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「花泥棒第二代目ゲリラ屋台襲名興行」に行ってきた

謎のフラワースタイリスト集団が魅せる、今までとこれから

Rikimaru Yamatsuka
テキスト
Rikimaru Yamatsuka
作家
花泥棒
Photo:morookamanabu | 花泥棒
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2026年2月1日、原宿の「SPACE BANKSIA(スペース バンクシア)」で2日間開催された「花泥棒第二代目ゲリラ屋台襲名興行」に行ってきた。謎のフラワースタイリスト集団の、その活動内容を網羅したイベントである。

花泥棒については昨年夏、筆者が取材に訪れた時の記事があるので、何が何やらサッパリという読者はまずはこちらを参照してくれ。

簡単に言うと、「花」をテーマとする面白カッコいいクルーだ。花泥棒の活動は実に多岐にわたる。各種撮影や広告のクライアントワークから、空間装花に楽屋花、グラフィティよろしくストリートを花で飾る「フラワーボム」運動や、無許可のゲリラ屋台での花屋営業などなど、本当にいろいろなことをやっている人たちである。

花泥棒
Photo:morookamanabu会場の様子

買い付けから販売まで手がける一方で、花を包む新聞紙さえも自分たちでデザイン・ライティングを行い、「花」をカルチャーの一要素として捉え、それを音楽やスケーター文化などに接続し、ユーモアたっぷりに軽やかに提示する。その様はまさにDIYだしストリート、正しい意味でのパンクスピリットに満ちている。

いい人っていうかいいやつ

で、今回、長らくゲリラ出店の際に使っていた屋台がいよいよボロボロになってきたので、その初代屋台を焼き払って決別するとともに、二代目に就任したニュー屋台を披露し、ついでに活動内容をご紹介しちゃおうという算段の下、開催されたイベントのようだ。すでにすてきじゃないか、そんなものは。

オープン前に取材班が訪れると、花泥棒クルーの窓口兼ゲリラ屋台販売担当のメンバーこと通称・花ちゃんは、快く迎えてくれた。正確にいうと、快く我々を迎えつつも、めっちゃ設営作業に追われていた。

花泥棒
Photo:morookamanabu二代目

めっちゃ忙しそうだった。花ちゃんは多分、やりたいことがあり過ぎていつもテンパってる人なんだと思う。でもテンパりつつも周りをちゃんと見るという、器用なマルチタスク力が備わっている。

花ちゃんはスケーターだそうだが、スケーターはそういう人が多い気がする。地頭が優れているというか。立て板に水といった調子でよどみなくスラスラ早口でしゃべるし、言葉の端々に確かなセンスやひらめきを感じる。何よりすげえいい人。いい人っていうかいいやつ。「グッド・ハート」の持ち主としかいいようがない。

「二代目ゲリラくん」襲名

いかん、花ちゃんがいかにすてきな人物かを熱弁するだけで終わってしまいそうだから、イベントについて早速書いていこう。

まず今回のイベント開催のきっかけを尋ねたところ、「ずっと使ってた初代の屋台を『ゲリラくん』って呼んでるんですけど、初代を5年半使ってそろそろボロくなってきたんで、新しい屋台を作ろうってなったんです。『indust』ってお店をやってるインテリアデザイナーの塚本さんに作ってもらったら、想像以上にカッコよかったので、しれっと投入するつもりだったけど、せっかくだから、じゃ興業にしちゃおうかって」とのこと。

本イベント開催のきっかけとなった「二代目ゲリラ」くんは、やはり主役よろしく会場のど真ん中に展示されていたが、なるほど確かにめっちゃすごい。江戸時代の監獄をイメージして制作されたという二代目は、ネジ・クギを使わず組み木細工で作られており、ゆえに大まかにパーツ分解できてしまうというスグレモノ。

