東京、おでんの名店15選

麻布十番や赤羽、人形町、神楽坂など、東京の美味しいおでんを食べる
作成者: Time Out Tokyo Editors |
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Text by Takeshi Tojo

肌寒さが増してくると、おでんを思い浮かべる人は少なくないはず。今や、コンビニエンスストアでも通年扱う店舗が出てくるなど、国民的ソウルフード、おでん。湯気のたちのぼるアツアツのおでんに、からしをつけて頬張れば、腹の中からぽかぽか温まる。そこに燗酒の一本でもあれば言うことなし。だが、おでんの何が日本人の胃袋をつかんで離さないのか。それは、数十種のおでん種をひとつの鍋の中でまとめあげる、鍋ならではの寛容性によるものかもしれない。ベースとなる出汁に、練り物から溶け出す魚介系の旨み、ダイコンをはじめとする野菜の優しい甘さ、場合によっては牛すじなどの動物性の旨みが合わさった複合的な味わいが、コトコトと煮込まれるうちに、それぞれのおでん種に含まれてゆく。旨みの宝庫といっても過言ではない。ここでは、気楽な立ち飲みおでんから、下町の老舗、持ち帰りのみの名店まで、東京都内の人気おでん専門店15店を紹介する。

レストラン, 日本料理

御茶ノ水:こなから 本店

icon-location-pin 御茶ノ水

お茶の水にある、関西風おでんを楽しめる「こなから」は、おでん好きの間では広く知られる店だ。寒い時期には、掘りごたつ式のカウンターで幸せそうに酒を酌み交わす客で連日賑わう。店内には、縁起物のひょうたんが随所にあしらわれているが、特にカウンター中央にある特注のひょうたん型の鍋は目を引く。

店主は鹿児島出身だが、関西での修行が長かった経歴を反映し、クリアであっさりとした滋味深い出汁のおでんを提供。ダイコンやいわしつみれ、昆布などの定番に加え、卵を加えてサクサク食感にした自家製のコンニャク、レンコンのすりおろしと、みじん切りのレンコンを混ぜたれんこん餅(季節限定)など、オリジナリティ溢れるおでん種も魅力だ。特におすすめしたい冬限定の『かきおでん』は、あっさりした出汁に葛打ちした牡蠣が浮かぶ一品で、噛み締めると牡蠣の旨みがじゅわっと口中に広がる絶品おでん。メニューにあったらぜひ頼みたい。また、『揚げたて自家製さつまあげ』や『いわしのぬか漬け』など、酒飲みに嬉しいアテも多い。営業は18時〜と20時30分〜の二回制。予約必至だが、わざわざ行く価値はある。繁忙期にはぎゅうぎゅう詰めになる店内では、隣の客と肩が触れ合うこともあるが、それがまったく苦にならない希有な店だ。 

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上野:多古久

icon-location-pin 上野

上野の不忍池からすぐ近く、池之端にある多古久は、長年通うファンも多い、下町ではよく知られるおでん専門店だ。戸を開けてまず目に入るのは、磨きこまれた銅製の特注おでん鍋と、よく使いこまれた燗銅壷(燗酒をつける道具)。設えや店構えが醸し出す、時の流れを感じさせる雰囲気も魅力的な一軒だ。

下町風の濃い色をした出汁だが、あっさりした風味が特徴的。大トロとネギを交互に串に刺した『ねぎま』や、鍋の中のあらゆる旨みをたっぷり吸った『ちくわぶ』、ぷりんとした食感がたまらない『いいだこ』など、いずれもしみじみと噛み締めたくなる味わい。また、店名に掲げる「蛸」のモティーフがあしらわれたビールグラスは、ユーモラスで目を引くが、これは八本足の八という数字が意味するところの末広がり、吸盤で客を捉えて離さない、といった言葉遊びによるもの。いつも鍋前に立って接客していた名物女将が他界したことは悲しい限りだが、きっとこの店の魅力は若女将の代になっても失われることはないだろう。 

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半蔵門:割烹 稲垣

icon-location-pin 麹町

半蔵門にある割烹稲垣は、関西風、関東風、名古屋風の3種類のおでんを楽しめる欲張りな店だ。現在は、2代目が厨房を切り盛りしているが、先代の味を引き継いだおでんは今も健在。クリアな出汁であっさりした味わいの関西風、濃口醤油で風味付けした関東風、こっくりした赤味噌の名古屋風のいずれも甲乙つけがたいが、絶対に外せないのは名古屋風だ。なかでも、とろりと柔らかい口当たりの『牛すじ』、中まで味の染みた『こんにゃく』と『玉子』は絶品。白飯を頼み、牛すじとつゆをたっぷりかければ(行儀の悪さには目をつぶってもらうとして)、至福の時が訪れる。

