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「これでこそハンズ」、48年の歴史に幕を下ろす渋谷店店長が語る聖地の記憶

閉店の反響やハンズのDNA、ここでしかできない楽しみ方

Genya Aoki
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Genya Aoki
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ハンズ渋谷店
Photo: Keisuke Tanigawa | 店長の清水
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2026年11月、賃貸契約の満了に伴ない、「ハンズ渋谷店(以下、渋谷店)」が48年の歴史に幕を下ろす。1978年の開店以来、地下2階・地上7階建てのスキップフロアに10万点超の品数を擁し、DIYとクラフトの「聖地」として渋谷のランドマークであり続けてきた店だ。

「ハンズ」が2026年8月に創業50周年を迎えたばかりというタイミングでの閉店発表は、国内外に大きな反響を呼んだ。閉店を前に、渋谷店の楽しみ方、そしてこの街で培われてきた「ハンズらしさ」について、同店店長の清水学に話を聞いた。

※本記事は、東京で生きる人に街のリアルな使い方を聞くポッドキャスト「Being Tokyo」特別版として実施したインタビューを基に構成しています。

Hands Shibuya
Photo: Keisuke TanigawaHands Shibuya

―まずは、清水店長のこれまでの経歴を聞かせてください。

清水(以下同):もともとは関西の出身なのですが、2019年に浜松店がオープンする際に店長に就任し、開業に携わりました。その後、川崎店、町田店を経て、渋谷店ではこれまで2年半ほど店長を務めています。

階段しかない「ダンジョン」のような渋谷店ならではの構造

―渋谷店ならではの楽しみ方を教えてください。

渋谷店を訪れた方が必ず思うのは「エスカレーターがなく、階段しかない」という点だと思います。エレベーターはありますが、どこへ行くにも基本は階段が欠かせないんです。

今の時代ではなかなかない造りですが、開業当時は渋谷店も、昔の横浜店も、関西では神戸・三宮のハンズも同じようなスキップフロアで、当時はこの形が最先端でした。48年もたつと少し勝手が変わってきて、「なぜエスカレーターがないのか」というお声もいただきますが、全部で24フロアを上からぐるぐる回りながら歩く感覚こそ、「これこそハンズだよね」と言っていただけるところでもあります。

―本当にダンジョン感がありますよね。私も先日改めて見て回ったのですが、7階から1階まで見てもう一度上に上がると「あれ? こんなフロアがあったのか」となる感覚は、本当にここだけです。

ハンズ渋谷店
Photo: Keisuke Tanigawaハンズ渋谷店

「1日いても楽しい」滞在型の大型店

—ほかの店舗と比べて、渋谷店ならではの使い方をされるお客さんはいますか?

渋谷はかなり大きな店なので、浜松や川崎のようなワンフロアの店とは客層が違います。ワンフロアの店は「この商品が買いたい」という目的買いのお客さまが多いのですが、渋谷は「1日いても楽しい」「何かあるんじゃないか」と、滞在するように買い物に来られる方が多い。そこは大きな違いだと思います。

—具体的にどういった人が多いなど、特徴はありますか?

渋谷店は、どちらかというと男性のお客さまが多いんです。最近オープンしているハンズの新店は、ステーショナリーや化粧品など女性向けの商品が中心で女性のお客さまが多い店がほとんどなのですが、渋谷は今も地下にDIYの大工道具やペンキなどを揃えていて、そのニーズがとても高い。そこが渋谷店の特徴ですね。

―ちょっと変わった使い方をされるお客さんもいますか?

渋谷の街は雑居ビルが多く、飲食店の入れ替わりが激しいんです。そのため、朝一番から「ニッカポッカ」姿の職人さんが来たりします。そうしたDIY的なニーズが高いんです。加えて、昔ながらのクラフトのニーズもあって、土日は財布・アクセサリー作りといったワークショップに参加する人でにぎわいます。朝から晩までいらっしゃる人も多いですよ。

—まさに「クラフトの聖地」ですね。インバウンドの需要はいかがですか?

