西洋絵画、どこから見るか?
「西洋絵画、どこから見るか?」フアン・サンチェス・コターン 《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》1602年ごろ、 油彩/カンヴァス、 サンディエゴ美術館 ⒸThe San Diego Museum of Art
「西洋絵画、どこから見るか?」フアン・サンチェス・コターン 《マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物》1602年ごろ、 油彩/カンヴァス、 サンディエゴ美術館 ⒸThe San Diego Museum of Art

関西、2025年下半期の見逃せないアート展10選

ルイ・ヴィトンの没入型展示、藤田嗣治 × 国吉康雄、大ゴッホ展など

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2025年の下半期も心揺さぶるアートと出合いたい。「阪神・淡路大震災」から30年を迎え、「2025年日本国際博覧会」(以下、大阪・関西万博)が開催されている中、大阪・京都・兵庫では注目の展示が盛りだくさんだ。

日本というレンズを通して解釈されたルイ・ヴィトン展から、ゴッホの家族が受け継いできたコレクションに焦点を当てたもの、国際的に活躍するアーティストが「非常事態」の日々を見つめる展示まで、ここでは厳選したアート展を紹介する。

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  • アート

「ルイ・ヴィトン」の創業170周年と大阪 ・関西万博を記念し、大阪中之島美術館」で「ビジョナリー・ジャーニー」展が開催。メゾンの先駆的な精神と比類のない「旅の神髄」を物語り、卓越した匠の技、創造性、そしてイノベーションにインスパイアされた没入型の旅へと誘う。

本展は、美術史家でキュレーターのフロランス ・ミュラー(Florence Müller)の協力の下で制作。デザインは、大手建築設計事務所・OMAの重松象平が担当し、メゾンの原点から最新のクリエーションまでの軌跡を鮮やかに描く。そして、日本との長きにわたる貴重な関係にオマージュをささげる。

1854年の創業以来、革新とスタイルを組み合わせた独自のデザインを最高級な品質で提供し続けるルイ・ヴィトンの世界へと飛び込もう。

  • アート

国立国際美術館」で、特別展「非常の常」が開催。世界的に活躍する作家の表現を通じて、常態化する非常事態の日々を見つめ、想像力を膨らませ、明日を生きる希望を探る。

出品作家は、シプリアン・ガイヤール(Cyprien Gaillard)、ハン・イシュ(潘逸舟)、クゥワイ・サムナン(Khvay Samnang)、キム・アヨン(Ayoung Kim)、リー・キット(Lee Kit)、高橋喜代史、米田知子、ユェン・グァンミン(袁廣鳴)の8人だ。

一見、穏やかな風景を切り取ったかのような米田の写真が撮影されたのは、休戦状態で今も緊張が続く韓国と北朝鮮の間の非武装地帯。韓国のアヨンは、高度情報化社会と新自由主義が可能にしたギグエコノミーや、プラットフォーム労働の問題を扱う。

また、台湾のビデオアートシーンを牽引(けんいん)してきた映像作家のグァンミンは、2024年の「ヴェネチア・ビエンナーレ」の台湾館のために発表した話題作『日常戦争』を、国内の美術館で初展示する。

さらに、バラエティーに富んだ映像表現が大集合。サムナンによる5チャンネルの映像インスタレーション作品、映像を絵画的に用いた詩的な美しさをたたえるキットの新作インスタレーションなどで、映像表現の新たな可能性を目撃してほしい。

地震、山火事、洪水、津波、かつてない気候変動などの天変地異をはじめ、クーデター、侵略、戦争、突然の世界的経済危機など、世界で起こっている同時代的な危機や社会問題について、本展を通して考えてみては。

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  • アート

大阪市立美術館」で、フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh、1853〜1890年)の家族が受け継いできたコレクションに焦点を当てる展覧会「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」が開催される。

ゴッホの画業を支え、大部分の作品を保管していた弟のテオドルス・ファン・ゴッホ(Theodorus van Gogh、テオ)は、兄の死の半年後に生涯を閉じ、テオの妻・ヨハンナ・ファン・ゴッホ=ボンゲル(Johanna van Gogh-Bonger、ヨー)が膨大なコレクションを管理する。ヨーは義兄の名声を高めることに人生をささげ、作品を展覧会に貸し出し、販売し、膨大な手紙を整理して出版。その後、ヨーの息子がフィンセント・ファン・ゴッホ財団を作り、美術館の設立に尽力した。

