東北アップデート:カーディガンから始まる変革

気仙沼の人々に自信をもたらした編み物ビジネスとは
東北アップデート:カーディガンから始まる変革
作成者: Time Out Tokyo Editors |
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テキスト:Nick Narigon

御手洗瑞子は、最果ての海を思わせるような深い青色をした手編みのセーターを身に着けている。それはただの美しい衣服なだけでなく、2011年3月の震災からまだ復興している途中の地域をはっきり思い出させる。

我々は著名なコピーライター、糸井重里のオフィスにある会議室で話している。彼は御手洗さんと3年前から協業し、高級なカーディガンとセーターを生産する営利企業の株式会社気仙沼ニッティングを立ち上げた。御手洗が着ているようなセーターを編むニット職人のほとんどは、例の地震と津波、その後の火災(一連の災害で港町気仙沼は海抜が約2メートル下がった)によって家を失った。新しい家に移り住んだ人もいれば、未だ仮設住宅で暮らす人もいる。

東北アップデート:カーディガンから始まる変革

「気仙沼は甚大な被害を受けた。私たちのいちばんの目的は被災した人々のために仕事を創出し、仕事を通して誇りを取り戻してもらうこと」と御手洗(29)は語る。糸井と御手洗が初めて出会ったのは、互いがヒマラヤの小さな国、ブータンに興味を持っていたのがきっかけだった。御手洗は2010年、ブータン政府のもと国民幸福委員会の活動の一環で、観光促進の仕事をしていた。一方糸井は当時既にブータンのユニークな文化に魅せられており、御手洗のブログを見つけて両者の関係が始まった。

2012年に御手洗が日本に帰国すると、糸井は自身のアイデアの舵取りをしてくれるよう彼女に求めた。そのアイデアが彼女の起業家としての好奇心に火をつけた。「ブータンのような小さな国でさえ、世界的に評価されるような新しいモデルを作り出すことができた。そういったやる気こそが、私がブータンで得たもの。時には、小規模であることは有利になる。柔軟に仕事ができたり、新しいものを作りやすかったりする。仕事上、それが可能だと私は感じた」と彼女は言う。

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かつて御手洗は、東北のある自治体が産業復興戦略を立案するのを手伝っていた。それゆえ、非営利組織(NPO)が支援と資金援助に基づいて成り立つのを目の当たりにしていた。しかし、わざわざ被災地に移って事業をはじめようとする者はいなかった。彼女の考えでは、それこそが「再建」に必要なポイントだ。

「産業の復興は難しい。ボトムアップのやり方が必要。『復興が完了した』というのは、人々がそれぞれ自分らしい暮らしをできるようになっているということ。仕事に行き、食料を買い、自分の家へ帰って食事を作る。日常生活は取り戻せると思う。しかし大切なのは確実に仕事がある状態にすることと、仕事を提供する企業が存続できること」と彼女は語る。

気仙沼のニット職人は手先の器用さで有名で、高い評価をされており、それゆえ御手洗は優れた技能を持つ職人を雇うことができた。それは同時に、優れたデザインテンプレートも必要となることを意味する。彼女はニットデザイナーの三國万里子に助けを求めた。彼女らは、豪華なセーターで有名なアイルランド沖のアラン島を訪れ、ニット産業の研究も行った。

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株式会社気仙沼ニッティングは2013年に正式に会社登録され、注文が殺到し始める。生産量は限られており、需要はとても高かったため、最初の2年は購入できる人が抽選で選ばれるシステムだった。自分自身でセーターの編み方を学び、気仙沼でホストファミリーと暮らしていた御手洗は、抽選に外れた顧客に断りを入れることに疲弊してしまい(諦めずに何度も注文をする人もいた)、抽選システムの代わりに順番待ちリストを取り入れた。

同社は現在35人の女性を雇用し利益を上げている。しかしそれよりも大切なのが、各家庭が正常な状態に戻りつつあること、と御手洗は言う。「最初の年に収益が黒字になったので市に税金を払える、と私が発表した時が、ニット職人たちにとって最高のポイントだった。ある職人は私に、『今なら、顔を上げて堂々と街中を歩ける』と言った。彼女は再び街に貢献できたことが幸せだったのだ」。

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