吉田都
吉田都

インタビュー:吉田都

バレリーナから新国立劇場の舞踊芸術監督に就任、新たなステージへ向かう吉田都にこれからのビジョンを聞く

作成者: Hisato Hayashi
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テキスト:高橋彩子

英国の名門バレエ団、バーミンガム・ロイヤル・バレエおよび英国ロイヤル・バレエのプリンシパルとして活躍した名バレリーナの吉田都が、新国立劇場舞踊部門の芸術監督に就任する。

秋からの2020/2021シーズンを目前にして、コロナ禍に見舞われた吉田が語る今の思い、そして芸術監督としてのビジョンを聞いた。

日本のバレエ界を変えたい

ーいよいよ芸術監督就任ですね。その前段階として昨年、現役を引退されました。

とにかく踊ることが好きで、できる限りは続けたいと思っていましたから、もし、芸術監督にというお話がなければ今でも踊っていたかもしれません。実際お話をいただいた時には、自分にこのような大役が務まるのかと、とても悩みました。

でも新国立劇場は日本のバレエ界、先生方、先輩方の悲願であったわけですから、その大切な劇場のバレエ団をより良い形で次へつないでいくにあたって、海外のバレエ団でずっと踊ってきた私だからこそできる何かがあるのではないかと思い、お引き受けしました。

芸術監督をしつつ現役で舞台に立つ方もいるけれど、私は不器用で一つのことしかできない。今後は踊らず、芸術監督の仕事に全エネルギーを注ぐつもりでいます。

ー芸術監督としてのテーマ、目標を言葉にするとどのようなものになるでしょう?

私の中では、目指す柱は5本あります。第一に、現監督である大原永子先生も取り組まれていた表現力の強化と、そのための身体の使い方やテクニックの強化。第二に、ダンサーたちの環境の向上、改善。第三に、新しい振付家の開拓、育成。第四に、子どもたちにバレエを伝える、将来のお客様を育てる、または一般の方が来やすい取り組みをするといったエデュケーショナルな試み。第五に、チャリティー公演や、視覚障害とか聴覚障害のある方にもバレエ公演に来ていただくなど、バレエでの社会貢献です。

ー強化という話で言うと、引退までの都さんを追ったドキュメンタリー『LAST DANCE ~バレリーナ吉田都 引退までの闘いの日々~』で、若いダンサーに身体の使い方をアドバイスされていたのを思い出します。

日本ではクラシック中心で習いますが、クラシックは上へ上へと身体を引き上げるので、下に重心をもっていくことに慣れておらず、踊るときに身体が一つにまとまったまま動いている印象なんです。結局は軸が弱いということなのでしょう。だから、一方に身体を傾けると全部そちらに持っていかれてしまう。軸を強くすれば、前後左右、どこへでも動ける身体になりますし、古典もコンテンポラリーも踊りやすくなります。

総じて昔よりもテクニックは向上しているのですが、それ以上にいろいろなムーブメントが求められるようになっているので、従来の訓練だけでは難しい場合があるんですよね。人によりますが一定の年齢を超えたら、リハーサル以外に、最新のスポーツサイエンスを上手く取り入れていく必要が出てきます。作品によっても重点的に鍛えるべき箇所が違いますから、例えば『白鳥の湖』だったら背中から腕まで全部使えるようにするなど、作品に必要なところを強化しなければなりません。

ー環境面も、都さんがしばしば挙げている課題ですね。

ダンサーを取り巻く環境は余りにも過酷です。日本のバレエ界は独特の発展をしてきていて、アマチュアとプロの待遇の境目が曖昧。バレエダンサーという職業が社会的に認められていないようなところがあり、ダンサーたちもどこか遠慮がちなのが、舞台にも垣間見える気がします。プロとして訓練を受けてきた人がプライドを持って「私の職業はダンサーです」と言えるようにしたい。私がイギリスで経験してきたものと大きく違うのはそこなんです。

例えば英国ロイヤル・バレエは団員全員が給料制ですし、オペラハウスの施設内に、治療したりリラックスしたり鍛えたりといった設備が充実していて、ダンサーを支える一流のスタッフが揃っています。日々の生活も公演も、全てそこで成り立つような環境に恵まれているからこそ、覚悟が自ずと違ってきて、競争も激しくなり、切磋琢磨するようになるのです。