アムステルダムの「ファン ゴッホ美術館」には、ゴッホの約200点の油彩や500点に上る素描をはじめ、手紙や関連作品、浮世絵版画などが所蔵されている。そのほとんどは、1973年の開館時に財団が永久貸与したものだ。

本展では、ファン・ゴッホ美術館の作品を中心にゴッホの作品30点以上を展示。また、日本初公開となるゴッホの手紙なども展示し、家族が守り受け継いできたコレクションを紹介する。

兄弟や家族の絆を、作品を通して垣間見てほしい。

  • アート

京都市京セラ美術館」で、「西洋絵画、どこから見るか?—ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館」が開催。「サンディエゴ美術館」と「国立西洋美術館の所蔵品計60点を組み合わせ、作品をどのように見ると楽しめるかという観点から、鑑賞のヒントを提案する。

ルネサンスから19世紀末までの600年にわたる西洋美術の歴史を紹介する本展。関連する作品がペアや小グループごとに展示され、比較して鑑賞することで、さまざまな角度から絵画が持つストーリーを深掘りする。サンディエゴ美術館から出品される54点は日本初公開となる。

見どころは、エル・グレコ(El Greco)やバルトロメ・エステバン・ムリーリョ(Bartolomé Esteban Murillo)など、スペイン美術の名品。スペイン独自の静物画「ボデゴン」の最高傑作と評され、その始祖とされる画家、フアン・サンチェス・コターン(Juan Sánchez Cotán)の『マルメロ、キャベツ、メロンとキュウリのある静物』は、ハイライトの一つだ。

比べて見るから分かる西洋絵画の面白さは、初めての美術鑑賞にもピッタリだろう。一人一人の 「どこみる」を発見してほしい。

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  • アート

兵庫県立美術館」で、20世紀前半の激動の時代に海外で成功と挫折を経験した、藤田藤田嗣治(1886〜1968年)と国吉康雄(1889〜1953年)の展覧会が開催。これまで個別に語られてきた2人の画家について、9つの章を通して作品を対比させながら紹介していく。

藤田は、26歳で単身フランスに渡り、1920年代に「素晴らしき乳白色の下地」と称賛された独自の画風によって、フランスでの名声を確立。16歳で渡米した国吉は、画才を認められ、アメリカ具象絵画を代表する画家としての地位を築いた。

パリとニューヨークで活躍した2人は、1925年と1928年のパリ、1930年のニューヨークで接点を持つが、太平洋戦争でその関係性が破綻。1949年の10カ月を藤田はニューヨークで過ごすが、現地にいた国吉との再会はかなわなかった。

日本とフランス、日本とアメリカ、2つの祖国を持った2人が、それぞれどのような自覚と視座のもと作品を生み出していったのか。本展で感じ取ってほしい。

  • アート

大阪高島屋」で、北欧デザインのパイオニアとして活躍した、スウェーデンの陶芸家でありデザイナーのスティグ・リンドベリ(Stig Lindberg、1916〜1982年)を包括的に紹介する展示が開催。日本でも人気のあるテーブルウエアに加えて、ファイアンスや一点もののアートピース、テキスタイル、絵本の挿絵、スケッチなど、さまざまな作品を紹介する。

20世紀北欧デザインを代表するデザイナーの一人として、数々のデザインやアートが世界中に愛され続けているリンドベリ。本展では、日本ではこれまで見いだされる機会のなかった側面も含めて、リンドベリの芸術性を再発見していく。

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  • アート

大阪中之島美術館」で、大阪市出身で大正から昭和初期にかけて活躍し、日本人としての油彩画を追求し続けた画家・小出楢󠄀重の個展が開催。4半世紀ぶりの本格的な回顧展となる本展では、楢󠄀重の創作を各時代の代表作とともにたどり、画家が求めた独自の表現について再考する。

「裸婦の楢󠄀重」と称されるほどの独自の様式に到達し、日本女性ならではの裸身を絵画上に魅力的に表現した楢󠄀重。本展では、年を経るごとに洗練され、独自の様式を作り上げる過程を、画業の後半に制作された数々の裸婦像によってたどる。


