっきゅう)」というレゲエバーが閉店することになったんです。そこをやっていたルパンと、EDGEをやっていた私とリキタケの3人で、「じゃあ一緒に店をやろうか」という話になって、物件を探していた時にたまたま今の場所が見つかって、始めることになりました。
でも、いざオープンしようとしたら、まだ店の名前が決まってなかった。それで、最初のチラシを作るときに「新宿にレゲエクラブがオープンするらしい」と書いたんですね。そこで、「もうOPENでいいじゃん」ってなって、そのまま店名になった(笑)。「窓口は広く、誰でもウエルカム」という気持ちもあるので、OPENという名前はすごくしっくりきました。
―レゲエが好きな人を軸に、海外のアーティストからも絶賛されているともお聞きしていますし、本当にさまざまな人たちが訪れている印象があります。
店を始めてから、お客さんの層は基本的にはあまり変わっていないんですが、外国からのお客さんは年々増えています。特に「バスタ新宿」ができてから一度新宿を経由する人が多くなったようで、「レゲエ」で検索すると、うちが出てくるみたいです。
ヨーロッパの方が多いですが、先日はアルゼンチンから来た3、4人の年配の女性グループが、イタリアから来た男性グループと仲良くなって、ボブ・マーリーを聴きながら乾杯していたんですよ。そういう光景を見ると、「やっぱりレゲエっていいな」と思いますね。
レゲエって、そもそもウエルカムな音楽なんですよ。だからこの店も、レゲエ好きな人たちにとっての玄関口みたいな場所でありたいと思っています。音作りもそうですし、空間としても「誰でも入ってこられる」雰囲気を大切にしたいですね。だから、初めてレゲエの店に来たっていうお客さんには、よく「正解だよ!」って言うんです(笑)。
―「間違いない!」と紹介できる、東京のレゲエクラブだと思います。
特に今は、音楽の聴き方や触れ方が、イヤホンで一人で聴くような「個人的な楽しみ方」が主流になっていると思うんです。でも、こういう「現場」に足を運ぶことで、必ず誰かと出会える。つまり、音楽を通じてコミュニケーションをとれる場所なんですよ。音楽が鳴っている「現場」に参加することって、今の時代ちょっと足りなくなってきている気がしますね。
ここは小さな空間かもしれませんが、人と触れ合いながら、「同じ音楽を一緒に感じられる場所」になればいいなと思っています。とにかく、誰でもウエルカムですし、そうやって人がつながっていけば、世の中ももっと面白くなるんじゃないかなって思ってます。そこが一番大切なことだと思って、日々やっています。
―工藤さんは、ほかのレゲエクラブ・バーへ遊びに行くことはありますか?
南青山の「Club CACTUS(クラブ カクタス)」、池上にある「Music&Bar HOME BEAT(ミュージック&バー ホームビート)」、横浜の「DININGBAR WHYNOT ?(ダイニングバー ワイノット?)」にはよく顔を出しています。
どの店舗にもサウンドシステムが置いてありまして、この4軒で「SoundSystem Club United」という、仲間が集まるイベントを月イチでそれぞれ持ち回りでやっているんです。そこでお互いのいろいろな情報を交換するんですが、かかっているレゲエやサウンドシステムもおのおのに特徴があって面白いですね。うちでは生バンドの演奏に乗せて、即興で歌う「ラバダブ」みたいなのをやっています。
―これからレゲエを聴いてみたいという人には、誰をおすすめしますか?
まず「ボブ・マーリーを聴いてみなさい」と言うとは思うのですが、彼は特殊なミュージシャンでもありますし、レゲエという氷山の一角。その下までたどり着けたら面白いかなと思いますね。
あと、これからは「ダブ」というのがキーワードになるのかなと。あらゆる音楽がダブ化していると感じるんですね。だから、その原点みたいなものも伝えられたらと思っています。
―工藤さんが考える「ダブ」とは?
