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Perfumeの衣装の軌跡をたどる展覧会が横浜「そごう美術館」で開催

2026年1月12日まで、休眠前のラストシーンに立ち会う

Karin Minamishima
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Karin Minamishima
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Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima | 展覧会場
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平成から令和にかけて、日本の音楽シーン、そしてクリエーティブ全体を牽引(けんいん)してきたアーティスト・Perfume。圧倒的なパフォーマンスはもちろん、最先端のアートやテクノロジーとのコラボレーションで世界を驚かせてきた。2025年9月に宣言された「コールドスリープ(活動休止)」のニュースも、まだ記憶に新しい。

そんな彼女たちに長年寄り添い、数々のステージをともにしてきたのが、美しく独創的な衣装たち。3人の進化や世界観を可視化し、パフォーマンスとともにPerfumeの物語を紡いできた。

その衣装の歩みを一望できる展覧会「Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION」が、横浜の「そごう美術館」で開催中だ。衣装から見えてくる彼女たちの軌跡、そしてクリエーションの核心に迫る同展をレポートする。

最終地・横浜会場の見どころ

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima多彩な展覧会グッズも見逃せない

同展では、2020年刊行の『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』(文化出版局)を礎に、2005年のメジャーデビューから今日までに制作された衣装160着以上を紹介する。2023年の「兵庫県立美術館」から始まり、日本全国を巡回してきた展覧会の最終地が、今回の横浜会場となる。

新たに36着を追加し、全54セット162着を展示。さらに「FINAL EDITION」の名の通り、2025年9月の東京ドーム公演で披露された最新衣装も含む新章「巡りのときーそれぞれの時代へ」が加わった。コンパクトな空間だからこそ、全ての衣装をほぼ手の届く距離で見られるのも魅力だ。

日本に突如鳴り響いた『ポリリズム』

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima「コールドスリープ」前最後の東京ドーム公演

展覧会に触れる前に、彼女たちのストーリーを簡単におさらいしたい。2005年にメジャーデビューした後、2007年にタレントの木村カエラがラジオで「どうしてもかけたい曲がある」と彼女たちの楽曲『チョコレイト・ディスコ』を紹介。その放送をたまたま聴いていたCMディレクターの目に留まり、キャンペーン出演、そして代表曲『ポリリズム』制作へつながった。

翌2008年にはブレイクを果たし、「NHK紅白歌合戦」でも『ポリリズム』を披露。Perfumeはこの曲をきっかけに、日本の音楽シーンを一気に駆け上がっていく。

衣装が表す近未来

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin MinamishimaPerfumeを象徴するアイテム、ヒールの靴。彼女たちが監修した商品で、実際に購入できる

展覧会は、時系列に沿って4つの章で構成される。第1章「近未来からの挑戦者」では、メジャーデビューから2011年までの衣装を展示。当時高校生だった3人のアーティスト写真と並ぶ『リニアモーターガール』の衣装は、展覧会の序章にふさわしい存在感だ。

インディーズ時代はかわいらしいワンピースが多かったため、3人はダークでシックなこの衣装を見た時、「メジャーデビューとはこういうことなのか」と戸惑ったと語る。

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』より「Dream Fighter」2008年 © 文化出版局2008年『Dream Fighter』の衣装。当時流行していたマスタードカラーが採用された

また、この時期の衣装の多くは、百貨店や衣料品店で手に入る既製服をベースに作られていた。流行していたカラーやシルエットを引用していたこともあり、ファンが同じ服を購入して身にまとうことができたのも特徴。衣装は、ファンとPerfumeがつながる架け橋だった。

この時期に衣装を担当していたのは、スタイリストの内澤研。3人の魅力を引き出すために、あ〜ちゃんに膝丈、かしゆかにミニ丈、のっちにパンツスタイルを提案し、衣装の基本型を作り上げた。

2009年のシングル『ねぇ』では「マリメッコ」のテキスタイルを使用し、初のオリジナル衣装を制作。以降、既製服からオリジナル衣装へとかじを切り、Toshio Takedaや三田真一がデザインを手がけるようになる。