だが、この店の魅力はおでんだけに留まらない。きっちりと塩をきかせ、レア感をほどよく残した締め加減の『〆さば』、甘辛く濃いめの味付けで酒が進む『いわし梅煮』、箸休めにちょうどいい『小松菜と油揚げの煮浸し』など、酒肴の充実さもうれしい。まずはビールとおでんをいくつか頼み、お品書きを片手にあれこれ悩むのが楽しい店だ。厨房の清潔さ、無駄な動きのない主人の仕事ぶり、てきぱき接客するスタッフなど店全体が気持ちいい。

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神田:尾張屋

icon-location-pin 神田

1927年創業の尾張屋は、女将の気さくなおしゃべりと名物おでんを求めて、長年通うファンが多い店だ。濃い飴色をした出汁でくつくつと煮たおでん種は、ざっと30種以上。ほんのりと舌に甘みが残る、やさしい味わいの出汁は老若男女から好まれる味だ。

特におすすめしたいのは、『キャベツ巻』。たっぷりの合挽肉を肉厚なキャベツで巻いており、出汁をたっぷり含んだキャベツの甘さとジューシーな肉の味わいが口中で混ざり合えば、思わず笑みがこぼれるはずだ。また、客の箸の進み具合に気を配りつつ、きびきびと接客する女将と大将とのおしゃべりもまたこの店の魅力。

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日本橋 お多幸本店

icon-location-pin 日本橋

日本橋にある、純関東風おでんの老舗。甘辛く、濃いめの出汁で煮込んだおでんを楽しめる。名物の『とうめし』は、茶飯の上に味の染みた絹ごし豆腐のおでんを載せた豪快な一品。ランチでは、煮卵入りの大根の煮付け、しじみのみそ汁、サラダが付いたボリュームたっぷりの定食を670円で食べられる。日本橋界隈で、リーズナブルに腹を満たしたい時におすすめだ。 

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立石:丸忠かまぼこ店

icon-location-pin 立石

立石駅から歩いてすぐ、アーケード街の中にある丸忠かまぼこ店は、隣接するかまぼことおでん種の専門店と同系列の小さな酒場。店内はコの字型カウンターに、4人がけのテーブル席が2つのみ。半オープンエアとなっており、まるで商店街のど真ん中で飲んでいるような不思議な感覚だ。

日本、イタリア、フランスをはじめとする自然派ワイン、店主が目利きした日本酒など、酒のラインナップがかなりの充実しており、日本酒派、ワイン派、焼酎派、いずれの人間も満足できるはず。つまみも種類豊富で、隣からアツアツを運んできてくれるおでんや、おでんの出汁でうどんをゆでた『うでん』をはじめ、魚介を使った一品や、センスのいいチーズのセレクトといった酒のお供に事欠かない。

同店のおでん種のなかでも出色の出来ばえと言えるのが、『おでんのトマト』だ。クリアで雑味のない出汁で、湯むきしたトマトを丸のまま優しく煮含め、仕上げにドライバジルを散らしたものなのだが、それはそれは堪えられない美味しさ。トマトを崩しながら食べ進めると、トマトの酸味が出汁と混ざり合い、そこにバジルの香気が加わって、おでんというよりも上質なスープを飲んでいるかのように錯覚する。おでんの域を越えたおでんと言ってもいいかもしれない。ここに来たらぜひ頼みたい一品だ。

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東北沢:おかめ

icon-location-pin 代々木上原

代々木上原と東北沢のほぼ中間、航研通り沿いに位置する、関西風おでんの店。透き通った出汁と供されるおでんは、どれも上品かつ滋味深い味わいだが、なかでもタコと豆腐は外せない。

そのほか、しめ鯖やコチなどの刺身をはじめ、すりおろした山芋を海苔で包んで揚げた磯辺揚げなどの一品料理、酒肴も充実している。一人でさっくりと飲むにも、友人としみじみ盃を交わすにも最適。最後のシメには、おでんの出汁を使ったお茶漬けをぜひ味わってほしい。おすすめは、1階のカウンター席だが、こちらは予約不可。しかし、掘りごたつのある2階の個室であれば、予約をすることができる。冬の寒い時期だけでなく、夏の暑い日でも食べたくなるような、さっぱりとしたおでんを味わいたいのなら間違いない店だ。

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神楽坂 恵さき

icon-location-pin 飯田橋

神楽坂、早稲田通り中ほどあたりを1本入った路地に佇む同店は小さな店だが、肌寒さが増しておでんが恋しい季節ともなれば、連日予約で満席になる。おでんと炭火焼の2つを主軸に、良質な鮮魚を用いた刺身などの一品料理も充実しているという、酒飲み泣かせの店だ。

特筆すべきは、注文ごとに小さな銅鍋で丁寧に仕上げるおでん。鮮度の良いアジを使う『あじつみれ』は、口の中でほろほろとほどける一品。薬味の香りがアジの風味をより一層引き立てる。また、身厚のハマグリを1つだけ朱塗りの椀に盛り、たっぷりの出汁を張った潔いといえる一品や、完璧な半熟に茹でた卵を出汁で温めたものなど、素材そのものに焦点を絞ったおでんが印象的だ。メニューには、おでんの盛り合わせもあるが、好みのおでん種を1つずつ注文して味わいたくなるはず。大人のためのおでん屋と言えるだろう。

