1. ゆなな
    Photo: Kisa Toyoshimaゆなな
  2. ゆなな
    Photo: Kisa Toyoshima
  3. ホテル ザ・ウェーブ
    Photo: Kisa Toyoshima
  4. ホテル ザ・ウェーブ
    Photo: Kisa Toyoshima
  5. ホテル ザ・ウェーブ
    Photo: Kisa Toyoshima「ROOM 408」

二度と作れない世界を記録する、「昭和ラブホテル」愛好家が語る今訪れるべき理由

ラブホの魅力が凝縮された書籍「回転ベッドを追いかけて」の著者・ゆななへインタビュー

テキスト:
Genya Aoki
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タイムアウト東京 > ホテル >二度と作れない世界を記録する、「昭和ラブホテル」愛好家が語る今訪れるべき理由

1960〜80年代に建築され、その後も大規模な改修されず当時の趣を今に残すラブホテルが「昭和ラブホ」だ。城のような外観、回転するベッド、全面鏡張りの室内、「スケベイス」現金をプラスチックの筒に入れてボタンを押すと、バックヤードにそのまま筒が送られる会計システム「エアシューター」など、そこにはビジネスホテルともレジャーホテルとも違う独自の文化が形成されている。

性行為のためだけに存在する印象とは裏腹に、今では、コスプレ撮影や女子会など多様な用途で、若い世代からも人気が集まり始めているという。

全国のユニークな「昭和ラブホ」を500枚以上の写真とともに紹介する書籍「回転ベッドを追いかけて」(hayaoki books)を2023年3月29日に発売したばかりの「昭和ラブホ愛好家」であるゆななに、その懐かしくも新しい昭和ラブホの魅力を語ってもらった。

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昭和ラブホの魅力は4つの系統に分かれる
Photo: Kisa Toyoshima

昭和ラブホの魅力は4つの系統に分かれる

平成生まれの20代でありながら、ほぼ単身で北海道から沖縄まで、4年間にわたり全国100軒以上のホテルを巡り、数多くの奇想天外なホテルをSNSで発信してきたゆなな。彼女が昭和ラブホに衝撃を受けたのは、学生時代に何気なく​​SNSで目にした「スペースシャトル型ベッド」。つやつやしたシルバーのエナメル生地のベッドが印象的だったと語る。

その後、東京都大田区にある「ニューアリス」の、全面鏡張りの部屋を訪れて、昭和ラブホデビューを果たして以来、「非日常的な空間を一人占めできる」楽しさに目覚め、各地のラブホを巡るようになった。

昭和時代には当たり前だったラブホの設備や内装が、平成生まれの彼女にとって逆に新鮮で、強く心を引かれたのだという。

派手でカラフルな色彩から豪華な柄、滑り台といったファンシーなギミックまで、ホテルオーナーの趣味と設計者の想像力が化学反応を起こす奇想天外な部屋を見つけた時の喜びは、さらなる探求への意欲に変わる。「一部屋ごとにテーマが全く異なることが多いのも、ならではです」。

都市から地方まで各地の昭和ラブホを巡った結果、その魅力を独自の視点から「王道系」「ギミック系」「ゴージャス系」「激シブ系」の4つの系統に分類。以下で簡単に紹介しよう。

Photo: ゆなな

王道系は、昭和ラブホ全盛期ともいわれる1970年代に多く建てられたタイプのもの。ボタンを押すとゆっくりと円形のベッドが回る「回転ベッド」や、貝殻や馬車、汽車などをモチーフにしたベッド、城の外観などが該当する。

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Photo: ゆなな

ギミック系は文字通り、仕掛けが施された部屋のこと。ボタンを押すと、ベッドが上下もしくは左右に動き出すような動くからくりから、すごいものでは鏡張りの暗所で星がまたたく別部屋へと移動するものまで、まるで遊園地さながらのアミューズメントが堪能できる。「動かしてどうするんだ、とも思うんですけれど、そのバカバカしさが愛しくて、大好きなんです」。

ゴージャス系は海外の宮殿のような本格的な意匠が施されたもの(Photo: ゆなな)

 

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Photo: ゆなな

激シブ系は、畳に敷き布団、風呂は豆タイルにステンレス湯船などといった、昔ながらの和風内装と部屋を想起させるものである。より詳細な内容は「回転ベッドを追いかけて」をチェックしてほしい。

消えゆくものと出合う場所
Photo: Kisa Toyoshima

消えゆくものと出合う場所

さまざまな要因から、新たに作られることがないデザインや意匠、仕掛けが見られるのも昭和ラブホならではの魅力だという。例えば、同書のタイトルにも起用されている回転ベッドの新設は、現在の風俗営業法では実質禁止になっている。以前から設置されているホテルでしか体験できないのだ。「二度と生まれることのない空間にいる」という感覚は、現代的なホテルではなかなか味わえないものではないだろうか。

しかしそれは同時に、未来へ継承されずに消えゆくことでもある。「修繕費がかかる、後継者がいないといった問題で、創業何十年の老舗が閉めてしまうケースも多く目にしました。寂しく悲しいことですが、いちファンがどうにかできることではありません。今では見届けるのも使命だと思っています」と正直な気持ちを打ち明ける。