それでいて屋根にスケーターデッキを使っているという花泥棒らしい遊び心もあるし、車輪が付いていて機動性も抜群という至れり尽くせり具合だ。

花泥棒
Photo:morookamanabu屋根にはスケートデッキが使われている

これについて花ちゃんは「法律に詳しい人にいろいろ聞いたんですけど、車輪付けとけば『移動の途中』って言い張れるらしいんですよ。帰る途中で、たまたま人に声かけられて立ち話して、その流れでお花も買ってくれたみたいな」と語る。

無邪気なパッションとユーモア

そして、このたび「お役御免」となった初代は相模の山中で火葬されたそうで、その映像が会場の片隅でエンドレスに上映されていた。

それはなんともシュールな哀愁が漂っていて異様な感じだったが、花ちゃんは「これ燃えて崩れ落ちるとき結構すごかったんですけど、そのとき皆が『おおー』とか言っちゃったからNGにしたんですよ。そこ見せたかったな」などと首をかしげながらスマートフォンを取り出し「うーん、インスタに上げてる動画の方が全然迫力あるっすね、やっぱ。こっちを上映すればよかった」などとこぼしている始末。

花泥棒
Photo:morookamanabu燃える映像

花泥棒は、こういうあたりが本当に素晴らしいし、信頼できると思う。 ただセンスが良くて面白いだけじゃなくて、無邪気なパッションとユーモアを兼ね備えている。ストリートカルチャーの一部が時として漂わせる嫌な計算高さというか、資本主義的戦略感を感じない。

路上で無許可のゲリラ花屋をやることを「メイクする」といい、警察が来て退去させられることを「キックアウト」と呼ぶ花ちゃんに、オレはとても好感を持つ。花泥棒は、自分たちが本当に好きなものと、花をくっ付けて、新たなる面白カッコよさを生み出すことに余念がない。

日清「カップヌードル」のロゴをパロディーしたアパレルを出し、「王将の餃子」の定食にアレンジメントを施して作品化し、「ナイキ」の名作スニーカーをオマージュしたTシャツを作る。リスペクトと「やっちゃえ精神」が同居するその姿勢は、ストリートカルチャーとしてとても正しいし、美しいと思う。

花泥棒
Photo:morookamanabu餃子の王将をパロディーしたオリジナルアイテム

そのストリート的なマッシュアップ精神が最も如実に現れているのが、立体作品の「Winterカモフラージュ(2026)」。白とグレーとベージュの塗料を垂らし、その軌跡を葉脈に見立ててフラワーアレンジメントを施したものである。

「Winterカモフラージュ(2026)」
Photo:morookamanabu「Winterカモフラージュ(2026)」

花ちゃんが影響を受けたカルチャーをちりばめつつ、そこには確かな社会批評性があり、祈りがある。ただ好き勝手にはしゃいでいるワケじゃなく、ちゃんと明確に問題意識を持っていて、すげえリアルだ。

こういった切実さもありつつ、その近くにはワルシャワで撮ったという、路上に放置されてて通行人が普通にそこでうんこしてる謎のストリート便器にフラワーアレンジメントを施した写真作品が展示されていたりして、ちゃめっ気満載なのがマジで良いなと思う。

36名+1匹

会場には、花泥棒のメンバー名簿も掲示されていた。それによれば、メンバーは現在総勢36人+1匹いるそうだ。名簿にはそれぞれの役職も書いてあり、「経理・庶務」「グラフィックデザイナー」「写真家」「アパレル」などはまぁ分かるとして、「酒担当」「壁担当」「宴会幹事長」などもいるあたりが、このクルーの「なんでもあり」具合を示している。

花泥棒
Photo:morookamanabu会場の様子

DJ担当が10人以上いるし。プラス1匹に至っては犬らしいし。ハムサラダさんという犬らしい。花ちゃんいわく「大体は友達なんですけど、友達の友達とか僕も1、2回しか会ってない人もいますね。正直、花とか全然知らない人も普通に」とのこと。

マジでヤバい。前述した花泥棒新聞にも触れておこう。購入した花を包むためのオリジナル新聞紙だが、スポーツ新聞をパロディーしたフリーペーパー的なもので、このたび新作制作を計画しているそうだ。

