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サトウキビの搾りかすを使ったデニムや、修復や再構成を経て再生した家具など

毎年秋に開催されるデザインの祭典「DESIGNART TOKYO 2025」が開幕した。ギャラリーやショップなど表参道・外苑前・原宿・渋谷・六本木・銀座・東京といった都内各所を会場に、91会場で国内外から約130組のデザイナーや建築家、クリエーターらが多彩なプレゼンテーションを行う。
今年のテーマは「BRAVE 〜本能美の追求〜」。感情に直接働きかける美しさを追求したデザインとは何かを、さまざまな角度から探る。数多くの参加クリエイターの中でも、既存の物に手を加えたり工夫を凝らしたりして、新たな価値を与える若手の表現が目立った。また、素材や技術に改めて光を当てる試みも多く見られた。ここでは、そんな中から注目すべき見どころをいくつか紹介したい。
TIERS GALLERY by arakawagrip
表参道のメインストリートから一歩入った小道に位置する「TIERS GALLERY by arakawagrip」では、若手クリエーター4組による展示が行われている。中でも注目したいのが、中国・杭州出身で、現在は京都と杭州を拠点に活動するカ・ガイネイ(Kaining He)の香を使った作品『時間の贈り物(The Present of Time)』だ。
ガイネイは、粘土のように自由に形を変えられる香の性質に着目し、それを生かして植物の形状に造形している。燃焼によってゆっくりと灰へと姿を変えていく過程そのものに意識を向けた、詩的な作品である。
東京ミッドタウン
「東京ミッドタウン」にも、若手クリエーターたちの作品が点在している。建築家の先崎将人とインテリアデザイナーの長田竜河は、あらゆる理由で持ち主の元を離れた家具を回収し、修復や再構成を経て新しい用途を与える家具を制作した。
壊れたら捨てるのではなく、直して別の形に生まれ変わらせる。飽きたら形を変える。今ある物同士を補い合い、新たな価値を生み出す。そんな行為は、流行や、物を長く使い続けることの本質的な意味を改めて問いかける。
同じく東京ミッドタウンで作品を発表している富山聖は、サトウキビの搾りかすを混ぜた和紙を織り込んだデニム生地を使った衣服を展示。奄美大島の伝統織物「大島紬」の技術を受け継ぐ手織物「みなおり」をパッチワークとして組み合わせた。自身のルーツを創作の源に、伝統的に再解釈した作品は、新鮮な驚きに満ちている。
Time & Style Atmosphere
南青山のギャラリー兼ショップ「Time & Style Atmosphere」では、日本と西洋それぞれに受け継がれてきた技術と素材の持つ美を、ストレートに伝える2つの展示が開催されている。
1つ目は、インテリアブランド「Time & Style」による「柱と継ぎ手」。神社仏閣や古民家の修復や保存に用いられる「根継ぎ」や、木材の長さが足りない時に2本をつなぎ合わせる「継ぎ手」など、木を組む伝統技術に焦点を当てた。古くから伝わる技術の合理性と造形美をそのまま見せるために、四方42センチメートルの木材を用いて多様な継ぎ方を展示。精巧な技術と無駄のない美しさを、ありのままに示している。
2つ目は、数々の国際的デザイン賞を受賞してきたスウェーデンの建築スタジオ「Claesson Koivisto Rune」と、同国を代表するガラス工房「Orrefors」による協働作品。『Black Hole Vase』と名付けられたガラス作品は、直径約60センチの円すい形に成形された角のない幾何学の漆黒のフォルムで、圧倒的な存在感を持つ。
ガラス内部に閉じ込められた貯水部が光を通し、まるで無数の星が浮かぶ宇宙のような奥行きを生み出している。和室を思わせる土壁色の薄暗い室内にぽつりと置かれてたその姿は、わびさびを感じさせると同時に、北欧デザインが持つ静かで安らかな美と響き合う。見つめていると、深い闇の中に吸い込まれてしまいそうだ。
1925年の「パリ万国博覧会」でもガラス加工技術を発表したOrreforsは、2025年に開催された「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」にも『Black Hole Vase』を出展。会期終了後は「スウェーデン国立美術館」への収蔵が決定しており、この作品を直接目にできる機会はそう多くはないだろう。
NII、sync public
そのほか、青山一丁目駅すぐ横に位置するファニチャーブランドのショールーム「NII」では、国内外4組のデザイナーが、魅力的で活気あるオフィス空間を提案する家具を展示。また、デザイン会社・syncの社内に併設されたギャラリー「sync public」では、プロダクトデザイナーの高本夏実による、アルミニウムの切れ端を軽やかに再構築した家具などの展示が行われている。
地域性や手仕事が再び価値を持ち始め、物が生まれる背景や意味に関心が高まる今。こうした時代の転換期にあって、再利用や再解釈、身近な素材を発展させる姿勢がひときわ際立っていた。
会期は、2025年11月9日(日)まで。都内各所で開催されているので、出かける際には近くの会場をチェックし、ぜひ巡ってみてほしい。
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