一方、日本のダンサーたちは違うところにエネルギーを使わなければならない。バレエ団で踊った後、しっかりと休んだりほかの何かを吸収する時間に使ったりするべきところを、生活のためにほかの公演にゲスト出演しに行ったり、教えに行ったりということがあります。皆、ほんわかしていて仲が良いのはいいのですが、やっぱり個性を際立たせ、自分の信じる何かに向かって突き進める環境が大事です。

ーどのあたりから変えていきたいですか?

これは私の在任中には無理かもしれませんが、まずはプリンシパルだけでも、もう少し安定した収入が得られるようにしたいですね。聞いたところによると、パリ・オペラ座バレエ団はロイヤル・バレエ団と違って、基本給はあるけれど、それ以上の収入に関しては、エトワール以外はパフォーマンスごとらしいので、そうしたケースも参考にしつつ、一番いい形を見つけたいです。とにかく、今の日本の状況が世界的に見て珍しいので、各所に働きかけていくつもりです。

コロナ禍での船出

ー芸術監督就任を目前に控えた中で起きたコロナ禍。大変な船出になってしまいましたね。

まさかこんなことになるとは、想像もしていませんでした。3月の時点で芸術監督の大原永子先生が(家族のいる)スコットランドから戻って来られなくなり、私は代理として引っ張っていく立場になりました。緊急事態宣言が出るまでは、密にならないよう(公演中止により)使用されていないオペラ劇場の舞台をお稽古に使うなどしていて「なんと贅沢な!」という感じだったのが、あっという間にできなくなってしまって。先が見えない中で、ダンサーたちは皆、とても不安だったと思います。

ー都さんご自身は自粛期間中、どんな日々を送っていましたか?

ここまで外に出られない生活は初めてでしたが、読書をしたりエクササイズやヨガをしたり、ゆったりと有意義な時間を過ごすことができました。でももし、私が去年、現役を引退していなかったら、パニックになっていたかもしれません。

ですから、現役のダンサーたちが、翼をもがれた鳥のような状態でどれだけ心理的に追い詰められたかはよく分かります。もちろん私自身も気持ちがずーんと沈み込む時はあって、アートやクラシック音楽に随分と助けられました。芸術の力は大きいなと改めて実感しました。

ーバレエでも、新国立劇場を含め世界中の劇場がさまざまな映像を配信してくれたことに、慰められたファンは多かったことでしょう。

新国立劇場ではチケットの払い戻しの際に多くのご寄付をいただき、添えられた応援コメントにとても励まされましたし、映像を配信する「巣ごもりシアター」が良かった、といったうれしい反応もいただきました。これからはコロナと共に生きていかなければならないと思いますから、オンラインなど使えるものを最大限に使っていかなければいけませんね。

とはいえ、私の中では、舞台はやっぱり生。座席数を50%以下に制限するなどの感染症対策を講じると、公演すればするほど赤字になってしまうのが現実ですが、とにかく生の舞台を観ていただける状況を作っていきたいです。

ー緊急事態宣言が解除された後、バレエ団の稽古はどのように再開したのですか?

6月からオンラインでの稽古と並行して、少人数での稽古を始めました。稽古場のほか、中劇場など空いているスペースも活用し、少人数でも皆に回るように組みながら、少しずつ人数を増やしていって。

今は森山開次さんの新作バレエ『竜宮』公演中ですが(編集部注:業務委託者の新型コロナウイルス感染により、2020年7月30、31日公演は中止に)、それが終わったら新シーズンの準備に入ります。これまで何があっても劇場は続いてきていますから、乗り越えられるはず。ここで途切れさせるわけにはいかないので、何があろうとダンサーがお稽古に専念できるようにし、作品をしっかり作って上演していかなくてはと考えています。 

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新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』2016(撮影:瀬戸秀美)
新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』2016(撮影:瀬戸秀美)
新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』2016(撮影:瀬戸秀美)