コロナ禍ではかなりの打撃を受けましたが、最近はかなり戻ってきていて、インバウンドのお客さまも増えてきました。入ってこられると、まず上層階のペットコーナーまで一気に上がって、階段をぐるぐる回ってカゴをパンパンにして買って帰る、という方が多いですね。

また、バラエティーコーナーにある「スミスキーSMISKI」や、「Sonny Angel」という人形が海外で人気なようで。スマートフォンの画面を出して「これが欲しい」と言われることもよくあります。スミスキーは、一時期日本の全ての店の中で2番目に売り上げている店でした。海外の観光客の間で「ここで買ったよ」と知れ渡って、来てくださるのかなという感じですね。

ハンズ渋谷店
Photo: Keisuke Tanigawaハンズ渋谷店 2Aフロア

閉店の反響

—閉店が決まってから、「タイムアウト東京」でも日本語と英語の両方で記事を出したのですが、英語記事の反応が特に顕著でした。InstagramとFacebookだけで500件以上のコメントが付いたんです。「こんなに世界的なニュースなんだ」と衝撃を受けました。報道の後、久しぶりに来店されるお客さんなどはいましたか?

はい。報道が出た後は、お電話もそうですし、「20年ぶりに来た」という方もいらっしゃいました。筆記用具などを以前はここで揃えていた方、学生時代によく買っていたという方などが、思い出話をしながら買って帰られるお客さまが多い印象ですね。

ハンズ渋谷店
Photo: Keisuke Tanigawaハンズ渋谷店 5Cフロア「デザイン工房」

「売っていなければ自分で作ればいい」、変わらないハンズのDNA

—この48年の間で、「ハンズでしかできない体験」をしていったお客さんや、印象に残っているエピソードはありますか?

ハンズは「手作りで、何でも自分の手でやってみましょう」という発想から始まりました。作るキットを買っていく方、「物が売っていなければ自分で作ってしまえばいい」という発想の方が多いので、そのお手伝いをずっとさせていただいてきたのかなと思います。

—それは今も、リペアのカウンターなどに残っていますよね。

昔ながらのお客さまが根強く続いていて、その部分はほぼ昔から変わっていないと思います。一方で、去年一世を風靡(ふうび)したボンボンドロップシールのように新しい動きもあって、若い女性や主婦の方など、新たなお客さまも来てくださるようになりました。

ハンズ渋谷店
Photo: Keisuke Tanigawaハンズ渋谷店 2A フロア「LULUPOP」

—50周年の「生活編集図鑑」特集コーナーが楽しくていろいろ巡っていたのですが、デコパーツやワッペンなどの多種多様なハンドメイド素材を取りそろえた「LULUPOP」や「ソフビの世界」などもあって、コアな特集が印象的でした。

コアでニッチな、いわゆる「オタク」な客層を狙った、渋谷店独自の展開という面はあります。ただ、もともとニーズがあったんです。ソフビもそうですし、それ以外にも日本製の包丁など、外国人のお客さまがよく分かっていて求められる。だから日本のコアな客層にも、海外のインバウンドのお客さまにも、ニーズのあるものをとことん揃えよう、という形でやってきました。

—爪切りだけでも、ものすごい量ですよね。

「メイドインジャパン」のものは、やはり外国の方に人気ですね。そうしたコアな商品は、新宿店などよりも多いんじゃないかと思います。

渋谷店は「実験場」であり、受け継がれていくもの

渋谷店で試してニーズが広がり、「他の店でもいけそうだ」というものは、他店にも波及していきます。どちらかというと試験的にここで、一度やってみて、「当たったものは他でもやろう」という感じでしょうか。だから、ここがなくなっても、残していけるものは残す、という形で動いています。

―「最後のお祭り」というような印象を、勝手に抱いてしまっていました。

ここのDNAを残そうと、今まさに必死に頑張っているところです。

最高益の中での閉店

―閉店と聞くとどうしてもネガティブに受け取られがちですが、ハンズ自体は業績好調で、2025年には最高益を記録。絶好調で惜しまれつつという、アンバランスな状態での閉店ですね。

50周年という節目の年に、僕などは「ハンズの本店はここ(※)」と思っているくらいの店が、48年で幕を下ろす。率直に、残念という気持ちが本音です。

ただ、「ハンズといえば渋谷でしょ」と思ってくださるお客さまは本当に多いんです。新宿や横浜、そして渋谷なら「渋谷スクランブルスクエア」の中にも店がありますので、渋谷店がなくなったからといってハンズが終わるわけでも、もう買えなくなるわけでもありません。違う店で、同じように楽しんでほしいです。またご縁があれば、いつか渋谷に戻ってこられたら、と思っています。

(※)ハンズの創業店舗は神奈川県藤沢市にあった「藤沢店」だが、現在は閉店しており、本店という表記の店は存在しない。

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