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レストラン

中目黒:ホームラン

icon-location-pin 中目黒

目黒銀座商店街の外れにあるホームランは、静岡B級グルメのひとつである静岡おでんを楽しめる小さなバー。カウンター席と立ち飲みスペース、テーブル席からなる店内では、スケボーフォトのドキュメンタリー映像が流れていたり、80年代洋楽ロックやダブ系などの幅広い音楽がかかっていたりと、いかにも中目黒らしい雰囲気だ。静岡県出身で野球好きだというオーナーの好みを反映した店作りで、ゆるゆるとおでんをつまみながら友達と飲むには良い一軒だ。

静岡おでんとは、静岡市内とその近郊で愛されている庶民派かつジャンクなおでん。真っ黒といってもいいくらいに濃い色味の出汁が特徴で、よく煮込んだおでん種に魚粉と青海苔をたっぷりとふりかけるのが特徴だ。出汁は昆布と鰹がベースだが、アジとイワシを使った静岡名物の『黒はんぺん』などの練り物系と『牛すじ』『白モツ』などを煮込むことで、魚介系と動物性の風味が合わせり、特有の味わいとなるのだろう。おでんのほかには、ハムカツを連想させるようなジャンクなつまみ『黒はんぺんのフライ』や、おでん種の白モツと牛すじを白飯に乗せて生卵を落とした『ホームラン丼』なども。朝4時まで営業しているのも嬉しいところだ。

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赤羽:手打ちうどん すみた

icon-location-pin 赤羽

赤羽駅から少し離れた住宅街にある、讃岐うどんの専門店。讃岐うどんの本場、香川では店内におでん鍋を置いていることが多いが、ここもその流れを踏襲しているのが特徴。コンニャク、牛すじ、ダイコンなど、こっくりした味わいの出汁でよく煮込まれたおでん種5種の盛り合わせには、ほんのり甘みのある味噌を用いた「からし味噌」が添えられている。うどんとおでん。東京ではまだ馴染みのないスタイルかもしれないが、きっとハマる人は多いはずだ。

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レストラン

浅草:大多福

icon-location-pin 浅草

浅草のおでん専門店として知られる大多福は、赤提灯や坪庭を配した店先など、情緒たっぷりの雰囲気。タイムスリップしたような気分が味わえるのは、1915年(大正4年)創業なればこそ。出汁の色合いは薄めだが、鰹や昆布だけでは出せない深みがあり、あっさりとしつつもコクがある。おでん種は『巻き湯葉』『あわ麩』といったものから、オーソドックスなものまで約40種ほどが揃う。特製の壷におでんを入れてくれる土産は、見た目もキュートでパーティの手土産に最適。

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麻布十番:福島屋

icon-location-pin 麻布十番

麻布十番商店街に店を構える福島屋は、1921年(大正10年)から続く、界隈でも歴史のある店だ。出汁は鰹よりも昆布が強く、すっきりとした上品な薄味。店内にはイートインスペースもあり、定食や酒なども提供しているが、持ち帰りを注文する客が多いようだ。店では、おでん種も販売する。いつもにこやかな笑顔で接客してくれるおばあちゃんも魅力的な一軒だ。

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人形町:美奈福

icon-location-pin 人形町

人形町駅から歩いて3分ほど、古くから続く飲食店が軒を連ねる一角にある美奈福は、1953年の創業。名物の女将は今も割烹着姿で店先に立ち、おでん鍋を甲斐甲斐しく世話しながら訪れる客に対応してくれる。持ち帰り専門のおでん店で、単品注文のほか、おまかせ、デラックス、全種類入りなど、セットメニューが豊富だ。

バー

赤羽:丸健水産

icon-location-pin 赤羽

赤羽一番街の一角にあるおでん専門店。出汁は薄めの関西風で、あっさりとしているが味わい深く、どことなく家庭の味にも近い優しい風味だ。おでん種は種類豊富で、一般的なものから、ニラなどが入った練り物『スタミナ巻き』や『カレーボール』などの変わり種もあり。おでん種の販売のほか、店頭には立ち飲みスペースを併設していることもあり、常に賑わっている。

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レストラン, 日本料理

新橋お多幸

icon-location-pin 新橋

新橋駅烏森口近くに店を構える、1932年創業のおでん店。濃い色味の出汁は鰹の風味が強く、しっかりと濃いめの味が特徴的な、関東風のおでんを楽しめる。持ち帰りのおでんは、店オリジナルの赤い缶に入れられ、手土産にもぴったり。こちらもまた、新橋お多幸の名物のひとつだ。場所柄、店内はおでんや酒肴とともに酒を酌み交わすサラリーマン客が多い。

おでんの後は飲みに行く...

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