新シーズン始動

ーさて、2020/2021シーズンの開幕は、新制作のピーター・ライト版『白鳥の湖』の予定でしたが、再演のアレクセイ・ファジェーチェフ版『ドン・キホーテ』に変更になりました。

イギリスがロックダウンでストップし、準備も思うように進まず、『白鳥の湖』の振付や指導をしてくださる先生方が来られるかどうか分からなかったので、自分の中では早い段階から演目変更を検討していました。そして、代わりの演目を『ドン・キホーテ』にし、永子先生に見ていただこうと思ったんです。

先生の最後のシーズンは、5月に『ドン・キホーテ』、6月に『不思議の国のアリス』を上演するはずだったのが、どちらも中止になってしまいました。長くバレエ団に関わられた先生のシーズンがこのような形で終わいくのは私も本当に悲しくて。先生は『ドン・キホーテ』の主役を日替わりで組んでいらして、皆に頑張ってほしいというお気持ちが伝わってきていましたので、今回のキャスティングも永子先生がなさったそのままにしました。

ーつまり『ドン・キホーテ』という演目自体が、前芸術監督から新芸術監督へとつなぐタスキの役割になるわけですね。このファジェーチェフ版『ドン・キホーテ』は、新国立劇場開場の翌シーズンの初演以来ずっと上演されているプロダクションで、しかも初演では都さんが主役のキトリを踊られています。 

『ドン・キホーテ』というと、例えばミハイル・バリシニコフ版はひねりを加えていますし、ルドルフ・ヌレエフ版は独自の解釈が入っていますが、ファジェーチェフ版はバランスの良いオーソドックスなもので、見どころもたっぷりです。踊り手も思い切り良く踊る事ができる、「ザ・ロシア・バレエ」という感じの舞台になっています。

ー都さんが踊られた時の思い出も教えてください。

相手役のバジルを踊ったのが高身長のウヴァーロフさんだったので、私との身長差がすごくて。背だけでなく手も長い方なので、リフトされると怖かったですね(笑)。

ファジェーチェフ版のキトリの3幕のソロは、私が踊ってきたアンソニー・ダウエル版やミハイル・バリシニコフ版、ルドルフ・ヌレエフ版のものとは違うのですが、公演直前に着いて最後の舞台稽古を迎えた時、ファジェーチェフさんに「ごめんごめん。僕のバージョンは違うから変えてくれないかな」と言われて、1、2日で別のソロを覚えて踊ったことも思い出に残っています。

私自身、そちらのソロも踊ってみたかったので、できてうれしかったですね。とはいえ時間が足りなかったので、自分としては仕上がりに納得はいかなかったのですが。あのソロを踊ったのは新国立劇場での一回きりでした。

ー今回踊るダンサーにはどのようなものを求めたいですか?

自粛期間があったので、まずは時間をかけて身体作りをする必要があると思います。スペインが舞台の『ドン・キホーテ』には、肩の使い方をはじめとして独特のスタイルがありますし、バレエ・ブラン(白のバレエ。『白鳥の湖』など)とは違う、弾けるような強さや演技の自然さも必要です。キトリとバジル、そしてその周囲とのコミュニケーションがとても大事になってきますね。最後の見せ場でしっかり踊れるよう、体力の配分も不可欠です。でも最終的には、踊っている本人たちが楽しむこと。それがお客さまにも伝わりますから。

ー2020/2021シーズンの新制作としては、ほかに小品が3本入っています。簡単にご紹介いただけますか?

ピアニストとバイオリニストがストラヴィンスキーの楽曲をステージ上で演奏する『デュオ・コンチェルタント』は、男女二人だけのバランシン作品。ダンサーたちのセンス、個性も問われる作品なので、どのように仕上がるか楽しみにしていてください。私が芸術監督になったら英国に偏るイメージをしていた方もいらっしゃるようなのですが、幅広さは意識したいと考えています。

ピアソラの音楽で送る、ハンス・ファン・マーネン振付『ファイヴ・タンゴ』は、バレエステップではあるのですが少し違う、大人の見せ方をしないといけない作品なので、ダンサーたちがどこまで変わるか楽しみなんです。就任に当たってダンサーたちと一対一で面談したところ、皆それぞれキャラクターが際立っていたので、もっとそれを舞台で見せてほしいんです。テクニックだけではなく、立ち居振る舞いでも魅せてもらいたいですね。

