樋口高顕 千代田区長
Photo: Kisa Toyoshima | 樋口高顕 千代田区長
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東京中心部に緑豊かな明日を、千代田区長が語る「緑と水」のある景観保護

樋口高顕区長へインタビュー、観光対策と世界に誇れる魅力

Ili Saarinen
テキスト: Shota Nagao
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皇居を含む東京の中心に位置する千代田区は、日本の政治・経済の中心地であり、「昼間人口」は約90万人に達する。一方で、東京23区の中で最も「夜間人口」が少なく、住民は7万人未満であるが、数多くの特有の課題を内包している。

また、この地域には1600年代初頭に江戸が日本の事実上の首都として台頭した時代から続く長く複雑な歴史、広大な緑地、世界最先端の都市インフラが共存する独特の環境があり、さらに秋葉原・神保町・丸の内といった対照的な街並みが存在する。

この全てを理解し、管理する任務を負う人物が、43歳の千代田区長・樋口高顕だ。2025年2月に任期4年で再選を果たしたばかりである。区が未来をどう見据えているか、そして観光客の急増にどう対応しているか――区長に話を聞いた。

本記事は、樋口高顕千代田区長へのインタビューの後編。前編を読む。

ー千代田区には東京で最も有名な観光地がいくつかあります。観光客の急増にどう対応していますか?

樋口高顕(以下、樋口): 多くの人々に訪れていただいていることを大変嬉しく思っていますが、幾つかの問題も生じています。千代田区の人口は比較的少ないものの、住宅や学校、高齢者施設といった生活に密着した施設が点在しています。そのため、国内外の来訪者の増加に伴い、地域の安全性や快適性を維持することが喫緊の課題となっています。

特に神保町、秋葉原といった観光や商業の拠点では、ポイ捨てや路上喫煙が目立ち、地域環境への影響が懸念されています。

こうした状況を踏まえ、ごみのポイ捨てや路上喫煙などのルールやマナーについて、生活環境施策、まちづくりなど、様々な観点から解決に向けて取り組んでいます。

観光による負の側面は、住民の間に不安を広げています。問題が顕在化、深刻化してからでは対応が遅れますから、地域の活力や魅力を損なわない形で、積極的に対応を講じることが求められています。

樋口高顕 千代田区長
Photo: Kisa Toyoshima

ー千代田区の魅力を維持するために、どのような長期的な取り組みを進めていますか?

千代田区は日本で最初に急速な都市化が進んだ地域の一つであり、多くの通りは狭く、築年数が古く老朽化が進む建物があります。一方で、広大な緑地である皇居や、旧江戸城のお濠に由来する水路があるのも特徴です。こうした「緑と水」の資源を活かし、再生することが千代田区にとって極めて重要だと考えます。

その一環として、水生生物や野鳥などの生息環境を確保し、生物多様性を向上させる「ネイチャーポジティブ」に取り組んでいます。また、ごみの分別・リサイクルを徹底し、焼却ごみの量を大幅に削減することで、都市部の自治体の中でいち早く、2050年までに「ゼロ・ウェイスト」実現を目指しています。

住宅政策では、価格が高騰するマンションへの対策に力を入れています。また、都市の既存建物ストックの活用を積極的に推進し、過去の「スクラップ・アンド・ビルド」一辺倒の政策からの脱却を図るため、具体策を検討しています。

さらに、文化の振興も重要です。ポップカルチャーの街・秋葉原や、文字活字文化の街・神保町、江戸由来の神田祭、山王祭をはじめとする祭礼文化など、文化芸術の振興と育成は、千代田区が独自性を大切にしながら持続可能に発展する自治体となるために不可欠と考えています。

ー最後に、千代田区のどのような魅力を世界にアピールしたいですか?

まずは400年以上の豊潤な歴史ですね。徳川家康公が1603年に江戸幕府を開いて以来、まちづくりが重層的に続けられてきました。幕府が大規模な土木事業に着手し、江戸城の石垣や濠を築き、河川を改流し、都市の骨格を構築したのです。

武士の屋敷が建てられ、商人の街が形成され、庶民の居住区が発展。そして明治以降はいわゆる近代化が進みました。今日の千代田区は、伝統と現代が入り混じった街です。大手町・丸の内・有楽町にはレンガ造りの建物と超高層ビルが並立し、大正モダンの東京駅の重厚な駅舎もあります。

一方で、「江戸城」の濠の一部である千鳥ヶ淵は桜の名所として人気を博しています。さらに老舗のお店もたくさんあります。たとえば1596年に創業した東京で最古の酒店や、江戸の庶民が愛した蕎麦や寿司などの飲食店があります。江戸から明治、大正、昭和に至るまで、実に魅力的で厚みのある文化の蓄積と現在の賑わいがあります。そういったさまざまな色合いを楽しんで欲しいと思います。

千代田の地は、江戸時代以降400年余にわたり常に政治と文化の中心であり続けてきました。いわば日本の心臓部なのです。

樋口高顕 千代田区長
Photo: Kisa Toyoshima樋口高顕 千代田区長(左から2番目)と右からタイムアウト東京の東谷彰子 副代表、長尾翔太、区長を挟んでイリ・サーリネン副編集長

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東京の知識人が何世代にもわたって集ってきた地、神保町。ここは歴史ある大学街であり、ビブリオマニアにとっての楽園だ。約130軒の古書店があり、そのほとんどが低層のやや年季の入った雑居ビルに入居し、昔ながらの喫茶店やカレー店と建物を共有している。

新しい学生たちが絶え間なく流入することで、エネルギッシュな底流が生まれており、過去と現在が鮮やかに息づいている街でもある。路地裏には、新しいタイプの親密なミュージックバー、本格的なインドカレー店、クールなカフェ、独立系書店が次々と登場し、デジタル生活の不安や絶え間ないペースに対する理想的な癒やしのように感じられる場所に、新たな層を加えている。

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