 日本の技術とともに世界に踏み出す 

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima『Spring of Life』のミュージックビデオでは、アンドロイドにふんした3人が登場。LEDライトの上にシリコンカバーとオーガンジーを被せ、体を熱から守りながら乳白色の光を表現した。コードがいびつに巻きついており、エッジだけでなく不器用なキュートさも感じられる

第2章の「止まらない進化」で取り上げるのは、2012〜2015年。その頃、世界最大の音楽レーベル「ユニバーサルミュージック」へ移籍し、世界を舞台に活動するようになった。2013年には初めて、クリエーティブテクノロジー集団のRhizomatiksとのコラボレーションを実現。『Spring of Llife』ではキプロスのファッションにインスピレーションを得て、振り付けや音楽と連動して光る衣装が開発された。

また、通常は道路などに用いられる「再帰性反射素材」という素材を使った衣装も展示。生地の反射率の違いを赤外線カメラでリアルタイムに読み込み、衣装の部分ごとに異なる映像をプロジェクションマッピングで映し出せる。これを2014年に実現していた、Perfumeの先進性に驚くばかりだ。

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima2013年『Magic of Love』の衣装。中央ののっちの衣装は、肩と肘の部分で三角形の頂点の裁縫方法を変えることでダンスに対応する。こういったアーティストの衣装ならではの工夫にも注目

彼女たちのビジュアルといえば、シャープな幾何学模様を思い浮かべる人も多いだろう。そのスタイルが確立したのも、ちょうどこの時期である。

幾何学模様の衣装作りは、一度修正が入れば全てのパーツを縫い直さなくてはならないため、非常に高度な裁縫技術を要する。図形の頂点同士がピタリと揃った仕上がりに、思わず息をのむだろう。

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima平面的なパターンを立体的に組み立てることに注力した衣装。宇宙服に着想を得て、3色で構成されたドレスの上に、濃いピンクのオーバードレスを着用する。フォルムの異なる2枚のドレスを重ねる手法は、その後も継承されていく

変貌する身体

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima

第3章の「『未来』を超えて」では、2015年以降の衣装を映像とともに紹介。この時期は幾何学図形模様から、3人揃ったシックで丈の長いデザインが定番になっていく。

2016年に公開された『FLASH』のミュージックビデオでは、ホワイトキューブの中でカンフーダンスを繰り広げ、3人いわく「超ストイック」な世界観が展開される。キックの振り付けの際に、衣装の裾がゆっくり落ちるように、裾に空気を含むような袋状の仕掛けが作られていた。

また、一つのライブの中でいくつもの衣装へ早着替えをして変貌していくPerfumeは、早着替えを前提とした重ね着をして舞台に立つことも多い。同展では、その重ね着の全貌についても鑑賞できる。

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima3人が「大好き」と語る『ポリゴンウェイブ』の衣装。テープだけでシャープな造形を組み上げながら、踊っても形が崩れない。軽さと強度を両立させた緻密な設計だ

宇宙船の門出を見送る

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」の「NTTパビリオン」で披露された衣装

最終章の「巡りのとき──それぞれの時代へ」では、2024年と2025年の最新衣装を展示する。目に入ってくるのは、彼女たちにとって初のコンセプトアルバム『ネビュラロマンス』に寄せられた衣装。宇宙の軍服のような衣装が展開される。

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima2025年『ネビュラロマンス 後篇』の衣装。同展のキュレーター・久慈達也が「前篇より少し昇格したっぽい」と語る

必見なのが、先日の「コールドスリープ」宣言後すぐの、東京ドーム公演の最後に着用した衣装。立体的なフォルムの白い衣装は、第1章の会場で展示されていた2011年の初の東京ドームライブ「GISHIKI」の衣装を引用したものだ。

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima3人を崇高な存在へと連れていくような、異彩を放つ衣装

活動休止を前に、これまでの歩みを衣装からたどる本展は、彼女たちが積み重ねてきたクリエーションの強度と、変わらない探求心を実感させてくれる。そして、静かな休眠の先にはきっと、また新たな物語が待っているだろう。

私たちは3人が乗った宇宙船に手を振り、パワーアップした「近未来からの挑戦者」を待つとしよう。

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
Photo: Karin Minamishima3人からの直筆メッセージボード

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