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楳図かずおの代表作『漂流教室』の世界に没入できるイベントが吉祥寺で開催中

生誕90周年を記念、傑作SFをモチーフとした没入体験と思考実験の融合

Rikimaru Yamatsuka
テキスト
Rikimaru Yamatsuka
作家
楳図ホラーハウス
Photo:Nakanishi Tsukio | 楳図ホラーハウス ©楳図かずお
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吉祥寺の「GALLERY ZENON」で2026年9月6日(日)まで開催中の、「UMEZZ HORROR HOUSE -漂流教室と思考実験展-」に行ってきた。

2024年に逝去した漫画家・楳図かずお先生の生誕90周年を記念したもので、代表作『漂流教室』と「思考実験」を結びつけた異色の没入体験型ホラーイベントなのだという。

楳図ホラーハウス
Photo:Nakanishi Tsukio楳図ホラーハウス ©楳図かずお

まず最初に申し上げておくが、ワタシは楳図先生の大ファンである。「漫画史」などというものをゆうに超えて芸術史にその名を刻む、偉大な芸術家だとおもっている。『イアラ』『闇のアルバム』『わたしは真悟』『神の左手悪魔の右手』『14歳』などなど、圧倒的なイマジネーションに満ちた画と物語は、天才などという言葉すら生やさしい。ワタシにとって神である。上京してきたとき吉祥寺近辺に住んでいたが、その理由のひとつは「楳図かずお先生が住んでいらっしゃるから」であった。

会場は、最後に楳図先生を見かけた場所のすぐそばで、そんなことも相まって胸をときめかせながら体感した。

楳図ホラーハウス
Photo:Nakanishi Tsukio楳図ホラーハウス ©楳図かずお

体験型エンターテインメントの系譜

まず、結論から述べてしまうが、これは本気でノらないとおもしろくないタイプのイベントである。小学校がまるごと荒廃した未来にブッ飛び、小学生たちが極限状況のサバイバルを繰り広げる傑作SF『漂流教室』を「思考実験」と絡めたホラーイベントというコンセプトを聞いたとき「何ソレ? すげえ面白そうじゃん」と思ったのだが、あらゆる意味において想像したものとは違っていた。

すげえざっくり言うと、近年ハヤリの「体験型エンターテインメント」の系譜に属するものである。 参加者は入場前に「思いやり」「正義」「絆」「命」「記憶」「理性」「信頼」「勇気」「希望」「尊厳」の中から、自分が最後まで守りたい大切なものをひとつ選ぶ。どんな極限状況であっても「正解のない選択を重ねる中で価値観が浮かび上がる」というのが大きなテーマだ。

楳図ホラーハウス
Photo:Nakanishi Tsukio楳図ホラーハウス

悩んだ末に「思いやり」をチョイスした。どれも大事なことだと思うが、「思いやり」があれば「勇気」とか「正義」とか「信頼」も担保できるんじゃねーの、最悪コレ一個守っとけば他ダメでも及第点はつくんじゃねーの、と考えてのことである。このとき選んだ信念が、極限状況の中でも最後まで変わらずにいられるのかというのが重要なテーマであるらしい。

とにかくツッコミは厳禁

ここからは慎重にネタバレを回避しながら書き進めていこうと思う。約60分という尺のなかで、参加者は作品の世界に投げこまれ、会場内を探検することになる。そして、キャストによって「究極の選択」を次々にせまられる。

楳図ホラーハウス
Photo:Nakanishi Tsukio登場したキャスト

参加者は元の世界に帰還するためにさまざまな決断をしていくのだけれども、前述した通りこれを存分に愉しむには「マジ」でなければならない。キャストの熱演にモジモジしたり、イイコちゃんぶって無難な選択をしたり、世界観のほころびを探そうとしたりしてはいけない。とにかく全力でノっかり、あらゆるツッコミを放棄しなければ、たんなる変わり種のオバケ屋敷でしかないだろう。共感性羞恥や思春期めいた冷笑を投げかけた瞬間、コンセプトはたちまち瓦解してしまう。とにかくツッコミは厳禁だ。

ほたえ騒いだ60分

この「ツッコミを放棄する」という部分は、楳図先生の作品にたいする鑑賞態度にも通じるところがあると思う。楳図先生の作品はけっこうツッコミどころ満載というか力技全開なところが多々あるのだが、そこでいちいち立ち止まっていては真の魅力は味わえない。驚異のイマジネーションから繰り出される圧倒的なドライブ感に乗っからなければ、深い理解や感動は得られない。

本イベントもそういうところがあって、ヘラヘラしたりモジモジしたりしていたら絶対楽しくないと思う。大切なのは、マジでなりきり、マジで考え、マジで入り込むことだ。なので、60分という長尺の中で「関谷!? アレ関谷だよね!? 関谷いる!」「試行錯誤だ! 試行錯誤するんだ!」「椅子になれーっ!!」などとほたえ騒ぎながら大いに堪能した。

楳図ホラーハウス
Photo:Nakanishi Tsukio楳図ホラーハウス ©楳図かずお

ちなみにいうと、原作の知識はべつに必要ではない。原作ファンに対するウィンクは随所にちりばめられているものの、所謂オリジナルストーリーが展開される。原作を読んでいようがいまいが難しさはまったく変わらないと思う。

もちろん窪塚洋介主演の『ロング・ラブレター ~漂流教室~(2002)』も未見で構わない。いや、全然関係なくアレはアレで観るべきだと思う。2002年の日本がどれだけ豊かで牧歌的であったか、あれほど痛感させられるドラマはそうはないから。

通信簿とうちわ

そんなこんなの盛り沢山な60分が終わると、体験中の選択をもとに、結果タイプと所見が記された『通信簿』が渡される。ワタシは「あきらめがちな聖人」であった。「優しさがあふれているが、ややあきらめがちな部分もある」とのことらしい。

楳図ホラーハウス
Photo:Nakanishi Tsukio配布される通信簿 ©楳図かずお
楳図ホラーハウス
Photo:Nakanishi Tsukio楳図ホラーハウス ©楳図かずお

あきらめがちな部分はややどころではなくかなりあるので、「当たってる」と思った。当たるとか当たんないとかそういうイベントではないと思うけれど。また通信簿のほか、この季節に大活躍間違いなしのグワシうちわももらえる。

最後のお楽しみ

お楽しみはこれで終わりではない、最後に辿り着くフォトスポット&フード&物販スペースは、原作ファン的にマジ最高である。関谷などの人気キャラクターをフィーチャーしたコラボレートメニューはどれも原作愛を感じるし、ステッカーから御朱印帳まであらゆるジャンルをマウントしたグッズは大変にカワイく、「やっぱ楳図かずお先生って物販向いてるよな~」と思うことしきりであった。

楳図ホラーハウス
Photo:Nakanishi Tsukio物販コーナー ©楳図かずお

もうなんならこのフロアに入る権利を得るというだけで参加する価値がめちゃくちゃあるとすら思う。

そんなワケで夏真っ盛り、楳図先生信者であるワタシは、楳図ワールドに文字通り没入し、大いに堪能した。気になる方はぜひ体験してみてほしい。マジのガチでノっかるマインドを忘れずに。

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