インタビュー:藤井隆_1
Photo: Keisuke Tanigawa
Photo: Keisuke Tanigawa

インタビュー:藤井隆

筒井康隆原作の舞台「ジャズ大名」への思い

広告

タイムアウト東京 > カルチャー > インタビュー:藤井隆

テキスト:えるあき

2022年4月、テレビ番組「新婚さんいらっしゃい!」の看板MCに抜てきされた藤井隆。同年9月には「Music Restaurant Royal Host」を発売し、全国を巡った。2023年はYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」でデビュー曲「ナンダカンダ」を披露し、約1週間で500万視聴を超えるなど、芸人とアーティスト、そして俳優とマルチに活躍し目覚ましい活躍を見せている。

ノリに乗る彼が次に出演するのは、筒井康隆の傑作小説「ジャズ大名」の舞台化作品。同作のストーリーは江戸末期、千葉雄大演じる音楽好きの藩主と、アメリカから漂着した黒人奴隷との出会いから始まる。奴隷たちの音楽に魅せられた藩主の家老役を演じるのが藤井だ。

城中でジャムセッションを繰り広げるシーンなど、奇想天外なコメディーに仕上がっている同作。2023年12月9日(土)から「KAAT 神奈川芸術劇場」で始まる上演に先駆けて、その意気込みを語ってもらった。

関連記事
インタビュー:高橋一生
インタビュー:吉田羊×松本紀保

ー今日はポスター用の撮影日ということで、舞台の始まりを感じさせる一日でしたが、どのようなお気持ちで撮影に臨まれたのでしょうか。

ポスターやパンフレットの撮影は演出家の方や衣裳さん・ヘアメイクさん、といったスタッフの皆さんと、その舞台のビジュアルイメージを共有する最初の機会になることが多いです。今回は時代劇ですから、メイクをしてみて、衣装に袖を通してみて、「楽しみ!」という気持ちであふれました。早く稽古に入りたいですね。

ー出演のオファーが来た時、どのようなお気持ちでしたか。

演出家の福原充則さんに呼んでいただいたのがうれしくて、それが一番大きかったです。ボクが観た福原さん脚本の舞台には「一生懸命頑張ることは素晴らしい」というメッセージが面白く描かれていてとても感動しました。なので今回、福原さんの世界に入れることがうれしかったです。 

ー舞台という、テレビやライブとはまた異なるナマの臨場感を感じる現場に対して、受け止め方の違いはありますか?

自分は若い頃からいろいろな仕事をさせていただいてきました。「好きにやっていいんだよ」と言ってくださる方もいれば、本当に厳しくしてくださった方もいます。タレントが来てパッとやって「楽しくやっていいんだよ」と言ってくれた方もいらっしゃいました。

どのやり方が正しいとかはなくて、自分の気分とかノリとかコンディションとか関係なく本当にこてんぱんに怒ってくださる方に出会えてきたことが本当にありがたいし、自分は恵まれていると思うんです。

特に舞台は、吉本新喜劇という喜劇が僕のキャリアのスタート地点なので、とにかく楽しいです。でも、本当の目的は自分が楽しむことではなく、お客さまに楽しんでいただく事だと思っています。

ーKAATの舞台に立たれるのは2016年の「JAM TOWN」以来ですね。

劇場というのは不思議で、そこで何十公演やることで「通い慣れてきた!」と思える瞬間があると思えば、全く距離感を詰めてさせてもらえない劇場もあります。

でも、KAATは「おかえり」「ただいま」と言われている感じがするんです(笑)。その理由は正直分からないんです。2012年に出演させていただいた三谷幸喜さんの三谷版「桜の園」が初めてのKAATでの舞台出演だったんですけど、東京と旅公演をして、千秋楽がKAATでした。出演者もスタッフさんもみんな仲良しな状態で現場入りしたから、最後のご褒美みたいな気分だったのを強く覚えてます。

終演後に中華街で乾杯して、楽しくて終電を逃して、タクシーで帰ったりもしました。「こんなことしてる場合じゃないでしょ」って笑って話しながら解散しました。

僕、中華料理が大好きなんですよ。だから、KAATの舞台では煮詰まることが怖くないです。すぐ横に中華街があるから。何があっても「中華食べにいけばいいやー」って思えるから、全身全霊で向き合えるんです。

