photo (c) Stuttgarter Ballett with Friedemann Vogel and Elisa Badenes
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バレエ&ダンスの名作を自宅で鑑賞:第1回 シュトゥットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』

古典バレエを楽しむ演目

編集:
Hisato Hayashi
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タイムアウト東京 > アート&カルチャー > 自宅で楽しめるダンスビューイング > バレエ&ダンスの名作を自宅で鑑賞:第1回 シュトゥットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』』

テキスト:高橋彩子

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、外出を控えている人、見るはずだった公演が中止になってしまった人、さらには海外への観劇旅行をキャンセルした人もいることだろう。しかし、代わりに多くの劇場が無料で映像配信を行っており、自宅で見られる映像がざくざくだ。その中から、バレエを初めて観る人にも掛け値なしにお勧めできる映像を独断と偏見でご紹介しよう。この機会に、あなたも自宅でバレエ&ダンスの鑑賞デビューを。

ご紹介第一弾は古典から。ドイツのシュトゥットガルト・バレエ団が2020年3月31日(火)まで公開していたのは、同バレエ団が生んだ名バレリーナであり芸術監督としても活躍したマリシア・ハイデの演出・振付の『眠れる森の美女』。

初演は1987年だが、今回の映像は昨年12月に収録されたもの。チャイコフスキーの壮麗な音楽とともに、古典に細やかな工夫を施して送るこのプロダクションは、さまざまな意味でバレエデビューにぴったりだ。 

※こちらは2020年3月31日配信終了しました。

裏地まで考え抜かれた衣装

物語は、国王夫妻に誕生した王女の命名式に始まる。リラの精を筆頭に妖精たちが選ばれる中、唯一招かれなかったカラボスが、オーロラと名付けられた王女に呪いをかける【プロローグ】、16歳の誕生日を迎えたオーロラがカラボスによって死にかけるもリラの精によって100年の眠りへと和らげられる【第1幕】、100年後の王子がリラの精の導きでオーロラの幻に恋し、眠るオーロラに口づけして100年の眠りから覚ます【第2幕】、婚礼祝いの宴が開かれる【第3幕】まで。

プロローグが始まるや、回廊を模した美術や、ブルーを基調とする貴族たちの装いの鮮やかさに目を奪われることだろう。妖精たちの衣装の美しさはもちろんだが、彼女たちをエスコートする男性の上着の裏地の色まで考え抜かれている。美術・衣装を手がけているのはユルゲン・ローゼ。その洗練美は、本作の大きな見どころだ。

魅力あふれるキャラクターたち

男性ダンサーによって演じられる魔女カラボスの存在感にも注目したい。映像では、2008年の日本公演でも同役を務めたジェイソン・レイリーが踊っているが、デモーニッシュで芝居心たっぷりで、なんとも魅力的。それもそのはず、この役はもともと振付のハイデが、長年のパートナーであり朋友の、リチャード・クラガンのために作ったものなのだ。メイクについては、歌舞伎の女方の化粧も参考にしたのだとか。めでたい命名式にカラボスが暗雲ならぬ「暗幕」を文字通り垂れ込めさせる趣向も見事。

オーロラを踊るのはエリサ・バデネス。16歳らしい溌剌(はつらつ)とした踊りを見せてくれる。彼女に求婚する各国のプリンスたちの装束も必見だ。王子はフリーデマン・フォーゲル。すらりとした長躯(ちょうく)で、100年の壁を超えた恋へとひた走る。

童話が原作だけあって、最後の宴に他の童話のキャラクターたちが集うのも、この『眠れる森の美女』の楽しさ。白雪姫と七人のこびと、赤ずきんとオオカミ、長靴を履いた猫……。たくさん出てくるので、皆で当て合ってはいかがだろうか。

シュトゥットガルト・バレエ公式サイトはこちら

高橋彩子
舞踊・演劇ライター。現代劇、伝統芸能、バレエ・ダンス、 ミュージカル、オペラなどを中心に取材。「エル・ジャポン」「AERA」「ぴあ」「The Japan Times」や、各種公演パンフレットなどに執筆している。年間観劇数250本以上。第10回日本ダンス評論賞第一席。現在、ウェブマガジン「ONTOMO」で聴覚面から舞台を紹介する「耳から“観る”舞台」、エンタメ特化型情報メディア「SPICE」で「もっと文楽!〜文楽技芸員インタビュー〜を連載中。

 http://blog.goo.ne.jp/pluiedete

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