彼女はこれまでも「こんなすてきな場所があるんだと、もっと多くの人に知ってほしい」という思いから、自身のSNSでさまざまなホテルを紹介してきた。気付けばSNSのフォロワー3万人を超え、ダイレクトメールやリプライで「行きたい」とコメントする人も少なくない。

「行きたいという気持ちだけで終わらず、やはり行ってほしい思いは強いです。一人一人の売上がホテルの修繕費や経営維持につながるのが一番ですよね。だから、今後はもっと多くの人がホテルに足を運んでもらえるようなことをしていきたいなと考えています」

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「一人ラブホ」のススメ
Photo: Kisa Toyoshima

「一人ラブホ」のススメ

「私はほとんど一人で行って、記念にセルフポートレートを撮るといった楽しみ方をすることが多いんです。ホテルの人も歓迎してくれますよ。最初は怖いかもしれませんが、ぜひ一人でも足を運んでほしいです」と、現代の昭和ラブホ活用術を語る。

今後は昭和ラブホの写真展のほか、「デザインフェスタ」や「コミックマーケット」への出展なども検討し、リアルな交流を増やしていくそうだ。

「初めは、昭和ラブホにこれほど多くの人が興味を持ってくれるとは思いもしませんでした。けれどここまできたからには、昭和ラブホ界隈(かいわい)を自分が活気づけていきたい」と気を吐く。気になった人は書籍をチェックするとともに、昭和ラブホを訪れてみては。

ゆなな

昭和ラブホテル愛好家

主にTwitterInstagramで「昭和ラブホ」の魅力を発信している。時々、ホテル内でセルフポートレートも撮影する。著書「回転ベッドを追いかけて」では、魅惑的なラブホのベッドや風呂、いい昭和ラブホの探し方などを語るコラムのほか、ホテルオーナーやラブホテル専門の設計家である亜美伊新(あみい・しん)へのインタビュー、23軒を厳選したホテルカタログなどを紹介している。

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Photo: Kisa Toyoshima

撮影協力:ホテル ザ・ウェーブ

ヨーロピアンゴシック調、スペーシーなネオンが輝く部屋、調律したピアノが置いてあるなど、独創的な部屋を数多く備えた古き良き「昭和のラブホテル」。1985年に売り出していたものを現オーナーの祖父が購入し、以降3代にわたり経営している。

大きな改装はせず、当時の内装を生かすことを心がけているそうで、円形ベッドや白亜の壁紙、猫足のバスタブ、ゴージャスな金色がアクセントのダイヤル式電話(現役)など、至るところにレトロなかわいさが詰まっている。

東京でレトロを追い求める……

  • Things to do

東京や関東近郊のレトロなスポットを一挙に紹介。

昭和レトロなカフェのクリームソーダや、著名人が愛したレストランやホテル、おもちゃ、アクセサリーなどキッチュな魅力を持った雑貨店、昭和初期の長屋文化を変わらず残す横丁や銭湯、アートとして再解釈されつつあるストリップ劇場やラブホテルなど見ればきっと訪れたくなるところばかり。さあ、タイムスリップに興じてみよう。

  • ミュージアム

純喫茶や近代建築、インベーダーゲームの筐体(きょうたい)や駄菓子、昭和に流行したキッチュなアパレルやおもちゃなど「レトロ」なものが今人気だ。そこには、古き良きものを埋もれさせまいとする歴史への敬意のようなものが感じられる。ここでは、そんな長い時の洗礼を受けたからこそ、人々を引きつける歴史的な価値を持ったミュージアムを紹介する。

明治や昭和初期に建てられた名建築から、昭和の人々の暮らしに思いをはせることができる庶民的な民家や、弾痕が残る戦災建造物まで「レトロ好き」なら心ときめくこと間違いなしだ。

 

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  • レストラン
  • カフェ・喫茶店

いつ訪れても、ノスタルジーな空気に思わず引きこまれる、純喫茶。店主の思想が反映された趣のある店内やこだわりのコーヒー、長年受け継がれる看板メニューは、どれほど時代が変化しようとも多くの人を惹きつけて止まない不動の存在である。

昨今では、空前のレトロブームに伴い、これまで足を運ぶことの少なかった若年層のファンも急増中だ。ここではそんな純喫茶の中でも特に足を運んでおきたい東京の名店を厳選して紹介する。都会の喧騒(けんそう)を忘れる空間で、ゆったり流れるひとときに身を委ねてみては。

  • レストラン
  • カフェ・喫茶店

歴史ある日本文化の魅力を現代に伝える有形文化財。都内には国が指定する重要文化財や市区町村が指定する登録有形文化財の中で、喫茶が楽しめる場所がいくつかある。

それらは文化財という共通点を持ちながらも、江戸文化を伝承する建物もあれば、世界的な建築家が設計したもの、フランス発祥の建築様式など、それぞれに個性豊かだ。名建築の中に佇むカフェでぜひ特別な時間を過ごしてほしい。

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