ダブというのは、端的にいうと「音の抜き差し」なんです。ディレイとかエコーがかかったようなものをダブだと思う人が多いのですが、それはあくまで手段の一つ。ボーカルとかベースを抜いてみて、音楽をいかに解体して単純化していくか、というものだと考えています。
ダブこそサウンドシステムで聞いてみないと、本当には理解できない音楽なのかもしれないです。小さいスピーカーで聞いても「なるほど」と思うかもしれませんが、「サウンドシステムで体感することでふに落ちる音楽」なのかもしれません。
―レゲエクラブ・バーで遊ぶルールとは何だと思いますか?
音楽をしっかり聴く、ということが大切だと思います。「しっかり音楽を体験」する。それと気楽にお客さん同士で話もしてほしいですね。店の人に声をかけるのもいいですし、コミュニケーションは大事かなと。やはり心開いてですね、オープンに。
―この先、工藤さんが店で個人的にやってみたいことはありますか?
自分自身の音楽活動がコロナ禍以前から中断しているので、またバンドを再開してライブをやりたいですね。バンドはやはり面白いので。
それともう一つ、ロンドンへ行きたいと思っています。ロンドンにデニス・ボーヴェル(Dennis Bovell)という親分がいまして、少し前にも「2人でレコーディングしたいね」と電話して。もう構想はできているので、実現できればいいですね。11月に彼が日本に来るようなので、その時に具体的な打ち合わせをしよう! とも話しています。
―最後に、レゲエファンへメッセージをください。
よく「イイネ!じゃねえだろ、来いよ!」と言っていますが(笑)、ぜひ音楽を聴きにここOPENへ音を浴びに遊びにきてください。いい音楽体験ができますので!
ジャマイカで生まれた、独特のリズムと体に響く気持ちいい低音……。レゲエは、日本でも根強い人気を誇る音楽だ。
ひとえにレゲエといっても、その種類はルーツやダンスホールなど幅広い。本記事ではさまざまなレゲエのかかる店をセレクト。レゲエならではの音響設備、いわゆるサウンドシステムが魅力のヴェニューはもちろん、店主自身がレゲエクルーのMCを務める店舗も取り上げる。
世界は混沌としている。だからこそレゲエを聴いていい時間を過ごしてほしい。
針で引っかいて音を出すというアナログなレコードの手法に、ジャズの音は非常に合う。そして、そこにアルコールが加われば言うまでもない。
本記事では、モダンやニューオリンズジャズを流す老舗はもちろん、フリーやDJカルチャーを通過した新時代のジャズを流すヴェニューも紹介。ジャズという音楽の奥深さにきっと気づかされることだろう。もちろん深いことは考えず、ただ音に身を委ねるのも一興だ。本記事で新たな出合いがあることを願う。
ライブハウスやクラブなど、ミュージックヴェニューがひしめく街、下北沢。目当てのバンドやDJがいる時に遊びに行くことも多いだろう。ひとまず景気付けにビールを注文する人が多いかもしれないが、少しだけ待ってほしい。その店のオリジナルドリンクやこだわって仕入れている酒をぜひ試してみてほしいのだ。
公演終了後にバー営業を行う会場もあり、普段はなかなか話せない箱のスタッフとの交流も楽しめるかもしれない。また、クラブやライブハウスに加えて、音楽とじっくり向き合えるミュージックバーも紹介する。それぞれ個性にあふれており、ミュージックラバーにはたまらないだろう。酒と音楽を通して、下北沢で特別な夜を過ごしてみては。
異国の情緒に浸りたい衝動を満たすのに、東京は最高の街だ。無いものを探すほうが難しいほどに、世界中の郷土料理が集まっている場所であることは周知の通り。本記事では、食だけでなく音楽のライブやDJも楽しめる店を紹介する。アフリカやブラジル、カリブ海地域、モンゴルなど、舌と耳で楽しむ世界旅行へ出かけよう。
※2017年の記事を基本情報のみ確認してアップデート
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