ニュース

永遠のファッションアイコン、マリー・アントワネットを見つめ直す展覧会が横浜で開幕

11月23日まで、「Christian Dior」や「Moschino」をはじめとする豪華なドレスも一堂に

Kaoru Hoshino
テキスト
Kaoru Hoshino
Editor
マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino | 展示風景
広告

歴史上最もファッショナブルな王妃として、映画やアニメなど数々の作品の題材となり、今なお世界中で影響を与え続けるマリー・アントワネット(Marie Antoinette)。そんな彼女を「ファッションとスタイルのアイコン」として捉え直す展覧会「マリー・アントワネット・スタイル」が「横浜美術館」で、2026年11月23日(月・祝)まで開催されている。

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshinoフランソワ=ユベール・ドルーエ『コートドレスのマリー・アントワネット』(1773年)

同展は、ロンドンの「ヴィクトリア&アルバート博物館」が企画した展覧会の日本巡回展であり、日本では横浜美術館のみで開催。ドレスやジュエリー、家具、工芸品など約200点を通して、250年以上にわたりファッションやデザインに受け継がれてきた彼女のスタイルの系譜をたどる。

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino展示風景
マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino『ヘアスタイル「独立」あるいは「自由の勝利」』(1778年刊行)
マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino『エクストラヴァガンザ(豪壮な催し)』(1776年)

なぜ今、マリー・アントワネットなのか?

同展は同時に「浪費家の王妃」という固定化されたイメージを見直す試みでもある。14歳でオーストリアから見知らぬフランスへ嫁ぎ、王妃、妻、母として生き、革命の時代を駆け抜けた一人の女性としての姿を描き出す。

そもそも、なぜ今マリー・アントワネットに焦点を当てるのか。その理由は、展覧会の冒頭に掲げられたメッセージに表れている。

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino『マリー・アントワネットの肘かけ椅子』(1788年)

18世紀後半の芸術は彼女の夫の名をとって「ルイ16世様式」と呼ばれているが、それを「マリー・アントワネット様式」、すなわち「マリー・アントワネット・スタイル」として見直したらどのような発見があるのか。この問いが、同展を貫くテーマだ。

横浜美術館館長の蔵屋美香は、次のように語る。「直線的で左右対称なデザインを特徴とする『ルイ16世様式』を『マリー・アントワネット・スタイル』と読み替えた瞬間、それまで視野に入ってこなかったファッションや宝飾品、食器など、身の回りを彩るものに起きた新しい変化が見えてきました」

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino『皇后ウジェニーの昼用ボディス』(左、1855年ごろ)、『皇后ウジェニーの昼用ボディス』(1857〜1860年)

新たな王妃像

実際、マリー・アントワネットは宮廷の慣習にとらわれなかった。コルセットで体を締め付ける宮廷服に代わり、より自然なシルエットのドレスを流行させたほか、王室としては初めて自ら母乳で子どもを育てるなど、新しい価値観を積極的に取り入れた。展示されている「乳房ボウル」は、そうした逸話を象徴する作品の一つだ。

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino『乳房ボウル』(1787年)

彼女は与えられた環境の中で、自分が美しいと思うものを大切にし、新しいライフスタイルを築こうとした改革精神と情熱を持った人物であった。その洗練された美意識は、衣装や宝飾品だけでなく、フランスの職人文化やラグジュアリー産業の発展にも大きな影響を与えたのだ。

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino日本初公開の『マリー・アントワネット旧蔵の天然真珠とダイヤモンドの3連ネックレス』(18世紀後半)
マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino通称「サザーランド・ダイヤモンド」(1780年に加工)

現代のメゾンへ受け継がれる美意識

展覧会の終盤では、「CHANEL」や「Christian Dior」をはじめとする現代のメゾンによる作品が展示されている。彼らが受け継いでいるのは、華やかなマリー・アントワネットの装いだけではない。彼女が持っていた改革精神こそが、現代のデザイナーたちを引きつけ続けているのだ。

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino展示風景
マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshino映画『マリー・アントワネット』(2006年)のための靴

展示を見終える頃には、マリー・アントワネットという人物を「浪費家の王妃」という一面的なステレオタイプではなく、一人の強い意思を持った女性として捉え直すことができるはずだ。

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshinoジェレミー・スコット『ケーキドレス』(2020年、「Moschino」2020〜2021年秋冬コレクション)
マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kisa Toyoshimaジェレミー・スコット『アニメ柄トワル・ド・ジュイのミニ・パニエドレスと共布のブーツ』(2020年、「Moschino」2020〜2021年秋冬コレクション)

時代を超えて響くメッセージ

2006年公開の映画『マリー・アントワネット』の監督、ソフィア・コッポラ(Sophia Coppola)は、次のような言葉を残している。

I'm lifting a glass to the misunderstood bad girls of history, the queen of all queens, and to the importance of surrounding yourself with what you find beautiful.

歴史のなかで誤解されてきた悪女たちに、王妃のなかの王妃に、そしてあなた自身が美しいと感じるものに囲まれている、そのかけがえのなさに、乾杯(原文ママ)

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshinoアンドレア・クロッシ『トワル・ド・ジュイのアンサンブル』(2019年、「Andrea Grossi」2021年コレクション)
マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshinoジョン・ガリアーノ『V&A所蔵のマリー・アントワネットの肖像のあるイブニングコート』(2006年、「Christian Dior」2006年春夏オートクチュールコレクション)

この言葉は、本展が描こうとするマリー・アントワネット像を端的に表している。彼女は単なる「浪費家の王妃」ではない。自分が美しいと感じるものに囲まれ、自らの美意識を貫きながら生きた一人の女性であり、そのスタイルと精神は、時代を超えて今なお人々を魅了し続けている。

マリー・アントワネット・スタイル
Photo: Kaoru Hoshinoティム・ウォーカー『ケイト・モス、リッツ・パリにて』(2012年「ヴォーグ」アメリカ版2012年4月号掲載)

開催直後の現在は多くの来場者で混雑しているので、展覧会をじっくりと堪能したければ、少し時期をずらして落ち着いた頃に訪れるのがおすすめだ。横浜で、時代に翻弄(ほんろう)されながらも自分らしさを貫こうとした新たなマリー・アントワネット像に出合ってほしい。

関連記事

マリー・アントワネット・スタイル

LAの老舗「ピンクスホットドッグス」が日本初上陸、2026年内に1号店オープンへ

CHANELの体験型ビンテージショップ 「NUIR ART」が渋谷にオープン

横浜の文化財建築に「スターバックス コーヒー 横浜海の公園店」がオープン

アジア初上陸、ティム・バートンの没入型展覧会が豊洲で開催

東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

最新ニュース
    広告