Untitled_Sexy Robot_Space traveler
Photo:Kisa Toyoshima「Untitled_Sexy Robot_Space traveler」2022

原宿の中心でかっけーと叫ぶ、空山基の新作個展「Space Traveler」

山塚りきまるの東京散歩#6:サイバーな世界観なのに生々しいストリート感がほとばしる絵画

Mari Hiratsuka
Rikimaru Yamatsuka
編集:
Mari Hiratsuka
テキスト:
Rikimaru Yamatsuka
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空山基の新作個展「Space Traveler」がスタートした。3会場同時開催の展覧会で、訪れたのはメーン会場の「ナンヅカ アンダーグラウンド(NANZUKA UNDERGROUND)」である。僕は空山基についてほとんど何も知らないに等しい。 エアロスミスのジャケをやったり、ディオールやステューシー、ディズニーといった名だたる企業とコラボレーションしている世界的なイラストレーター、というぐらいで、画集は見たことはあるけれども作品をナマで鑑賞したことは一度もなかった。

Space Traveler
Photo:Kisa Toyoshima2階 展示の様子

つーワケで、今回初めて空山基の作品にじかに触れたんだけども、率直にいってヒジョーによかった。マジでカッコよかった。いや、カッコいいっていうか『かっけー』だ。僕の中で「カッコいい」と「かっけー」は別で、『カッコいい』がため息をつきたくなるような美の発露のことだとすると、『かっけー』は、思わず笑っちゃうようなワクワクに満ちたクールネスのことである。空山は断然後者だった。

圧倒的なエンタメ性と、その背後にひそむもの  

本展は絵画のみならず、立体のロボット彫刻作品やCGアニメも展示されているのだが、どれもこれも強烈なインパクトがあった。御年75歳のクリエーターの作品とは思えないほどのギンギンぶりで、ひと目見ただけで持ってかれてしまう。空山は自身のことをアーティストではなく「エンターテイナー」と位置付けているそうだがナルホド納得、すさまじいポップさでもって本能に迫ってくる。考えさせるというより、感じさせる作品。明快かつキャッチーでありながら、じっと見ているといろんなものが滲んでくる。  

空山基
Photo:Kisa Toyoshima空山基

空山が近年精力的に取り組んでいるという大型のキャンバス絵画作品(3面で作り上げた横幅4.2メートルの作品)たるや圧巻で、とにかく超写実的なんだけども、目にくる独特のキラキラした質感がある。画集で見る限りではつるんとしたハイファイな印象があったんだけど、実際ナマで見ると画材が垂れていたりして手作業の痕跡がありありと残っており、それがまたカッコよかった。すげえサイバーな世界観なのに生々しいストリートの匂いがする。

Space Traveler
Photo:Kisa Toyoshima「Untitled」 2022
Space Traveler
Photo:Kisa Toyoshima「Untitled」2022

ストリートの匂いとはつまり茶目っ気と不良っぽさとラジカルな知性のことだが、超絶画力で描かれた美麗きわまる絵のなかにはそれらがナチュラルに息づいていた。首長竜の絵なんかモロに「FUCK YOU」って書いてあったし。FUCK YOUだよ。なっかなか言わないよ。マジでオラつきすぎ。

メタリックな曲線美がつむぐ背徳の快楽

ヒューマンスケールサイズのセクシーロボットも圧巻だった。曲線美に対するこだわりがマジでハンパない。二の腕とか腰から太ももにかけてのラインなど、まさにセクシーというほかない。メタリックな曲線美が紡ぎ出すソレは、五感の根っこにある本能を揺さぶるような、ゾクゾクする背徳の快楽がある。こんだけ精緻にデザインされたロボットが壁面に6体バーっと並んでる光景はもうハッキリと異空間だった。陳腐な言い方で恐縮だが、SF映画の中に迷い込んだような感覚にさせられる。

Space Traveler
Photo:Kisa Toyoshima「Untitled」 2022

むき出しの表現意欲 

あとヒザを抱えたセクシーロボットが宇宙空間をさまよっているCGアニメ。火の玉直球ストレート。ひょっとしたらコアなネタとか深淵な思想がちりばめられてるのかもしんないけど、僕はまったく汲み取れなかった。これは誓ってディスとかではないが、「セクシーなロボットが悩ましげなポオズで宇宙空間漂ってたらカッコよくね?」っていう、それだけで作ったんじゃないかとすら思った。

『かっけー』を追求するナマの表現意欲が、むき出しのまま開示されている。かえすがえす言うが、御年75歳の、世界的レジェンドの作品とは思えないギンギンぶりだ。リヴィドーほとばしりまくり。

オープニングの様子
Photo:Kisa Toyoshimaオープニングの様子

削ぎ落とされた見せ方

本展は見せ方もこれまたクールで、作品を囲うロープだとかキャプションもない、削ぎ落とされたRAWな空間に仕上げられているのだけど、これがまた作品にバッチリはまっている。しかも撮影可な上、入場無料。こらぁもう行くしかないだろう。ひたすらにかっけー空山ワールドに、ぜひ当てられまくってほしい。カッコよさに打ちのめされて傷つくものはいない。

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