東京、銀座5丁目4-1
Photo: Florian Hölzherr Courtesy of CCA Wattis Institute for Contemporary Arts, San Francisco | Donut, 2003 Programmed light projection, screen dimensions variable 5min, loop
Photo: Florian Hölzherr Courtesy of CCA Wattis Institute for Contemporary Arts, San Francisco

東京、9月に行くべき無料のアート展10選

清川あさみ×名和晃平、田名網敬一、アン・ヴェロニカ・ヤンセンなど

Chikaru Yoshioka
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夏の余韻を残しながら、少しずつ秋へと向かう9月。東京には、ジャンルを横断するアートやデザインの注目展が集まる。

「銀座メゾンエルメス ル フォーラム」では、光や色、空間を用いて知覚を揺さぶるアン・ヴェロニカ・ヤンセンの日本初個展。「ポーラ ミュージアム アネックス」では、異なる表現領域で活動する清川あさみと名和晃平が共演し、「21_21 DESIGN SIGHT」では、パルミジャーニ・フルリエの30年の歩みと機械式時計の魅力に迫る展覧会が開かれる。

季節がゆっくりと移ろうこの時期に、心に残る10の展示を紹介する。

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「ポーラ ミュージアム アネックス」で、美術家の清川あさみと彫刻家の名和晃平による二人展が開催。清川の著書『みえないにわ - Invisible Garden』の刊行をきっかけに構想された展覧会で、今回が初の二人展となる。

会場では、滴や胞子、微生物、動植物、人の記憶や時間、夢、想像力など、有形無形のさまざまなものが息づく風景として「にわ」を表現。刺繍(ししゅう)によって物語を紡ぐ清川と、透明のセルでイメージを被覆・変換する名和の作品が、白で統一された空間で呼応する。

中心となるのは、二人の共作による全幅約9メートルの大型新作『PixCell-Our New World』。清川が風景写真や生成AI画像の断片から構成した画面を名和が透明のセルで覆い、イメージが分割と統合を繰り返しながら、新たな風景を生み出す。このほか、名和の『PixCell-Random』や清川の『Serendipity』などの新作も展示する。

さらに、1階の「ポーラ ギンザ」でも植物や滴をモチーフとした作品によるインスタレーションを展開。2つの空間を巡りながら、鑑賞者それぞれの記憶や感覚の中に「みえないにわ」を育むような体験を届ける。

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「銀座メゾンエルメス ル フォーラム」で、イギリス生まれでベルギーを拠点に活動するアーティスト、アン・ヴェロニカ・ヤンセン(Ann Veronica Janssens)の日本初個展が開催。彫刻やインスタレーション、映像、写真、舞台美術など、幅広い表現を展開してきたヤンセンの2000年代以降の作品を紹介する。

ヤンセンは1970年代後半から、合板、ガラス、コンクリートなどを用いた作品を制作。1990年ごろからは、光や音、人工煙霧といった捉えどころのない要素を取り入れ、常に実験的な試みを継続してきた。

会場の住所をそのままタイトルに掲げる本展「東京、銀座5丁目4-1」では、場所への身体的、感覚的、かつ概念的な彼のアプローチが強く示されている。拡散する光を物質として扱う『Rose』や、青いグリッターによって瞬間の痕跡をとどめる『Untitled (blue glitter)』などの作品群は、時間・光・空気を操り、感覚の緩衝地帯ともいえる見えない建築を作り出していく。

「コントロールの喪失」や「物体の専制から逃れること」の中に作品を見いだそうとするヤンセン。光沢、軽さ、透明性、流動性をたたえた作品と向き合うことで、鑑賞者自身の身体感覚も揺らぐような体験へと誘う。

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「渋谷アクシュ」3階に、現代アートギャラリー「NANZUKA」の新たなフラッグシップギャラリー「NANZUKA」が9月12日(土)にオープン。開設を記念するこけら落としとして、同日から10月17日(土)まで、田名網敬一(1936~2024年)の個展「DO NOT BOMB」が開催される。