バッハのピアノコンチェルトに乗せて送るデヴィッド・ドウソン振付『A Million Kisses to my Skin』は、ストーリーは特にないのですが、ドウソンが言うには、音楽の視覚化、そして踊る際の至福感のようなものが表現されているそうです。今、活躍されている振付家なので、ダンサーたちも一緒に仕事をすることで刺激を受けるでしょう。

動きとしてはクラシックのステップとコンテンポラリーの融合なので、自由に解き放たれてほしい、殻を破ってほしいと願っています。

新たな時代に向けて

ー最初のシーズンには入りませんでしたが、今後、グランド・バレエの新作も待ち望まれます。

日本から世界に発信できるものを、ぜひ作りたいですね。それはまさに英国ロイヤル・バレエがやってきたこと。ロイヤルで育った私にはその大切さもよく分かっています。ただ、実現には少し時間がかかるでしょう。たくさんの人材と出会うため、いろいろな舞台を観に行っていますし、作品の映像を送っていただいたり、友人を通して紹介があったりと、興味深いものに出会う機会も増えています。

今は新作というとコンテンポラリー作品が多いですが、私はまずはクラシックベースのものがいいと考えているので、その難しさもありますね。ストーリー・バレエなので台本がしっかりしていることも重要です。

ー集客の問題も無視できません。デヴィッド・ビントレー芸術監督時代、トリプルビルで現代的な演目を幾つも入れていて面白かったのですが、集客面では苦戦したようですし。

ええ、バレエの人間からしたらとても興味深いものを選んでいらしたのですが、なかなか難しいところですね。とにかく、より多くのお客様に来ていただけるような試みはしたいと思います。私の周りにも、新国立劇場に来たことがない方も随分いるんです。去年の私の引退公演で初めて来たとおっしゃる方もいて、バレエをご覧になる方でもそうなんだわ、と。ですからバレエのお客様、そして一般の方が来やすいよう工夫を凝らしたいです。

ーいろいろな観客を呼ぶことができれば、コンテンポラリーを面白がる人も自然に増えるかもしれません。

ロイヤルでも、ウェイン・マクレガーが振り付けた作品を上演する日は客層がガラリと変わって、若い男の子や中年男性のグループなどが来ていて、ロックコンサートみたいな不思議な客層だったんです。新国立劇場でも客層を広げて、その方々が今度は古典を観てみようという風になったらいいですしね。

ーそのためにも、ぜひ同じ舞台ジャンル同士は手を携えていってほしいところです。身近なところで言うなら、新国のオペラ部門、演劇部門との協働が進むことに期待しています。

同じ生の舞台ですものね。この夏、新国立劇場始まって以来初めて3部門がコラボレーションする『Super Angels スーパーエンジェル』が中止になって残念ですが、これから力を合わせていけたらと思います。劇場についているお客さまがたくさんいらっしゃるので、その方々が減ってしまったらどうしよう、などとプレッシャーも感じていますが、あれこれ挑戦もしながら、流れをつないで次に渡していくべく、頑張りたいと考えています。

新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』2016(撮影:瀬戸秀美)
新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』2016(撮影:瀬戸秀美)

ドン・キホーテ

アート 新国立劇場, 初台

2020年5月公演が中止となった古典バレエ『ドン・キホーテ』が、2020/2021シーズンとして新国立劇場で開催。ミゲル・デ・セルバンテス著『ドン・キホーテ 』のエピソードをもとに、床屋のバジルと町娘キトリのバルセロナを舞台にした恋物語が展開される。 闘牛士や町の女たちによるスペイン舞踊、風車のエピソード、ドン・キホーテの夢の中で繰り広げられる美しい群舞、最終幕の恋人たちによるグラン・パ・ド・ドゥまで、古典バレエの美しさとバラエティーに富んだ踊りを堪能できる演目となっている。 新国立劇場バレエ団の小野絢子や米沢唯、福岡雄大らをキャストに迎えての、定評ある美しいコール・ド・バレエの舞台を単横してみては。 関連記事『インタビュー:吉田都』

