Bike lanes in Bogotá
Photograph: VW Pics/Universal Images Group via Getty Images

南米コロンビアの首都ボゴタが「サイクリスト天国」になった理由

市民活動から発展した自転車インフラがコロナ禍で加速

テキスト:
Charlie Allenby
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コロンビアの首都ボゴタは、「世界で最も渋滞している都市」として何度も悪評を買っていて、2020年には住民1人当たり平均133時間もの時間を交通渋滞の中で過ごしていたという試算もある。しかし、そうした渋滞とクラクションだらけの道路にも、車に代わる移動のための現実的な選択肢がある。そう、自転車だ。イメージできないかもしれないが、ボゴタは今「サイクリスト天国」なのだ。

ボゴタには、市全体をカバーする600キロメートル以上の自転車ルート網が敷かれている。これはラテンアメリカで最も広範囲であり、世界でも有数の規模を誇るもの。こうしたインフラは、最近の新型コロナウイルス大流行への対応としても拡大。自身も熱心なサイクリストであるボコタ市長のクラウディア・ロペスが、住民がソーシャルディスタンスを保ちながら移動できるよう、ロードコーンを使って84キロメートルの臨時の自転車レーンを増設した。

市長は、2024年までにさらに280キロメートルのレーンを整備し、最終的には交通手段の50%を自転車またはスクーターに切り替えるという目標を設定。その達成のため、臨時レーンの大部分は常設化された。

この取り組みは効果を上げているようで、2017年に9%強だった市内の移動における自転車の割合が、2020年の統計では13%にまで上昇する見込み。人口800万人のボゴタで、サドルに座る人の数が格段に増えている(参考までに、2020年のイングランド全土の数値はわずか3%)。

しかし、この街でこれほど自転車が愛されるようになるまでには、実は長い時間がかかっている。1951年に開催されたロードレース『ブエルタ・ア・コロンビア』をきっかけに、自転車は国民に受け入れられ、娯楽利用では人気が出た。ただその後、自転車が本格的に街中での移動手段になったのは、1970年代。『Ciclovía(シクロビア)』と呼ばれる、車道を一時的に(歩行者天国のように)「自転車天国化」するイベントが浸透するようになってからだ。

建築家のハイメ・オルティス・マリーニョとフェルナンド・カロ・レストレポが発案した『シクロビア』は、日曜日と祝日の午前7時から午後2時の間、市内の主要な通りを車で封鎖し、ランナーや自転車、歩行者が安全な場所で運動できるようにするというもの。1974年12月に非公式イベントとして始まったが、今ではボゴタでの生活に欠かせないものとなり、世界中のカーフリー運動にも影響を与えている。

Bike lanes in Bogotá
Photograph: EGT-1 / Shutterstock.com

スタートから47年、マリーニョは『シクロビア』について、「ボゴタの人々のアイデンティティーの重要な一部。街のアイコンであり、世界の基準であり、サイクリングの進化に間違いなく貢献しています」と語っている。

『シクロビア』はインパクトが大きかったが、街中における自転車移動の問題を、週7時間分のみ解決しただけだった。残りの161時間のために、もっと永続的な対応が必要だったのだ。変化が訪れたのは、最初の『シクロビア』から20年以上たった頃。エンリケ・ペニャローサが初めて市長を就いた1998年から2000年にかけて、ボゴタの自転車インフラの整備が始まり、300キロメートルの道が造られた。

地元の自転車擁護者であり、New Urban Mobility Allianceのシニアアドバイザーであるカルロス・パルドは、ボゴタの自転車インフラの発展を次のように振り返っている。「このインフラは、自転車文化、習慣に欠かせない要素だと思います。自転車レーンのおかげで、自転車は貧しい人たちだけのものではなく、街中を素早く移動したい人たちのための交通手段だという『新しい考え』が生まれました」

ボゴタがコペンハーゲンやアムステルダムに続く「自転車都市」として真に評価されるために、パルドは今後、「安全、安心、産業、文化、ユーザーエクスペリエンスに焦点を当てていく必要がある」と考えている。しかし同時に、自転車優先の大胆な取り組みを行ってきた経緯があるボゴタでは、これらの面が整備されれば「自転車は一気に普及する」との自信も見せていた。

ボゴタ以外で「自転車ファースト」を掲げる3都市

オスロ(ノルウェー)

ノルウェーの首都オスロは、二酸化炭素排出量をゼロにするという目標を達成するために、道路を走る車の数を減らすためのシンプルな方法を思いついた。5000台の市営路上駐車スペースを撤去し、その代わりにストリートファニチャー、自転車レーン、広い歩道を設置したのだ。その結果、インフラが改善し、車の減少で安全性がアップしたことで、自転車で移動する住民の割合が増加した。

ハイデルベルグ(ドイツ)

あまり聞いたことがないかもしれないが、シュトゥットガルトの北100キロメートルに位置するこの小さな街は、自転車ファーストの考え方では世界的にもトップランナーといえる。16万人の人口のうち、50%がお気に入りの交通手段として自転車を挙げ、全交通手段の26%がペダルをこいで移動している。260キロメートルに及ぶ自転車ルートが整備されているため、自転車を使えば住民は素早く移動することができる。また、街が比較的小さいため、ほかの交通手段と同じくらい(あるいはそれ以上に)素早く移動することができるというのも、自転車での移動が盛んな理由といえるだろう。

ポートランド(オレゴン州、アメリカ)

ポートランドといえば、アメリカの中でもトレンドが生まれる場所というイメージがあるかもしれない。しかしその自転車インフラは、口ひげを蓄えた自転車愛好家だけでなく、幅広い層が活用。最近では、道路や川に、Ned Flanders Crossingといった車の通らない橋がいくつか開通し、自転車での移動がよりに簡単になった。こうした橋は、各地域間を車の危険を感じないで移動できるようするため整備されている6マイル(約9.5キロメートル)の線状公園、Green Loopの一部として設置されている。

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