ニュース

電脳空間にダイブ、「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」に行ってきた

30周年を記念した、全アニメシリーズを網羅する初の大規模展

Rikimaru Yamatsuka
テキスト
Rikimaru Yamatsuka
作家
攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa | 会場の様子
広告

虎ノ門ヒルズの「TOKYO NODE」で、2026年4月5日(日)まで開催している「攻殻機動隊展 Ghost and the Shell」に行ってきた。

士郎正宗の漫画を原作とするサイバーパンクSFのクラシックであり、近年は『AKIRA』と並んで世界的評価を受けるクールジャパンの代表格コンテンツ『攻殻機動隊』の、アニメシリーズにフォーカスを当てた大規模展覧会である。アニメ制作30周年を記念して開催された本展だが、このように映画・テレビシリーズを網羅した展示は初なのだという。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

普通にめっちゃすごかった

で、いきなり結論を述べるが、楽しかった。不当なまでに楽しかったし、普通にめっちゃすごかった。素人目に見ても相当なビッグバジェットが投入されていて、レイアウトも舞台装置も凝りに凝りまくっているし、ARグラスをかけるとタチコマが現れて都度作品のガイドをしてくれるなんてギミックも素敵だ。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke TanigawaARグラス

開催期間中は、計30以上のトークイベントやDJライブイベント、寺田創一らが登場するミュージックバーなども企画されている。トークは又吉直樹だったりYOSHIROTTENだったり、非常に気になる人選だ。単なる人気アニメシリーズのいち回顧展にとどまらないセンスの良さが光っている。

とにかくセンスがよろしい展示

「センスがいいな」と思ったのは、過度な説明を廃している点。たとえば本展の目玉の一つであろう各作品トータル1000枚以上の原画だが、その展示スタイルはなかなかストイックだ。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子
攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

原画展というのは大体、細かくコーナー分けがなされ、逐一歴史や背景を解説するキャプションがつけられているものだが、本展の展示方法にそういうそぶりはあまり見られない。全体的な姿勢がクールなのだ。壁面には作中の哲学的なセリフが引用されているが、説明というよりはハッシュタグ的に機能している。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

昨今の日本はクレーム対策ゆえに説明過剰な傾向におちいっていて、バラエティー番組は全言動にテロップが記され、コンビニのコーヒーマシーンは全手順が事細かに表示されたりしている。本展の言葉が廃されている感じは凄くクールだし、なんというか心地良いものだった。

一番最初のギャラリーA「NODE(思考の結節点)」とかも相当謎だったもん。電脳空間としか言いようがないフロアーに、謎の検索マシーンがズラリと並べられていて、それを活用すると「攻殻機動隊」のあらゆる情報にアクセスできるらしいんだけど、そこも別に説明がなかったからね。ちょっと触ったけど、使い方未知すぎて諦めたもん。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

アレ、もし市役所にあったら、近くに説明用の看板立てて、手順をベッタベタに貼ってあると思うよ。そういう感じで、よくわからないものがゴロッと転がっていて、好奇心をそそられまくる作りになっている。

サイバーパンクの基本構造

「攻殻機動隊」のアニメが画期的だった点って、いろいろな「テクニカルターム(専門用語)」がばんばん出てくるのに、その説明をしなかったというとこだと思う。原作はコマ外に脚注がついてるけど、アニメ版はそういう寄せるようなところがあまりない。ついてこれる人だけついてこい的なストイシズムがある。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

この方針を決定づけたのが押井守だと思うんだけど、これって要するにサイバーパンクの基本的構造だよね。まずいきなりどーんと世界観を提示して、テクニカルタームもバンバン使って、わかる奴だけわかればいいみたいな感じでグイグイ進めちゃう。そのテンション感を、本展に感じた。

アニメ作品の展示というのは、えてして「アニメーターの血と汗と涙!」みたいなところに帰結しがちだが、本展はそういうフィジカルなところを強調する姿勢がない。過度にエモくならないようにしている。要するに、すげえクール。でも「攻殻機動隊」ってそういう作品だと思う。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

原作の絵はエイティーズ美少女感がある(そしてそれが素晴らしい)が、アニメ版で糖度を低く設定し、「萌え」を抑えた絵柄が、結果的に「攻殻」のパブリックイメージになったという。