会場では、約60年にわたる田名網の創作活動を、「戦争の記憶」を軸に紹介。2024年制作の本展タイトル作品「DO NOT BOMB」や未発表の新作をはじめ、1960~70年代のシルクスクリーン、コラージュ、ペインティング、アニメーション、立体・映像作品などを展示する。

田名網の創作の原点には、幼少期に経験した第二次世界大戦がある。防空壕から見上げた照明弾、爆撃の轟音、焼け野原となった戦後の東京。そうした記憶は、アメリカンコミックや広告、映画、漫画、特撮などのポップカルチャーと結びつき、鮮烈な色彩とユーモアを備えた独自の表現へと昇華された。

1960年代後半のベトナム反戦をテーマにした「NO MORE WAR」シリーズの精神を受け継ぐ「DO NOT BOMB」では、爆弾が金魚へと姿を変え、画面には「DO NOT BOMB」というメッセージが大きく描かれている。一方、爆発による破片は薔薇の花弁として表現される。戦争が続く現代において、この言葉は田名網が生涯を通して発し続けた平和への願いを象徴するメッセージとして響く。 

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「TOTOギャラリー 間」で、ベルリンを拠点に活動する建築家・アーティストコレクティブ、ラウムラボア・ベルリン(raumlaborberlin)による展覧会が、9月10日(木)から11月29日(日)まで開催される。

「空間実験室」を意味するドイツ語に由来するラウムラボア・ベルリンは、市民を巻き込みながら、都市に新たな交流の場を生み出してきた。公共浴場やコモンキッチンなど、誰もが参加できる身体的なアプローチを通じて、制約に満ちた現代都市に、柔軟で余白のある空間を作り続ける。2021年には「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」で金獅子賞を受賞するなど、建築・デザイン・演劇の領域で数々の賞に輝いている。

本展で彼らが着目するのは、長年取り組んできた「水」というテーマだ。日本における水上・水辺の利用の可能性を探るため、会期に先駆けて、東京湾の豊洲運河に面する芝浦工業大学建築学部の学生たちとワークショップを実施。都市をより創造的に捉え直すきっかけとして、1日限りのパフォーマンス「アメンボ丸」を完成させた。

建築の輪郭をあえて曖昧にし、人の身体と都市を直接つなぐ「アメンボ丸」は、人々の対話を生み出すとともに、海上利用の新たな可能性を探る試みでもある。展覧会では、ワークショップで使用した資材を形を変えて引き継ぎながら、その記録や水の循環、ラウムラボア・ベルリンが思い描く水辺の世界を紹介していく。

ユーモアあふれる実験的な建築実践を通して、オルタナティブな社会像を提示し続けてきた彼らの世界を体感できるだろう。

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ロンドンを拠点に活動する写真家、スティーブン・ギル(Stephen Gill)の個展が、「art cruise gallery by Baycrew’s」で開催。写真を「世界を記録するためのもの」から、「世界とともにイメージを生み出すためのもの」へと拡張してきたギルの作品36点を展示する。

写真家の「撮る」という行為を少しずつ手放し、自然や偶然に作品を委ねる手法を探求してきたギル。編集から印刷、製本に至るまでの出版に関わる全ての工程を自ら手がけ、これらの作業そのものも彼の芸術活動において重要な役割を果たしている。

『Hackney Flowers』では、ロンドン・ハックニーで撮影した写真に現地で採集した花や種を重ねるなど、時間や土地との協働を制作のプロセスに取り込んだ。『Talking to Ants』は、植物や昆虫をカメラ内部に入れることで、予期せぬ影や痕跡を風景とともにフィルムへと定着。さらに『The Pillar』では、モーションセンサー付きのカメラを農地に設置し、集まる鳥たちを写真家不在のまま撮影した。

写真をコントロールするのではなく、写真が生まれる状況そのものを作る。ギルが試みてきた静かな実験に触れてほしい。

アートをもっと知るなら……

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