鶴川団地
Photo: Natsumi Nakajima | 本記事の案内人を務めてくれたChaka(中央)と「夜もすがら骨董店」の店主である加藤翔太と加藤恵里子
Photo: Natsumi Nakajima | 本記事の案内人を務めてくれたChaka(中央)と「夜もすがら骨董店」の店主である加藤翔太と加藤恵里子

旅と暮らしのあわいを楽しむ、鶴川団地で過ごす一日ガイド

セントラル商店街広報・Chakaが案内する団地に息づくリアルカルチャー

Kosuke Hori
テキスト: Natsumi Nakajima
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タイムアウト東京 > Things To Do > 旅と暮らしのあわいを楽しむ、鶴川団地で過ごす一日ガイド

新宿から小田急小田原線とバスを乗り継いでおよそ40分。多摩丘陵の緑に抱かれるように広がる鶴川団地は、1960年代に誕生した大規模団地だ。建設当時は現代のタワーマンション的な立ち位置で、モダンライフの象徴だった。

この頃団地エリアは、都心と程よい距離感を保ちつつ、土地ごとのカルチャーを耕せる場所として魅力が再発見されている。ここ鶴川団地には、「鶴川団地センター名店街」(以下、センター名店街)と「鶴川団地セントラル商店街」(以下、セントラル商店街)という2つの商店街があり、近年では、移住者やコージーな小商いをする人が増え、静かな高台の街は新たな盛り上がりを見せている。

今回、案内人としてセントラル商店街の広報を担うChakaを迎えた。ホテル兼クリエーティブスペースの「EGG REC DEPARTMENT」のオーナーでもある彼女による、「旅と暮らしのあいだ」を楽しむ鶴川団地ガイド。本記事を読んで、ぜひ足を運んでみてほしい。

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団地に着いたら、まずはセンター名店街へ

鶴川駅から10分ほどバスに揺られ、「センター前」で下車すると、鶴川団地の心臓部にたどり着く。

そこには、センター名店街とセントラル商店街という二つの商店街が向かい合うように存在する。道路を挟んで隣り合いながらも、それぞれの個性を保ち続け、今も共に健在というのは全国的にも珍しいだろう。

まずはセンター名店街を案内する。

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  • 酒屋・ワインショップ
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酒舗まさるや

まず訪れたのは、「酒舗まさるや」。店内へ一歩入ると、壁一面にずらりと並ぶ酒瓶に圧倒され、ここがただの酒屋ではないことが分かるだろう。焼酎と日本酒の種類が豊富で、焼酎と日本酒の種類が豊富で、倉庫も含めると計約500種類も用意する。

若い人には国分酒造による「フラミンゴオレンジ」など、香りが華やかな芋焼酎が人気。ワインやビール、果実酒のラインアップも充実している。マニアからの評判も高く、この場所を目当てに全国各地から鶴川団地を訪ねる人もいるほどだ。まさに「知る人ぞ知る」名店だと言えるだろう。

Chaka:お土産やお祝いを買いたい時に、よく利用しています。飲食関係の友達が遊びに来ると必ず紹介しますね。定期的に開催している角打ちイベントの日には、周辺の駐車場がほぼ満車になるので、「またまさるやさんが何かやってるぞ」とすぐに分かります。

今日はいらっしゃらないけど、店主のキャラクターもすごくすてきなんです。

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  • 食料品店
  • 町田

佐藤商店

1968年(昭和43年)に鶴川団地とともに開店し、今日まで営業を続けている精肉店。2代目の主人が店頭で焼き鳥を焼く姿は、センター名店街の名物ともいえる。

いちおしの手作りコロッケは、何個も食べたくなる素朴なおいしさ。「この辺りで一番オイシイ」と書かれたメンチカツも魅力的だ。

Chaka:自分や家族の誕生日には、ここでステーキ肉を買います。てごねのハンバーグもおいしいし、チキンリブもスーパーのものより身がしっかりしている。お総菜で間違いないのがガツサラダで、家で焼き肉をするときは必ずセットでいただきます。