会場では今年スタートする新作テレビアニメのティーザーも流れていたが、それを観るかぎり、新作のタッチは士郎の絵柄にかなり近づけたもののようで、30周年にしてアニメが原作にもっとも近接するというのはおもしろいことだ。

マジでカッコいい以外いうことがない

さらに、さまざまなアーティストとコラボレーションしたブースも出ていて、それも相当楽しい感じだった。人体と機械の融合美を追求し続けるサイバーパンクSFアーティストのレジェンド・空山基が草薙素子をイメージして制作した新作彫像「Sexy Robot_The Ghost in the Shell type1」はかなりすごい。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa「Sexy Robot_The Ghost in the Shell type1」

なんでも、士郎と空山はお互いに私信を送り合うほど交流が深いのだそーだ。で、さすがは「空山基」という感じだった。マジでカッコいい以外にいうことが何もない。

彫像の下の方に転がっている浸透潤滑剤「KURE 5-56」の缶や絶縁テープも作品の一部だそうで、この手作業感を残すという綻びの入れ方に、空山の「攻殻機動隊」への視点を感じたりした。この作品のために1スペース丸々使ってたんだけど、そのスペースすら作品の一部として飲み込んでしまうような圧倒的存在感だ。

あと「UNLABELED」の展示も面白かった。貸し出されるTシャツを体にあてるとカメラから認識されず、さながら光学迷彩のごとくモザイクがかかるという「謎スゴ」テクノロジーである。あるメーカーの監視カメラのアルゴリズムを解析して、その動作を妨害する柄がプリントされてるのだそうだ。よく分からないが、猛烈に未来を感じてテンションが上がった。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

最後までしっかりセンスが良い

ほかにもいろいろ見どころはあるが、ギャラリーB終盤の「手で掘り起こす記憶“Analog Dig”(有料体験)」も注目したい。「攻殻」専用のカット袋に入れられた複製原画が、レコード屋のエサ箱のごとくズラリと並び、それをディグって持ち帰れるのだ。

これだけ最新技術を投入しまくっている展示で、最後にレコード屋を模した体験ができるようになっているという構成が、最高にセンスいい。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

そして、「ギャラリーC」の本展限定ショップは圧巻につきる。シンプルになんでもありすぎ。Tシャツ、スウェット、フーディー、キャップ、ジャージ、ステッカー、クリアファイル、ポスター、フィギュア、スニーカーなど、この手の物販にあるやつは全部ある。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

「鍋島焼」のタチコマとか実寸大の「草薙素子リアルフィギュア」とかもあった。価格は税込みで132万円と書いてあったが、このサイズとクオリティーなら正直安いなと思う。ただ、飾るところが相当難しそうだ。

攻殻機動隊展 Ghost and the Shell
Photo: Keisuke Tanigawa会場の様子

『AKIRA』と並んでストリートカルチャーシーンで人気を博した作品らしく、全60種類あるというTシャツはどれもすごいイケてた。それも相まって、物販スペースというよりはセレクトショップという空気がムンムン。

攻殻機動隊展
Photo: Tsukio Nakanishi「TechnoByobu : TB-02」

何気に注目してほしいのが、「TechnoByobu : TB-02」。最先端のヴィジュアルを、500年以上の伝統を誇る箔工芸を用いた屏風として再構築し、新世代のアートピースを作ろうという試みである。全面洋金箔(真鍮箔)の屏風上に色鮮やかに描かれた草薙素子は、1995年劇場版の象徴的なワイヤー接続シーンだ。QRコードを読み込めば、擬態の中で眠る「ゴースト」のような映像がVR空間に現れる。

最初から最後まで不当に楽しくセンスもすこぶるイカしてる「攻殻」展、ビギナーもマニアもまとめて面倒見る感全開で最高。また行きたい、っていうか絶対行く。

©士郎正宗・講談社/攻殻機動隊展 Ghost and the Shell 製作委員会

関連記事

東京、2月にリバイバル公開される映画

2月から3月に行くべきアニメ展示

老舗クラブ「WOMB」が仕掛ける新たな実験場「Z MARUYAMA」が円山町に誕生

9室のサウナを備える都市型リトリート「高輪 SAUNAS」が登場

高輪でしかできない6のこと

東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

最新ニュース
    広告