日本における多文化共生のリアル

日本在住外国人にアンケートを実施、そこから見えるリアルな声

作成者: Time Out Tokyo Editors |
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タイムアウト東京  Open Tokyo 日本における多文化共生のリアル

テキスト:庄司里紗

日経マガジン2019年8月発行記事より

日本で暮らす外国人が増えている。法務省の統計によると、2018年末時点で在留外国人の数は約273万人となり、過去最多を記録。今年4月には入管法の改正で新たな在留資格が創設された。建設業や外食産業などでも外国人が働けるようになり、彼らの存在はますます身近になっている。多様な人々と混ざり合い、ともに生きる「マルチカルチュラル(多文化)」な社会の実現に必要なことは何だろうか。独自のアンケートや識者へのインタビューを通じて考察した。

まず、「外国人として日本で暮らす中で不便や課題を感じたことは?」という質問に、8割近くの在日外国人が「日本で暮らす上で不便や課題を感じている」と回答。特に日本語でのコミュニケーションについて課題を指摘する回答が多く、日本語を学ぶ機会の提供やサポートを求める声が目立った。ごみ出しの複雑なルールや災害時の対応について戸惑いを感じる意見も複数あった。

例えば、ドイツ出身のライターで翻訳者のタベアは、銀行に英語を話せる職員がおらず、手続きにかなり時間がかかってしまったそうで、金融機関にはせめて英語対応をしてほしいと話している。

そして、「外国人であることを理由に差別やアンフェアな扱いを受けたことは?」という問いに対しては6割以上が、外国人であることを理由に差別的扱いを経験したと回答。具体的な事例として最も多かったのは、家を借りる際に入居を断られるケースだ。また、口座の開設や行政サービスなどの手続きにおいても「外国人への配慮が不十分」との指摘が目立った。これらの点については改善が急務だろう。

「日本が多文化共生していくために改善すべき点」については多くの回答者が、日本語が得意でない外国人でもスムーズに暮らしたり働いたりできるよう、多言語対応をはじめとする社会施策や公共サービスの充実を望んでいることが分かった。一方、滞在歴の長い一部の在日外国人からは「日本で暮らす以上、外国人も日本の文化や言語に適応するべき」との声も寄せられている。

しかし、多文化共生や多様性理解には課題が残るものの、7割以上が「これからも日本に住み続けたい」と、多くの在日外国人は日本に対してボジティブなイメージを抱いている。個別回答では、治安の良く清潔な都市環境や日本人の礼儀正しさ、おもてなしの精神などを高く評価する声が目立った。

※日本在住外国人を対象に、多言語シティガイド『タイムアウト東京』のウェブサイト上でアンケートを実施(調査期間2019年6月21日〜7月12日)。回答者は37カ国205人(18〜65歳の男女)。

東京在住の外国人の声……

フィンランド出身/イリ・サーリネン(32歳) 翻訳者・編集者 滞在歴10年

「外国人=日本語が分からない」と考える日本人はとても多い。外国人にもまずは日本語でコ ミュニケーションする考え方が広がってほしい。

コロンビア出身/オネリス・リコ(29歳) 学生 滞在歴4年

日本語を話せないとさまざまな場面で不便が生じます。ただ、日本語を正しく話しても、外国人だと無視されてしまうこともあります。

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モロッコ出身/ジネブ・ベクタチ(25歳) デザイナー 滞在歴3年

イスラム教徒向けのメニューや食材を分かりや すく表示してほしい。安心して食事ができる場所を探すのにいつも苦労します。

ネパール出身/ライ・サンディヤ(27歳)コンビニ勤務 滞在歴4年

日本人は礼儀正しく、街も清潔で素晴らしい。ただ、敬語の使い方に厳しいことと、印鑑の文化は改善してほしいと思う。

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ドイツ出身/タベア・グロイナー(28歳)ライター・翻訳者 滞在歴4年

銀行に英語を話せる職員がいなくて、手続きにものすごく時間がかかってしまった。金融機関にはせめて英語対応をしてほしい。

インド出身/トリウェディ・シュバーン(29歳) 建築・構造設計 滞在歴4年

日本は非常に治安が良く、外国人でも安心して暮らせます。ただ、外国人という理由で家を借りられないことが多いのは残念。

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インドネシア出身/ダニアル・ウランサリ(29歳) 飲食マーケティング 滞在歴7年

日本語には同じ意味でも異なるニュアンスを持つ単語が多いので、気持ちを表現するのが難しい。宗教への理解も必要です。

韓国出身/ジャン・ヨンホ(30歳)技術職 滞在歴9年

地震などの災害時にどのように情報を得ればいいのか、どこに避難すればいいのかなど、外国人にも分かりやすい仕組みがほしい。

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アメリカ出身/ヘザー・ロッカ(28歳)研究員 滞在歴6年

多様な価値観や生き方を認めてほしい。ワンポイントタトゥーがあるだけで、多くの施設に入場拒否されることには驚きました。

香港出身/スキ・リョウ(31歳)広告代理店勤務 滞在歴6年

日本語の敬語の使い方や、ゴミ出しの複雑なルールは未だに難しい。香港には地震がないので、災害時の対応に不安があります。

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中国出身/キュウ・カナン(25歳) アニメ関連ビジネス 滞在歴3年

国や自治体が、花見やスポーツ大会など、外国人と地域住民が交流できるイベントをもっと企画してくれたらうれしい。

台湾出身/ヨウ・シンユ(25歳) デザイナー 滞在歴6年

日本は外国人お断りの物件が多いので、家探しに苦労しました。ベジタリアン向けのレストランが少ないのも難点です。

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