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1970年代ニューヨークのアート・カルチャーシーンを代表する伝説的なアーティストで、世界的な文化アイコンであるパティ・スミス(Patti Smith)。詩人・画家・パフォーマーとして、50年以上にわたり革新的な制作活動を続けている。
今回、ニューヨークとベルリンを拠点にする現代音響芸術集団の「サウンドウォーク・コレクティヴ」と協働した最新プロジェクト「MOT Plus サウンドウォーク・コレクティヴ & パティ・スミス|コレスポンデンス」が、「東京都現代美術館」で2025年6月29日(日)まで 開催中だ。世界各国を巡回する本展は、待望の日本初上陸となる。
東日本大震災や広島で被ばくした樹木からインスピレーションを受けた新作
会場では、原発事故や気候変動、動物の大量絶滅といった人類と自然の関係、そして、人間の本質に迫るオーディオビジュアルによる映像インスタレーションや、スミスによるドローイングと詩が登場。開催地ごとにサイトスペシフィックな展示を行っており、彼らが日本で滞在制作をした新作も発表されている。


『被曝樹木』は、広島での原爆を生き延びた、被ばくしたイチョウの木にインスピレーションを受けたもの。傷を負いながらも生き続けるイチョウは、人類史の痕跡であり、地球そのものの身体を想起させる。
そのほか、18世紀の浮世絵のファウンドイメージを用いた、福島原子力発電所の事故に伴う汚染水に触れる平面作品も並ぶ。
沈黙するサヌカイトの石庭
薄暗い展示室の中央に配されているのは、香川県産の火山岩・サヌカイトだ。2万年以上の石器時代から、西日本で石器の材料として広く使われ、木づちでたたくと美しい金属音が鳴ることから、楽器としても用いられていた。


「音を失った石」として集まられたサヌカイトの石庭には、沈黙だけがとどまり、何かを語りかけているのような存在感を持つ。
スミスの詩と声が空間全体を包み込む
人間中心的ではない視点を追求する作品群は、森林火災や環境破壊、大量絶滅などへの意識を誘発する。

それぞれに異なるテーマを持つ映像インスタレーションでは、『パゾリーニ』『メディア』『チェルノブイリの子どもたち』『大絶滅 1946-2024』『燃えさかる 1946-2024』といった題の映像が、展示室を囲むように設置されたスクリーンに映し出される。
サウンドウォーク・コレクティヴが詩的な霊感や歴史的に重要性を持つ土地を訪れ、フィールドレコーディングによって「音の記憶」を採集。スミスはその録音との親密な対話を重ね、詩を書き下ろす。

1946年から2024年までに起きた山火事や動物

注目を集めているスミスの来日は、9年ぶりとなるもの。彼女のInstagramでは、広島での被爆者との対談や、太宰治や小津安二郎の墓に立ち寄ったことが投稿されている。
なお同館では、日本を代表する造形作家・岡﨑乾二郎の集大成となる展覧会「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」も同時開催中だ。併せて、ぜひ足を運んでほしい。
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『MOT Plus サウンドウォーク・コレクティヴ & パティ・スミス|コレスポンデンス』
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