ワタリウム美術館、ヨーゼフ・ボイスなどのリターンで支援募集中

日本のコンテンポラリーアートをけん引もコロナ禍で経営難に

テキスト:
Sato Ryuichiro
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渋谷区神宮前に位置するワタリウム美術館は、和多利志津子らが1990年に開館した現代美術館で、開館以来、102回の展覧会を通してアンディ・ウォーホルやヨーゼフ・ボイスらを紹介してきた。

同館が30年にわたって日本のコンテンポラリーアートシーンで意欲的な活動を続けてきたことに異論を挟む余地はないだろう。キース・ヘリングを日本に初めて招聘(しょうへい)したのはワタリウム美術館であった。「キュレーター」という言葉が日本に普及したのも、同館によって実現したハラルド・ゼーマンやヤン・フートの来日をきっかけとしている。

このように東京のみならず日本のアートシーンをけん引してきた同館だが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、2020年3月以来来館者数が例年の半分以下に減少。小規模であるがゆえに東京都の休業要請対象には入らず、予約制で開館し続けたものの開館休業状態となり、開催予定のイベントも延期(後に中止)となった。

もちろん、そのような状況を打開すべく対策も行ってきた。8月まで開催していた展覧会では、対面しない新しいタイプのワークショップの開催やZINEの発売に着手、オンラインでも過去のイベントの映像を配信する『映像アーカイブ』もスタートさせた。

しかし、依然として新型コロナウイルス感染症収束のめどは立っていない。同館はノースポンサーの個人経営でチケット収入を主な財源としているために、現在は持続運営が困難な危機的経営状況に陥っている。

上記のような状況を踏まえて、今回のクラウドファンディングに踏み切ったという。支援された費用は、開催中の展覧会『生きている東京展』や『水の波紋2021展』(2021年2月6日(土)から開催予定)の制作費や、美術館の運営費、ワタリウム映像アーカイブのための映像デジタル化などの費用に充てられる。

このクラウドファンディングの特徴は、一つの金額に『応援コース』と『アート提供コース』の2種類ある点だ。リターンは金額にもよるが、高額になると驚くほど豪華だ。

『応援コース』は、主に美術館の応援に参加でき、リターンはメッセージと応援者として名前の掲載、美術館のチケット(2021年末まで有効)。『アート提供コース』は、チケットに加え、ほかでは手に入らない貴重なアート作品などが手元に届く。

16万円で20万円相当のジョン・ケージのエッチングが付いてくる比較的手頃な支援のほかに、最高額の150万円には200万円相当のヨーゼフ・ボイスのシルクスクリーンが、100万円ではキース・ヘリングの版画も付いてくる。ちなみに、ヘリングの版画は2013年のフィリップスのオークションで2万ドルで落札されており、破格の価格と言えよう。

松岡正剛が「東京文化の奇跡」とも形容し、ナムジュン・パイクが「アーティストにとって自由な空間」と述べた同館の支援は、今後の東京のアートシーンの多様性の確保にもつながる。自分たちの手で文化を存続する実感を得てはどうだろうか。

クラウドファンディングは2020年10月30日(金)まで。

ワタリウム美術館のクラウドファンディングの詳しい情報はこちら

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