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世界的コーヒーツーリストの目的地、「KURO MAME TOKYO」が神谷町に誕生

メニューはおまかせのみ、コーヒーに完全集中するためのテイスティングルーム

Genya Aoki
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Genya Aoki
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KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawa | 共同オーナーの深堀絵美
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世界一のバリスタである深堀絵美マシュー・タイズ(Mathieu Theis)が「世界大会で飲まれるようなコーヒーを誰もが楽しめる場所」をコンセプトに、2015年にスイスで創業したコーヒーショップ「マメ(MAME)」。現在同国に5店舗のカフェと1つのロースタリーがあり、地域の人から、コーヒーで世界を巡るようなコーヒーラバーのディスティネーションとしてまで、幅広く愛されている。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawa店舗デザインはMHAA建築設計事務所の干田正浩。淡黄色の左官仕上げの空間は温かみのある洞窟のような雰囲気で、心地よく集中を促す

そんなコーヒー好きの聖地ともいえる店が、2025年6月、スイス外初の店舗である「クロマメトーキョー(KURO MAME TOKYO)」を東京・神谷町にオープンさせた。アジア拠点として東京を選んだ理由は、世界に誇るおいしいものが揃う街であり、その一部になれたらという思いからだという。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawa椅子席ではゆったり静かにコーヒーと向き合える

カフェではなく「テイスティングルーム」という業態を取り、イートインは原則1時間ごとの予約制。メニュー表はなく、バリスタとの会話の中でおすすめの一杯を提案してもらうという「おまかせ」スタイルで提供する。まさに、コーヒーを味わうためだけに存在する先鋭的な店舗だ。

価格は1杯4,000円(以下全て税込み)から。コーヒーではめったに目にしない値付けだ。どんな体験ができるのだろうか。早速行ってきた。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawa

「5時ぴったりから始めますね」。入り口から案内を受けて、店内の椅子に腰かけているとバリスタに声をかけられた。この時、筆者は「ただコーヒーを飲む」のではなく、コーヒーが持つ奥深い世界を「味わい」に来たのだと感じた。

まずはパリスタと会話していく中で、その日の「おまかせ」を決定する。ナビゲートしてもらい、より自分が気に入りそうな豆と飲み方を提案してもらう。好みに自覚的ではない場合は、それほど考えず直感的に任せてみるといいだろう。「あなたが今一番おいしいと思う一杯を提供する」というモットーを掲げており、ベストな一杯への探究を、世間話をしながらカジュアルに先導してくれる。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawa共同オーナーの深堀絵美

常時15種程度の豆があるが、いずれもクロマメトーキョーの限定品。農園とダイレクトトレードしたものをスイスのロースタリーで自社焙煎(ばいせん)したものを空輸している。マイクロロットの豆がほとんどで、「今ここ」でしか飲めないプレミアムなものばかりだ。フレーバーを大別するとフローラル、フルーティー、発酵という3種の方向性があり、その中からさらにユニークなものや、飲みやすいものなどが揃っている。豆によってハンドドリップ、エスプレッソ、ラテなど抽出方法も選択できる。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawa

筆者は、コロンビア・El Placer(エルプラセール)農園のゲイシャ種をハンドドリップで出してもらった。香りは紅茶のようにフローラルだが、全体的には酸味とメロンのようなジューシーな果実味がうまく調和しており、バランスが良い。興味深いのは、淹れたてとぬるくなった頃合いで味わいに変化があったこと。後者では、爽やかな後味が印象に残る。時間経過を含めて楽しむのが贅沢な体験だった。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawa器は深堀の出身地でもある佐賀県の有田焼き

それぞれの「おいしいコーヒー」に寄り添う

「おいしいコーヒーとはどんなものなのか?」という赤裸々な疑問を深堀にぶつけてみたら、「本当に人それぞれ」と、謎は謎のままで返ってきてしまった。

「人種や好み、そしてその時の気分によっても変わります。ですからお客さま自身が今、何が飲みたいか、を表現していただけると一番ありがたいですね。そもそも自分がどんなコーヒーが好きなのかを知らない人の方が多いでしょう。なので、それを一緒に探していく、というイメージです。会話の中からお客さまの好みを少しずつ探り、好きだろうと思われるものを提供しています」

これは無難な回答のようだが、普遍的な答えが存在しないからこそ、同店の「おまかせ」にはより高度な技量が必要であり、驚きと進化があるということでもある。「イチゴの味がしますよ」と渡されたコーヒーを一口飲んだ時に「え、何で?」とポジティブな疑問を持つ。「そういう夢のような感覚、ワクワク感も大切にしたい」と深堀は続ける。そうした「Wow!」は体験の醍醐味(だいごみ)の一つといえるだろう。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawaミルクもコーヒーに合うよう特化したもの、水分を蒸発させた脂肪分が高い濃縮乳を使用

「タクタイル」を重視する

秘密主義的であったり、飲む人の感覚に全ての重きを置いていたりするわけでは決してない。尋ねれば何でも答えてくれるし、ハイクオリティーを担保するためにミルク、水、器、各種機器に至るまで徹底した考えの下で選ばれている。中でも重視していることは、口当たり、いわゆる「タクタイル(触感)」だと深堀は言う。日本語では「もふもふ」や「ザラザラ」や「サラサラ」といったオノマトペで表現できるような質感、口当たりのことだ。

ミルクドリンクなら、クリーミーでもふもふしているものであればどんなフレーバーでもおいしく感じられるのだそう。エスプレッソなら、とろっとしていて滑らかで、酸味や苦味が突出せず、きれいにバランスが取れているものがよい。そしてフィルターコーヒーは、飲む温度の段階によって味が変わるもの。冷めてくると酸味が上がってきたり、逆に質感がより感じやすくなったりするからだ。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawa

質問すれば、こうしたイメージを言語化をしてくれるので、コーヒーへの理解度や解像度はぐっと上がるだろう。実感としてついていけないこともしばしばあるが、その場で分からなくても、後から気づけばいい。同店でのテイスティングは、どちらかといえば発見の場としての要素が大きいのだ。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawaテイクアウト窓口

 なお、イートインは予約、もしくは店舗コンセプトを事前に理解している人のウォークインに限るが、テイクアウトはメニューが店の前に用意されており、気軽に注文できる。テイクアウト専用のマシンやミルクを使用したエスプレッソやアメリカーノ、「櫻井焙茶研究所」による抹茶を使用したラテやトニックなどが600円から味わえ、豆の販売も20グラムから行っている。こちらも世界大会で使用されることが多い高品質のスペシャルビーンズだ。

KURO MAME TOKYO
Photo: Keisuke Tanigawa

同店を訪れたら「コーヒーってすごい、と思ってほしい」と深堀は語る。トップオブトップのコーヒーには無限のおいしさがある。まだ知らない世界を体験してみては。

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