広告スポンサーを募集中とのことで、スポンサーが集まれば競馬新聞や区役所だより系など3、4バージョンを制作しようともくろんでいる。このあたりについて詳しくは、花泥棒のInstagramを参照してほしい。ていうか、オレは普通に申し込む予定だ。

花泥棒
Photo:morookamanabu花泥棒による新聞

indust・塚本のすごさ

で、今回の展示では、前述した二代目ゲリラくんを制作したindustの塚本とのコラボレーションコーナーもあったのだが、これも非常に見応えがあった。

南米やメキシコや「有田焼」など、世界各地のヴィンテージ花瓶を買い付け、それをインテリアスタンドとしてリメイクして販売しており、この塚本の話がまた強烈に面白かった。

制作品は、一目見るだけで、超「テクい人」が超こだわって作った超センスいいものというのが分かる。電気をつけていなくても周囲がぱあっと輝いているようだ。モノ自体から発せられるオーラが明らかに違う。「実物見たとき、写真よりいいって思ってもらいたいんですよ」と語るものづくりへの姿勢は、ひとことでいってマジで半端ない。

花泥棒
Photo:morookamanabuindust 塚本の作品

まず、どういう背景があるか自分で分からないものは売らないのだそう。全ての制作品にはいつ頃の年代の、どの国のどの地域で使われていたものなのかが書かれたキャプションが添えられている。その文化的背景を想像する楽しさを味わい、長く使ってほしいという思いからそうしているという。

金属パーツにメッキは使わず全て真鍮(しんちゅう)を使用するだとか、スタンドの裏側もきちんとデザインするだとか、修理しやすい構造にするだとか、シェードも全て自作しているだとか、支柱が上から下まで一本の支柱でつながっているように制作するだとか、到底ここには書ききれないほどいろいろなことにめちゃくちゃこだわっている。

花泥棒
Photo:morookamanabu会場の様子

しかもそのこだわりは、全てちゃんと理路整然とした非常にロジカルなものだ。プロダクトの中に、理由のないこだわりが一つもないのである。シェードもスイッチも電球も角度も色彩も光度も、とにかく全てのセクションに合理的理由と美的理由が存在しており、何を聞いても「これは、これこれこういう意図で」と塚本は即答する。プロフェッショナルというか、もはやマッドサイエンティストの領域だと思う。

すっかり魅入られてしまった我々取材班が「本店に行ったらもっといっぱい作品があるワケっすよねえ」なんていうと「作りだめはしないんですよ」と塚本は首を振る。「自分の作り方もどんどんアップデートされていくし、そのとき作りたいものも変わってくるので」とのことで、職人にとどまらない作家的なスタンスも見せる。

花泥棒
Photo:morookamanabu会場の様子

実際、全国の陶器作家とのコラボレート作品も多く手がけているそうだ。塚本氏は普通にめっちゃ天才だと思う。何よりそのストイックかつロジカルな姿勢には思わず背筋が伸びる。強烈に面白いことをやっている人の周りには、やはり天才が集まってくるものなのだな。

あんた最高だよ(としか言えない)

そんなわけで、いっぱいいろんな話を聞いて、いろんなものを見た一日だった。最後は二代目ゲリラくんの前で「花泥棒クルーの花ちゃん&BANKSIAチエコ」と塚本の3ショットをパシャリだ。

これでも全然、あの日感じた楽しさや面白さの半分もドキュメントできていない。し、花泥棒の広大過ぎる活動内容も到底網羅できていない。気になる読者諸君は、花泥棒がやっている何かしらの何かにぜひ一度触れてほしい。

花泥棒
Photo:morookamanabu会場の様子

きっと「あんた最高だよ」としか言えない魅力にやられちまうはずさ。あふれんばかりのユーモアとリスペクトとポジティブバイブスを持ち、ストリートカルチャーとしての「花」を模索追求するクルー、今後の動きから目が離せない。

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