変わりゆく景色を目に焼き付ける。

案内人のChakaが手がける、アーティストレジデンスのプロジェクト「装 sou」。その取り組みの一つに新進気鋭のシンガーソングライター、井上園子の『こんなこと』のミュージックビデオとして制作された映像作品がある。

撮影のメイン舞台に出てくるのが、このセンター名店街だ。「ここを選んだ理由は、変わりゆく景色だと分かっていたから」とChakaが話す背景には、老朽化に伴う団地の建て替え計画がある。作品によって誰かに届いたものが、変わらない愛着を残すように、そんな願いが込められている。

昭和から今日まで営みを続けているセンター名店街。現在の姿を見られる内に、ぜひ訪れてみてほしい。

次はセントラル商店街へ

センター名店街を出て、道路を渡るとすぐにセントラル商店街にたどり着く。昭和の香りが漂うアーケードの下には、八百屋やそろばん教室、骨董店など、新旧さまざまな個人店が共存している。

  • カフェ・喫茶店
  • 町田

THE DAY

内装設計・インテリアデザイン事務所のSD STUDIOが運営する、コワーキング&キッチン付きのレンタルスペース。内装のプロによる意匠と遊び心を味わえる空間で、コーヒーをはじめ、焼き菓子や輸入文房具、作家による展示などを楽しめる。

店頭の掲示スペースには、周辺地域のイベントフライヤーやショップカードが集結。最旬のローカル情報を仕入れることができる。

Chaka:EGG REC DEPARTMENT主宰のイベント時には、キッチン付きのレンタルスペースとして、よくご協力いただいています。色とりどりなワークショップも開催されていて、地域の方々の新しい楽しみになっていると思いますね。

クラフトビールのセレクトが面白くて、どれもおいしいのでおすすめです。店主の奥様が紙雑貨の作家をされていて、店内に並ぶグッズは「紙好き」にはたまりません。手紙を書く機会が多いので、よくこちらでハガキを買っています。

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宵待ち花灯

2025年に開店したばかりの新店舗。昼間は間借りの花屋やワークショップが開かれ、夜は体験型推理ゲーム「マーダーミステリー」の舞台となる、摩訶(まか)不思議な空間だ。フローリストの店主が内装も手がけたミステリアスな店内で、花と物語の世界に没入できる。

Chaka:毎日いろいろなワークショップが行われていて、お花がきっかけでこの商店街に訪れる方も増えました。店主が初めてセントラル商店街に来た時に、この辺りの人の温かさに惚れ込んで、半年足らずでお店をオープンさせちゃった。彼もかなり熱い方です。

私のお店のイベントにご参加いただいた時には、サプライズで大きな花束を贈ってくださって。そんなの好きな人にもされたことないから、ひっくり返って喜びました!お花の贈り物をしたいときは、真っ先に相談しています。

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  • 町田

おもちゃの三景

大人もテンションの上がる、懐かしの駄菓子やおもちゃが揃うおもちゃ店。その一方で、新型のベイブレードなどもしっかりラインアップされ、世代を超えて地域の子どもたちに愛され続けるゆえんがそこかしこに感じられる。向かいにあるメダルゲームコーナーも味わい深い。

Chaka:鶴川に住んでから、娘共々しょっちゅうお世話になっています。駄菓子屋はいくつになっても夢の国ですね。私のお店でイベントをやる時も、子どもへの景品にいつも協力してくださってます。

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リサイクル着物らぶり

50年ほど前に創業し、子ども服、婦人服の販売を経て、現在は着物のセカンドハンドショップになった老舗。

着物はリメイク用に300円(以下全て税込み)から、帯は500円から購入できる。ハギレを買い求めに行くもよし、1000円均一コーナーで初めての和装に挑戦するのもよしだ。