また、油彩画のみならず、ガラス絵、挿絵、装幀(そうてい)、随筆などに発揮された多彩な才能も紹介。さらに、設立者の一人となり、1924年に大阪市西区に開設された「信濃橋洋画研究所」を特集し、楢󠄀重の教育者としての活動を振り返る。

日本近代洋画史上類いまれな才能を発揮した楢󠄀重の魅力を再発見してほしい。

  • アート

神戸市立博物館」では、阪神・淡路大震災から30年という節目の年に、数々の困難を乗り越え、後世の人々の心を揺さぶる絵画を遺した画家、ゴッホの展覧会を開催する。

ゴッホは、生前は長らく正当に評価されず、過酷な人生を送ったことで知られている。「生涯で売れた絵はたった1枚」といった逸話もあるが、近年の研究により、実際にはそれほど単純ではなかったことが分かっている。

同展では、ゴッホの才能をいち早く見出した初期の重要なコレクター、ドイツの富豪ヘレーネ・クレラー=ミュラー(Helene Kröller-Müller)に焦点を当てる。彼女は、美術史家の娘の教師の助言を受けながら、ゴッホの作品を体系的に収集した。

ヘレーネが生涯をかけて築いたコレクションを所蔵するオランダの「クレラー=ミュラー美術館」から、『夜のカフェテラス』をはじめとするえりすぐりの作品が来日する。ゴッホの作品と、それを支えた知られざる女性の情熱に触れられるまたとない機会。会場に足を運んでみては。

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  • アート

金魚に魅せられ、創作を続ける美術作家・深堀隆介の個展が「あべのハルカス美術館」で開催。初期の立体作品から、絵画、映像、大規模なインスタレーションなど新作を含む作品約300点を一挙に紹介する。

透明樹脂にアクリル絵の具で何層にも重ねて描く「2.5Dペインティング」とも称される斬新な技法により、立体感のある金魚を作り出してきた深堀。作品は、まるで目の前に水があり、命ある金魚が泳いでいるかのような迫真性を持つ。

深堀は、自身の作品をまるで生きているかのように「見せる」一方で、それが命を持たない絵の具の積層であるという事実に正面から対峙(たいじ)する。幻影と物質の同居という、リアリズムにおける根源的な命題が横たわっているのだ。

一貫して取り組んできた金魚の造形に改めてフォーカスし、描くこと、リアルであることに対する作家の思想に迫る本展。 虚実のはざまを揺れ動く「金魚繚乱」の世界を垣間見てほしい。

  • アート

池田市の「逸翁美術館」で、歌舞伎に登場するさまざまな刀剣を浮世絵で紹介する展示が開催。歌舞伎ならではの人間が持てるサイズとは思えない大太刀(おおたち)やまさかり、弁慶が背負う七つ道具からは鎌やのこぎりが登場する。

歌舞伎の定番である御家騒動をテーマにした作品では、代々伝わる御宝が行方不明になり、責任を取って主君は切腹、御家は断絶、遺された若君や家臣が身分を隠して御宝を探し求めるといったストーリーがたくさんある。その御宝を代表するのが宝刀で、波瀾(はらん)万丈なストーリーが刀剣を巡って展開している。

由緒正しき名刀から不思議な力で暴れ回る妖刀、名もなき刃まで、芝居になくてはならない刀剣の物語を読み解こう。

大阪のアート情報なら……

  • アート

大阪のホットなアートエリアとして知られる中之島や、アートの街・北加賀屋エリアなどには、個性あふれるギャラリーやアートブックを扱うショップ&カフェ、倉庫跡地の大型アートスペースなどが多数ある。そんな想像力が刺激されるギャラリーを厳選して紹介しよう。街歩きの参考にしてみては。

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戦前期のモダニズム建築や日本最古の弁財天を祭る寺院から、オブジェ性の高い吸気塔、「世界を代表する20の建造物」として紹介された建物まで、大阪には見るべき貴重な建築物が点在する。文化施設やバーとして利用できる場所もあるため、豊かなデザインに囲まれながら、ゆったりとした時間が過ごせる。大阪の一度は訪れてほしい名建築を紹介したい。

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