高橋彩子
舞踊・演劇ライター。現代劇、伝統芸能、バレエ・ダンス、 ミュージカル、オペラなどを中心に取材。『エル・ジャポン』『シアターガイド』『ぴあ』『The Japan Times』や、各種公演パンフレットなどに執筆している。年間観劇数250本以上。第10回日本ダンス評論賞第一席。現在、Webマガジン『ONTOMO』で聴覚面から舞台を紹介する「耳から“観る”舞台」、バレエ雑誌『SWAN MAGAZINE』で「バレエファンに贈る オペラ万華鏡」、バレエ専門ウェブメディア『バレエチャンネル』で「ステージ交差点」を連載中。

 http://blog.goo.ne.jp/pluiedete

舞台芸術の担い手に聞く。

インタビュー:松本幸四郎

ステージ

1931年にアメリカで公開されたチャップリンの名作映画『街の灯』が、映画公開のわずか7カ月後に歌舞伎化され、歌舞伎座で初演されたことをご存じだろうか。 劇作家の木村錦花が、映画雑誌やアメリカで映画を観た歌舞伎俳優の証言をもとに、チャップリン演じる浮浪者に歌舞伎『与話情浮名横櫛』の登場人物、蝙蝠の安五郎(通称・蝙蝠安)を当てはめて書いた歌舞伎『蝙蝠の安さん』だ。1934年の『街の灯』日本公開に何年も先んじてのことだった。 その『蝙蝠の安さん』が、チャップリン生誕130年の今年、88年ぶりに、国立劇場にて上演される。主演は、本作の再演を熱望していたという松本幸四郎だ。

インタビュー:野村萬斎

ステージ

ある時は占術・呪術を使いこなす怜悧な陰陽師(映画『陰陽師』)、またある時は、智も仁も勇もないが人々に愛されるでくのぼう(映画『のぼうの城』)。多彩な顔を見せる野村萬斎だが、その根幹にあるのは、14世紀に確立され、現存する最古の演劇であり、ユネスコの世界無形文化遺産でもある狂言だ。祖父・故六世野村万蔵および父・野村万作に師事し、3歳で初舞台を踏んだ彼は、その600年の伝統を引き継ぐ。

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インタビュー:平山素子

ダンス コンテンポラリー&エクスペリメンタル

難解でとっつきにくい印象のある、コンテンポラリーダンス。しかし近年、学校教育に取り入れられたり、日本の芸能界にも経験者が目立つようになり、徐々にではあるが一般的な人気を集めつつある。そんなコンテンポラリーダンス界に、常に新たな革新を迫りつつも、純粋に人間の身体への興味を掻き立てる振付でシーンに刺激を与え続けてきたのが、平山素子だ。2016年3月25日(金)からの3日間に上演予定の最新作、『Hybrid -Rhythm & Dance』の稽古を行っている平山に、作品の会場でもある新国立劇場で話を聞いた。

インタビュー:九世野村万蔵

アート

伝統芸能、それも江戸の町衆に支持された歌舞伎ではなく、貴族や武家の寵愛を受けた能楽と聞くと、堅苦しく近寄りがたい印象を受ける向きも多いかもしれない。しかし、九世野村万蔵のおおらかな人柄に触れれば、能楽に対するそのような感想が当たらないものであるということに同意してもらえることだろう。 「狂言には『人間を愛したり、許したりしないといけませんよ』というメッセージが込められているんですよね」と話してくれたのが九世野村万蔵、狂言の二大流派の一つ、和泉流の野村万蔵家9代目当主だ。実父に公益社団法人日本芸能実演家団体協議会会長でもある人間国宝の野村萬を持ち、自身も万蔵家の組織「萬狂言」を率いて国内外で活動を行う、当代きっての狂言師だ。 時に「双子」とともたとえられる「能」と「狂言」の、二つを合わせた呼び名が「能楽」、古くは「猿楽」とも呼ばれていた。能に、神や仏、鬼といったこの世ならざるものを扱う悲劇性の強く深刻なものが多いのに対して、狂言は人間の滑稽さをユーモラスに表した喜劇と、おおまかには言える。

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