Chaka:商店街の大先輩です。まだまだ新参者なので、困ったことがあるとお母さんに助けてもらってます。なんでもリメイクしちゃうので、オリジナル商品もたくさん。ブラウスも素敵なんです。

ここの着物を使って作ったジャンプスーツは、私の一帳羅(いっちょうら)。帯は身につけずとも棚の飾り布にしてもいいですし、いろいろな楽しみ方が見つかると思いますよ。

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  • ヴィンテージショップ・古物商
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ハーモニーゼネラルストア

アメリカ古着、ミリタリー、ウエスタン、昭和レトロな雑貨を扱う。古着はブランドごとの生産国にこだわってセレクト。雑貨は日本の1960〜70年代を中心にポップな色味のものが中心に並ぶ。

「ハーモニー」という店名は、1972(昭和47)年からこの場所で商いをしていた店舗から引き継いだもの。看板も元あったデザインをサンプリングしている。

Chaka:ここ数年、服は大体こちらで買っています。仕入れてくる雑貨や洋服は、ピンポイントで私好みのものばかり。店主が機械オタクなので、昔のラジカセをスピーカーとして使えるようにしたり、照明を入れてディスプレイーにしたり。遊び心をくすぐられ、常に狙っているアイテムがあります。

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夜もすがら骨董店

鶴川団地で生まれ育った古物好きの店主による、飲めて食べられる骨董(こっとう)店。骨董の中での定番も取り扱いつつ、作者や年代が不明なものも独自の審美眼でセレクトする。ストーリーを想像する余白や、唯一無二の魅力を持った古物との一期一会を楽しめるだろう。

店頭に立つ店主夫婦はミュージシャンで「音楽仲間とライブができるように」と、客席は小上がりに造られている。昭和音楽大学が近く、ミュージシャンが多い街でもある鶴川。毎月のようにライブイベントが行われており、自然とセッションが始まる夜も多い。

名物の「焼きナポリタン」は一度食べるとやみつきになる、ここでしか味わえない一品だ。

Chaka:見つけた当初、明らかに異様なお店があると思いましたが、その嗅覚は正しかった。元々古い物が好きで、私のお店で使っている家具やディスプレーは、夜もすがら骨董店のものだらけです。

毎年恒例のハーモニーゼネラルストアと共催の「夜もす蚤の市」は、セントラル商店街の名物イベント。ほんの数年前はお客さんもチラホラでしたが、今では通りがあふれるほどの盛り上がりです。幻ではないエネルギーを感じていますね。「この場所が永遠に続いてほしい」という想いから、自分のお店も始めました。

骨董だけではなく、この場所で出会い、何かを見つけて始めた人がたくさんいる。この場所がくれるさまざまなプレゼントは、誰かの夢や居場所となる。サードプレイスなのかもしれないですね。

  • ホテル
  • 町田

EGG REC DEPARTMENT

本記事の案内人であるChakaが2023年にオープンした、ライフスタイルホテルでクリエーティブ空間。「創る・生む・集う・届ける」をテーマに、さまざまな人や音、作品が交わる小さな複合施設かつ活動拠点でもある。1階のスタジオは、音楽ライブやダンスのレッスン、ポップアップなど、幅広く利用できる。

客室は2階で、商店街の空き店舗だった長屋の建物を、ミッドセンチュリーを基調とした空間にリノベーション。居心地の良い内装が、旅のムードを高めてくれる。昭和情緒の漂う商店街から部屋へ入ると、別世界に迷い込んだようで面白い。

Chaka:商店街の中に滞在することで、旅を通した「新しいライフスタイルの試着」ができると思います。最近は移住も視野に入れて、近隣の内見の際、商店街に興味を持ち留まってくださる方も増えました。