広告

ー今回の作品が今後の音楽活動に何か新しい風を入れ込むきっかけになる予感はありますか。 

全くないですね。「次に生かそう」ということを考えるんじゃなくて、今この現場で完全燃焼することを一番に考えたいんです。 

ある舞台の千秋楽で、大先輩の方が「ああこれでもう明日からこのセリフを言わなくて済む。せいせいする」って言ったんです。でもそれは大うそで、すっごい寂しかったそうです。

その方が楽屋にカレンダーを作って「コンチキショー」って言いながら、終演した日の日付を消していくんですよ。終わるのが寂しいんです。でも、口では「あーせいせいする」って言っていました。僕もそうありたいです。「次の自分の何かに生かせるように頑張ります」ということよりも、とにかく完全燃焼がしたいです。

ー藤井さんは、ファンからの声で自分が変化した経験はありますか。

よく「陰ながら応援してます」とか「隠れファンです」とか言われるんですけど、「もっと表に出てきてください!隠れないで!」って思うんです(笑)。自分がやってきたことを振り返ると、ちょっと秘めた感じのことをやってきたのかもしれないです。 

ファンが表に出てきてくれないことに悩んだ時期もあったんですけど、結局アングラでもないし、どメジャーでもないという立ち位置が自分らしさなんだなと気がついたんです。だから「隠れファン」っていうのは実は褒め言葉なんだな、と思えるように今はなりました。

ーなるほど。では最後に、今作への意気込みを教えてください。

自分のことを見込んで、本作に呼んでくださった方々の期待に応えたいです。「藤井を呼んで良かった」と稽古中に思ってもらわなくてはいけないと思います。藩主役の千葉さんが昔から僕を応援してくれていたらしく、今回の共演を楽しみにしてくださってると聞いてうれしかったです。

ただ正直、もう膝が悪いとか腰が痛いっていう年齢になってきてます(笑)。皆さんのご迷惑にならないようにと思います。現場を燃えさせるような家老役をやりたいです。まずは、お稽古の間にそういうものを作り上げないと、その先にいてくれるお客さまへお届けできないです。横浜まで観に来てくださるお客さまが喜んでもらえるように頑張るので、ぜひ劇場へお越しください!

 

スタイリスト:奥田ひろ子
ヘアメイク:大宝みゆき
衣装協力:ヨシオクボ(03-3794-4037)

ステージインタビューが読みたいなら……

「赤坂ACTシアター」を専用劇場として無期限ロングランする、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」。1990年に劇団四季にて「オペラ座の怪人」ラウル・シャニュイ子爵役でデビューして以来、数々の主役を務め、現在は舞台に映像に音楽にと活躍。3キャストの中で最も長いキャリアを持つ石丸は、新たな挑戦をどう受け止めているのだろうか。

広告

俳優として、歌手として、タレントとして、マルチな活躍を見せてきた草彅剛。その彼の2018年は、「舞台」が大きなキーワードといえるだろう。旅芸人ザンパノと彼に付き従う女性ジェルソミーナの姿を描いたイタリアの名匠フェデリコ・フェリーニ監督の映画を原作に、日本で新たに作られる舞台だ。寡黙で不器用なザンパノを、草彅はどのように演じるのだろうか。

文楽人形遣いで、2021年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された桐竹勘十郎と、舞踊家で、愛知県芸術劇場芸術監督の勅使川原三郎が登場。共に1953年生まれの同い年で、どんな動きをもこなす優れた演者であり、また、「人形」「絵画」といった共通点も持つ二人。前編では、それぞれの原体験を聞いた。

広告

浪曲師の玉川奈々福とオペラ歌手の鳥木弥生。ともに声を使う仕事に従事し、ひょんなきっかけでそのジャンルや師匠と出会い、演者として活躍し、さらにはプロディースも手がけ、連載を持って文才を発揮する才女でもあり……と、共通するところの多い二人が語る、それぞれの世界の魅力や未来とは。

おすすめ
    関連情報
    関連情報
    広告