茶禄 - Cha Lu -
「茶禄 」店主の鄧閎熙
「茶禄 」店主の鄧閎熙

台湾茶のレジェンドの系譜を継ぐ若き店主が新大久保でティースタンドをオープン

懐かしさと斬新さが同居した「一杯から始まる文化交流」

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中国茶とは一線を画す台湾茶。数ある中で銘茶として最も知られているのが凍頂烏龍茶だ。馥郁とした香り、さわやかな口当たりとほのかな甘みが魅力で、2煎3煎と杯を重ねるにつれ変化していく味わいは、茶ならではの醍醐味。産地は台湾中部の南投・鹿谷郷で、この地では中学校で茶の淹れ方の授業もあるという。「私も習いました」と穏やかに笑うのが鹿谷郷出身の若き台湾茶店の店主、鄧閎熙(テン・ホンシ)である。

東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ「International Tokyo」。第12回は、新大久保の新しい台湾フードコート「キムチドリアンカルダモン(K, D, C,,,)」に、台湾茶専門店「茶禄 - Cha Lu -」をオープンしたに話を伺った。

茶禄 - Cha Lu -
Photo: Kisa Toyoshimaフードコート「K,D,C,,,」。奥に店舗を構えるのが茶禄

鄧は出身地に加え、祖父が凍頂烏龍茶の品質向上に勤め世に広めた立役者・林光演で、母は所有するコテージを中心に茶道教室を開く教師、父は南投に茶畑を持つ茶商という、台湾茶のレジェンドである。

台中のオフィスで両親から話を伺ったところ、鄧は台湾で放映されている日本アニメなどを通して、子どもの頃から日本が好きだったという。その思いが高じて高校卒業後に2009年来日、まず日本語を身につけ、一方でモード学院でファッションを学んだ。ブレイクダンスも嗜む多趣味な人物だが、軸足はたえず「台湾茶」の世界の紹介と普及にあり、様々な経験をそれに生かしている。

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ラフな雰囲気で、本格台湾茶を味わう

鄧は2024年年末に、新大久保駅ビル3階の台湾美食専門と化したフードコートK,D,C,,,の一角で台湾茶店「茶禄」を開いた。フードコートという場所柄もあり、一見カジュアルな店構えながら味は本格派だ。バーテンダーを思わせる黒一色で統一したスタイリッシュな出で立ちで店に立ち、台湾茶の奥深い世界へ誘ってくれる。

茶のオーダーは「杯(カップ1杯分)」の9種(480円〜、以下全て税込み)と「壺」の17種(1100円〜)から選べる。テイクアウト用の紙コップ1杯でも、1杯ずつ茶壺を使って本式に煎れたものを供する。香しい香りと美味さに思わず見張ることだろう。「壺」は茶壺(小ぶりな急須)で供されるもので、お湯を注ぎ足せば4杯以上楽しめる(1100円〜)。

いずれもハイクラスの茶葉を、茶商である実家から取り寄せ、種類毎に茶壺を使い分けて供する。茶壺は使うことで茶の成分が染みこみ、味に深みが増して育っていく。それゆえ同じ種類ごとに茶壺を変えることが理想。日本の台湾茶専門店でもそこまでこだわっていれる店はあまりない。堅苦しくないラフな雰囲気の中でとなるとなおさらだ。

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台湾茶教室や、茶を五感で味わうプログラムも用意

カウンター席を使って本格的な台湾茶の教室も開いている。初心者向けの初級から始まり、続けて行けば、単に茶をいれる技術を超えた、3代に渡って引き継がれる台湾茶文化の神髄を、オリジナルプログラムで学ぶことまでできる。

また、アイマスクで視覚を遮り、嗅覚、触覚、味覚を研ぎ澄ませて喫茶するイベント「無光茶会」なども行っている。鄧は伝統的な台湾茶の味にこだわる一方で、安穏と伝統の中に閉じこもってはいないのだ。ゆえに新しい台湾味の探求にも余念がない。

来日後に日本酒と焼酎の利き酒師のライセンスを取得、バーテンダーの経験も重ねた鄧は、経験で培ったノウハウと生来のセンスで、オリジナルの茶も作りあげる。

冷たい茶をクラブソーダで割ってシャンペングラスで供したり、季節限定で旬の台湾パイナップルを現地から取り寄せ、細かく刻んで氷で割った四季春茶と合わせてみたり、見た目も計算された「変わり種」は、さながらカクテルで、深い味わいと満足をもたらす。

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台湾茶に合わせる本格フード

一方、茶に合わせる軽食類にも隙がない。「茶葉蛋(チャイェダン)」=茶葉で作るゆで卵は、台湾の日常食でコンビニで必ず遭遇する食材だ。鄧はこれを、高級茶葉を使った自家製で供している200円〜。上品な香りとコクがほどよく煮玉子に染みこんで、抜けもいい。茶との相性も抜群だ。