人生は料理のように、個性やテクスチャーを組み合わせて一皿を創り出せる。日常では出会えない人やモノと遭遇してほしいです。

「過去・現在・未来」が混在する鶴川団地セントラル商店街で、新しい自身の在り方や価値観が見つかりますように。

鶴川団地の祝祭を訪れる

鶴川団地秋祭り

蚤の市や音楽ライブ、角打ちなど、年間を通して商店街の多様なイベントを楽しめるのも鶴川団地の魅力だ。

2025年10月4日(土)・5日(日)には、「鶴川団地秋祭り」の開催を控えている。鶴川団地自治会と2つの商店街が共催する、地区一番のお祭りだ。今回紹介した地元の商店など、多数の模擬店やキッチンカーの出店、各会場のステージではライブも楽しめる。

本記事で鶴川団地に興味が湧いたら、この機会に足を運んでみよう。

案内人

Chaka

EGG REC DEPARTMENT/HOTEL©︎オーナー、鶴川団地セントラル商店街の広報も務める。年4回開催しているマーケットイベント「PLANET MARKET」や、アーティストレジデンスのプロジェクト「sou 装」の企画運営など、その活動は多岐に渡る。バンド・メロカルマタのメンバーであり、鍵盤奏者としての顔も併せ持つ。

東京の街を探索するなら……

  • Things to do

下町情緒たっぷりの亀有。国民的な人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下、こち亀)の舞台として知られ、街の数カ所にある両津勘吉(以下、両さん)の銅像と記念撮影したり、漫画内に登場するゆかりの地を巡ったりと、こち亀の世界を体感できる場所が豊富にある。

また、2024年には高架下に最新アートスポット「スクワット 亀有アートセンター(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)」(以下、SKAC)が誕生し、カルチャー面も盛り上がりを見せている。多くの人でにぎわう商店街「ゆうろーど」でグルメを楽しんだり、地元客に人気のバーをハシゴしたりするのもいいだろう。

本記事では、多方面で活気づく亀有でしかできないことを5つ厳選して紹介したい。

  • Things to do

「全国で2番目に小さい市」として知られる狛江市。徒歩で一周できるほどのコンパクトシティだからこそ、お店同士のつながりや地域の人々の交流が深いのが特徴だ。

また、「狛江フェスティバル」や「地べた音楽祭」などの音楽イベントが開催されるなど、音楽を愛する市民性も魅力の一つ。

南西には多摩川が流れ、川沿いでテイクアウトした食事を楽しむのもおすすめ。のどかな狛江の風景に癒されながら、ゆったりとした時間を過ごしてみては。

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どの路線の駅からも遠いが、それがもたらした聖域のようなピースフルな環境が魅力の和田堀公園エリア。環状第7号線の手前で善福寺川がS字形に屈曲した部分に位置する和田堀周辺は、古墳時代の竪穴式住居などの遺跡が発掘され、バードウォッチャーが野鳥観察に集まるのどかな場所だ。

公園近辺には朝食が食べられる古民家カフェや釣り堀、週末のみ営業している公園内の古着屋やベイクカフェなど、ウォーキング途中に立ち寄りたいスポットも多い。紅葉の美しい季節は特におすすめで、鳥のさえずりに耳を傾けながら「和田堀探検」してみては。

  • Things to do

渋谷と吉祥寺をつなぐ、京王井の頭線沿線の中間ほどに永福町は位置する。街を象徴する神社、「杉並大宮八幡宮」が「東京のへそ」と呼ばれるように、東京都のちょうど中央でもある。この周辺には弥生時代の祭祀(さいし)に関する遺跡もあり、古くからパワースポットとされていた可能性もあるとか。

映画監督や演劇関係者などの文化人が多く住み、知る人ぞ知る通好みの名店も点在している。閑静な住宅街や昔ながらの商店街を散策しながら、自分だけのとっておきの場所に巡り合おう。

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日本最大厄除け大師・深大寺の門前町であるこの地域は、湧水が多いことでも知られる。深大寺植物公園の分園・水生植物園や都立農業高校神代農場のわさび田など、潤沢な水源を生かした施設もある。

深大寺そばも、蕎麦の栽培、水車を利用しての製粉、釜ゆでやさらしなど、この地の水の恵みにより発展した名物なのだ。

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