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舞台版がロンドンで大ヒット、劇作家が語る「トトロ」やジブリの魅力

トム・モートン=スミスにインタビュー

Andrzej Lukowski
テキスト:
Andrzej Lukowski
翻訳::
Time Out Tokyo Editors
My Neighbour Totoro, Barbican, RSC, 2022
Photo by Manuel Harlan
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2014年、劇作家のトム・モートン=スミスがロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)のために書いた、原爆の父であるロバート・オッペンハイマーをテーマにした3時間の大作「オッペンハイマー」は大ヒットを記録した。

その後、将来のプロジェクトについて話している中で、RSCがモートン=スミスに何か別の、今度は家族向けの舞台のアイデアはないかと尋ねたところ、彼は「となりのトトロ」をやりたいと、即答したという。彼はそのことを「それまではやろうと思ったことがなかったのに」と振り返っている。

My Neighbour Totoro, Barbican, RSC, 2022
Photo by Manuel Harlan

「となりのトトロ」は日本の伝説的なアニメーション会社、スタジオジブリ(以下、ジブリ)の作品で、1988年に公開された。1950年代の日本を舞台に、入院中の母のために父と田舎に引っ越してきたサツキとメイの物語を描く。

彼女たちは新しい環境を探索するうちに、自分たちの世界のすぐ下にある幻想的な世界に触れる。そこで彼女たちが出会ったのが、トトロという不思議な森の精だ。さらに奇妙なことに、雨の夜には普通の人には見えない、すばしっこい4本足の猫のバス(通称「ネコバス」)の存在を知る。

「トトロ」への想い

モートン=スミスは「となりのトトロ」について、「穏やかで、雰囲気のある美しさがありますね」と表現し、こう続けた。「私自身、田舎で育ったので、森の中を走り回るというアイデアはいつも私の心に響いていました。大爆発やスペクタクルが多いほかのアニメ映画とは一線を画しているでしょう。この作品は日常を描いているのですが、時々ファンタジックな要素が入ってきます。そうしたキャラクターが、人間と隣同士に並んでいるのが好きなんです」

近年まで映画作品の舞台化に慎重だったジブリとの調整は難しいという懸念もあったようだが、やがてRSCは、長年ジブリ作品の作曲を手がける久石譲と連絡を取り取り合うことになる。久石はRSCで上演されたのロアルド・ダール原作の「マチルダは小さな大天才」の舞台版を気に入っており、「となりのトトロ」の舞台版を作ってもらえないか、と考えていたという。 RSCにはモートン=スミスという優秀な作家がいたわけだから、話はまとまった。

スミスはこれほど不思議な物語を、どのように舞台作品に仕上げていったのだろうか。

「人間性をうまく表現すれば、ファンタジックな部分については観客の想像力をうまくかき立てる方法が見つかるだろうと思っていました。実際、舞台上でトトロやネコバスがどう表現されるかはそれからの話だったので、私はただ、『ネコバスが入る』『トトロがいる』と書いただけなのです。まぁ誰も私のところに来て、『もっとファンタジックにならないように書き直してくれないかな』なんて言ってこないんですよ」

異例の「大作」に

しかし、彼は当初、この作品がこれほど大きな舞台になるかを知らなかったようだ。「(RSCのメイン劇場である『ストラトフォード・アポン・エイボン劇場』で上演される)クリスマスショーだとばかり思っていました。それでもかなり大きなショーなんですけど。でも、それが雪だるま式に巨大化していったんです」

これは控えめな表現だろう。「となりのトトロ」はロンドン、アメリカ、そしておそらく地球上のどこにおいても、今年最大の演劇作品であることは間違いない。上演される「バービカンシアター」では、ベネディクト・カンバーバッチの大ヒット作「ハムレット」を抜いて、史上最速で売れた公演となっている。

演出は急進派舞台の雄、フェリム・マクダーモット。久石譲が全面的な協力し、映画で使われた曲と、同作のために書かれたが使われなかった曲の両方をフィーチャーしている(曲は俳優ではなく、舞台上のバンドが演奏)。また、東アジアの英国人俳優が多数出演していることでも、高い評価を得た。

こだわりの人形

さらに舞台に登場する人形は、偉大な人形劇作家であるバジル・ツイストがデザインし、「レジェンド」人形師であるジム・ヘンソンが創設したロサンゼルスのジム・ヘンソン・クリーチャー・ショップで作られたものだという。ちなみに、プレスリリース時においては、観客がかかる「魔法」を弱めないために、トトロやネコバスの画像は公開されなかった。

「人形を作る作業の中で、5日間続けて、1日1台ずつ違うネコバスを作ったこともありましたよ。人形を製作する人たちは、とても熱心に取り組んでくれたのです。そのおかげで、映画の本質を捉えたと思える瞬間も生まれました。バス停のシーンはとても満足のいくものですし、ネコバスの登場シーンも素晴らしいです。しかし、それは映画の模倣ではありません。観客は私たちがいかに想像力を働かせて、ファンタジーを物理的に存在し得るものに変換したかということに、同じように感動してくれると思います」

My Neighbour Totoro, Barbican, RSC, 2022
Photo by Manuel Harlan

モートン=スミス版の「となりのトトロ」は、映画よりも長く、せりふが多い。しかし、映画と同じ物語、登場人物、風変わりな異世界が存在している。違うものを目指していたら、きっと思い上がりだと批判を受けたことだろう。トトロが同じ空間にいるだけで十分に、マジカルなのだ。プレビュー公演でのソーシャルメディアの反応がどれも熱狂的だったことからも、見た人がこれらの人形にくぎ付けだったことが分かるだろう。

大人も子どもも楽しめる

興味深いことに、イギリスにおいてジブリ作品は、子どもの頃に楽しんだ定番アニメという存在ではない。広まったのは、2020年にNetflixでの配信が始まってから。それまでは、DVDをなんとか探し出した大人のヒップスターたちが楽しんでいたものだった。今回の「となりのトトロ」は、6歳以上を対象とした「ファミリー作品」だ。しかし、モートン=スミス自身は誰に向けて書いているのだろうか。20代でこの作品に夢中になったミレニアル世代の親たちなのか、それともその子どもたちなのか。

モートン=スミスはこう答えてくれた。「ピクサーや『ロード・オブ・ザ・リング』などの作品の一番いいところは、偉大な芸術作品であるということです。ジブリとはそういうもので、子ども向けに作られたからといって、易しくしているわけではないんです。ジブリ映画、特に『トトロ』について思うのは、私が子どもの頃にあったらよかったと思う映画だということです。今、私には2歳半の息子がいますが、彼はこの映画に夢中です。これはとても幸運なことで、トトロは彼の人生の大きな部分を占めることになると思います」

My Neighbor Totoro(となりのトトロ)」は、ロンドンの「バービカンシアター」で2023年1月21日まで上演している。

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