やはり台湾では定番の「奶油花生厚片(ナイヨウファシェンホウピィエン)」=ピーナツバタートーストも絶品400円。2種類のピーナツバターをミックスしたペーストに、岩塩をひと振りしたトーストで、絶妙の甘塩っぱい味わいは現地より美味かもしれない。こちらも茶との相性は抜群で、ピーナツバターの油分をほどよくほごしてくれる。

台湾の「おいしい日常」を届ける軽食店

さらに茶禄における茶と軽食のペアリングをサポートしているのが、K,D,C,,,に新たに加わった軽食店「天天飽」だ。作る手間のかかる料理を担当している。

台湾・高雄出身の母親を持つ店主の渡邊匡彦(わたなべ・まさひこ)は、ウェブデザインの仕事をしていたが、子供時代から好きだった料理作りの世界に入ることを決意。台湾の“おいしい日常”を伝えるべく、西神田のシェアキッチンでの限定営業を経て、今年正式に店開きした。

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茶禄とのコラボとしては、日本人の好む豆乳をおぼろ豆腐状にした塩味スープの鹹豆漿(シェントウジャン)か、台湾風豚肉ハンバーガーの刈包(グァバオ)に、茶禄の相性のいい茶を組み合わせたコラボセット(鹹豆漿980円、刈包1100円)。

あとはぜひ試してみてほしいのが、最近注目の台湾風おにぎりの飯糰(ファントァン)だ。揚げパンや肉そぼろ、ピーナッツ粉など7種の具を、もち米で包み込んだ品で見た目は素朴ながら、もち米のもっちりした口当たりと、さまざまな具材が織りなす味わいは日本人には新鮮でクセになる。

渡邊は高雄の有名な老舗「大港飯糰」で作り方を学び、そこに独自の工夫を重ねている。ベーシックな「招牌飯糰」(690円)をはじめ、台東産の紫米を使った、紫色の「紫米飯糰」(790円)や、ツナマヨの「鮪魚飯糰」(690円)、甘口のきび糖ピーナツ「甜飯糰」(490円)なども用意。いずれも茶とよくマッチする。

台湾茶を通して一期一会の縁を結び、沢山の「禄」を見出せるような場を作っていきたいという鄧。彼の挑戦から目が離せない。

もっと東京で活躍する外国人のストーリーを知りたいなら……

2014年からフランスのナチュラルワインにこだわり、青山の隠れ家のような一角でワインバーを始めた2人がいる。「アペロ ワインバー 青山(apéro. wine bar AOYAMA)」を営む、フランス人夫婦のギヨーム・デュペリエと、クロエ・ブネだ。

自ら母国を飛び回り、生産者の顔が見えるワインと日本のオーガニック食材を使った料理を提供する彼らの店は、たちまち人気店となった。

東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ「International Tokyo」。第10回は、日本におけるナチュラルワインの注ぎ手として、先駆者的存在の2人に同店に込められたストーリーと展望について話を伺った。

吉祥寺駅北口から徒歩5分。2022年4月28日にオープンしたウクライナの家庭料理店、「バブーシャレイ(Babusya REY)」がある。利用客の投稿したSNSが話題となり、1日100人以上の客が狭い階段に列を作る。

8席ほどの小さなバーを間借りして土・日曜・祝日の昼間のみ営業。「ボルシチ」やマッシュルームとジャガイモを包んだウクライナ風餃子「ヴァレーキニ」、キーウ発祥のウクライナ風チキンカツレツなどを提供している。

プロボクサーとして活躍する小笠原裕典(以下、小笠原)とウクライナ出身の妻、ビクトリヤ、その姉のエウゲニア、夫のアントンの4人で切り盛りする。エウゲニア夫妻はウクライナから3月末、ビクトリヤを頼って息子と両親と避難してきたばかり。狭いカウンターの中では日本語、英語、ロシア語が飛び交う。

東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ「International Tokyo」。第6回は、「バブーシャレイ」の小笠原夫妻に、同店の魅力とオープンに込められた思いを語ってもらった。

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  • カフェ・喫茶店

2022年12月、台湾で買いつけた置物や飾りを配し、香の匂いや台湾の音楽などで幻想的な空間に仕上げた自家焙煎(ばいせん)コーヒーショップ「アジュラ(ajura 、翹璹欏)」が新宿御苑近くにオープンした。店を手がけているのは、高田馬場で人気のコーヒーショップを営む台湾出身のリウェイ(李維軒、29歳)と、妻で日本人のハルコ(29歳)の2人だ。

リウェイは、ラテアート技術を競うバリスタの選手権大会で多数の受賞歴を持ち、2022年には世界大会「フリーポアー・ラテアート・グランプリ2022」で優勝を果たした。妻のハルコも、2022年に台湾で開かれたラテアートの大会で準優勝に輝いている。

東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ「International Tokyo」。第9回は、台湾人であるリウェイと妻のハルコに、台湾から日本に移り住んだ経緯や、1号店が人気店となるまでの裏側、将来の展望について話を聞いた。

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