メテ・レシャット・キュプチュ
メテ・レシャット・キュプチュ(Photo: Kisa Toyoshima)

荏原町に根付くトルココミュニティー、中心人物が語るローカルで壮大な夢

トルコ食料品店とカフェ&バーのオーナー、メテ・レシャット・キュプチュにインタビュー

編集:
Genya Aoki
寄稿:
Mie Yoneya
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東京で活躍する外国人にインタビューをし、実際に東京で暮らす中で、何を思い、人や街とどんな風に関係しているのかを聞いていくシリーズ『インターナショナル トーキョー』。第3回は、有限会社セルチェの取締役、トルコ出身のメテ・レシャット・キュプチュに話を聞いた。

メテは、仕事で日本に来た際に出会った妻と結婚するために来日して18年。トルコのおいしい食品を輸入して日本人に食べてほしいという思いから、トルコ産オリーブオイルの輸入販売をスタートした。2019年には品川区荏原町商店街縁日通りに、トルコ食品店のターキッシュ フード アンド ワインマーケット ドアル (Turkish Food&Wine Market Dogal)、2021年には数軒隣にカフェ&バーを開店。テレビなどにも多く出演している、街の名物オーナーだ。

東京で店を開くことについての苦労話を聞くと、「日本人はみんな優しいから大変なことはない」と笑い飛ばす。実際に話を聞くと、筆者なら苦労と捉えるエピソードもあったが、持ち前の明るさと、店前を人が通るたびに気軽に声をかけるような人懐こさで、人々をたちまち味方にしてしまうのだ。

近い将来、荏原町をトルコの店でいっぱいにする「荏原町トルコ村計画」を構想中だ。一体どんな計画なのか尋ねると、目を輝かせて語ってくれた。

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街がインターナショナル化していて楽しい
ターキッシュ フード アンド ワインマーケット ドアル(Photo: Kisa Toyoshima)

街がインターナショナル化していて楽しい

―トルコから日本に来た時、どんな印象を受けましたか?

トルコで見ていたドラマにはサムライが登場していました。日本のドラマだと思って見ていたのに、実はアメリカのドラマ。日本に来てもサムライはいなかったね(笑)。

でもトルコと日本は、文化も言葉も似ているし、何より人が優しいから特に困ったことはありませんでした。特にトルコ語と日本語は文法は同じなので、単語さえ覚えればちゃんと話せます。日本語学校にも通いましたが、ビジネスで使う「です」「ます」が話せればいいと、半年くらいで辞めてしまいましたね。その分、イベントを開催したり、トルコレストランのバイトでウエーターをやったり、実地で日本語を学びました。

イスラム教徒なので豚肉は食べられないけれど、料理は自分で作るからノープロブレムだし。納豆や寿司や刺し身も好きですよ。

ー現在の店舗出店の経緯を教えてもらえますか。

2008年8月から2016年3月まで馬込に最初の実店舗を出店していました。2019年に荏原町にオープンさせたトルコの食材やお酒を扱うマーケット店は、当時からお世話になっていたお客さまから実店舗復活を望む声をいただいて、大好きなこの街で再開することにしたのです。

この街にはトルコ以外にも外国人オーナーがいて、商店街の人たちは「街がインターナショナル化していて楽しい」と言ってくれています。皆さん、外国人ウエルカムな感じですね。

「荏原町トルコ村計画」
Photo: Kisa Toyoshima

「荏原町トルコ村計画」

―先日テレビ番組で「荏原町トルコ村計画」の話をしていましたね。

現在、荏原町にはトルコ関連のお店はレストランと雑貨店、食料品店とカフェの4軒。仲良しの雑貨店のオーナーとは「アイスクリーム屋さんをオープンしたいね」と話していますが、まだ具体的な話があるわけではありません。何年か後に「トルコ村」ができたら、もちろん私が村長になります(笑)。

実は今、狙っている店舗があるんです。トルコのパンやアイス、家庭で使う調理機器、洋服などを候補に考えています。でも自分だけで全てをやるのは大変なので、場所を見つけたら友達に店を出さないかと声をかけるかもしれません。

でも、みんなで仲良くやりたいので、すでにある店と同じ業種の店はやらないようにしています。

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『オスマン帝国外伝』の影響でプチトルコブーム
「バクラヴァ」とトルコチャイ(Photo: Kisa Toyoshima)

『オスマン帝国外伝』の影響でプチトルコブーム

―日本にもトルコの文化に興味を持つ人が増えていますね。

テレビドラマ『オスマン帝国外伝』の影響が大きいようです。例えばトルコの建造物は色やデザインがとてもきれいで、ドラマを観てトルコの文化や建造物が好きになった人の多くは、代々木上原にあるモスク(東京ジャーミイ)に出かけるようです。

カフェや食料品店に来るお客さまのほとんどは日本人です。トルコへ行ったり、トルコ料理を食べたりしてトルコを好きになったという人。カフェに来て、私と話してトルコに興味を持ってくれた人もいます。

―最近、トルコのお菓子「バクラヴァ」に人気が集まっています。

うちの店でバクラヴァを仕入れている会社(ベイザーデ バクラヴァ)は、元々は表参道でトルコレストランをやっていました。愛知県周辺にはトルコ人が多く住んでいて、フレッシュなバクラヴァが食べたいと言っていたんですね。それを聞いたレストランのオーナーが名古屋にバクラヴァの専門店を出店。それをきっかけに日本人もバクラヴァに興味を持ち始めて、人気が一気に広がっていきました。

トルコの家庭では、バクラヴァにはアイスクリームを添えてチャイ(紅茶を総称してチャイと呼んでいる)と一緒に食べます。一方、日本のユベシのような食感の「ロクム」はコーヒーと食べることが多いですね。

コミュニティーや人が大切
Photo: Kisa Toyoshima

コミュニティーや人が大切

―メテさんのような外国人が日本で店を出す時に、ハードルだと感じることはありますか?

私はハードルを感じたことはありません。銀行で口座が作れなかったことはありますが、別の銀行では作れました。しかし、2005年に私がオンラインショップを始めた頃より、今の方がさまざまなことが厳しくなっていると聞いています。

不動産屋に「外国人には貸さない」と言われたこともありますよ。でも今は品川区、大田区に店舗と事務所、倉庫の4軒を借りられているし。カフェバーを借りる時、オーナーさんは「外国人に貸すのはちょっと不安だ」と思っていたようでしたが、直接会って話したら「ぜひこの街を盛り上げてほしい」と快く貸してくださいました。

でも私が「こういうやり方がいい」と言っても、それが誰にでも合うかどうかは分かりません。さまざまな人の意見に耳を傾けて、良いと思ったことを取り入れた上で、その人の考えでやればいいのではないでしょうか。そういう意味でもコミュニティーや人は大切だと思います。

メテ・レシャット・キュプチュ(Mete Reşat KÜPÇÜ)

有限会社セルチェ 取締役

トルコ、ニクサル(Niksar)出身。エーゲ海沿岸のイズミル(Izmir)に7年間滞在後、2004年夏に来日する。2005年、トルコ産オリーブオイルを輸入、オンライン販売を行う有限会社セルチェを設立。2019年にトルコ食品店のターキッシュ フード アンド ワインマーケット ドアル(Turkish Food & Wine Market Dogal)、2021年にターキッシュカフェ&バー ドアル(Turkish Cafe & Bar Dogal)を開店した。趣味はトルコの家庭料理を作ること。

東京の異国に繰り出す……

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トルコはカフェ文化発祥の地であり、町中にカフェハネやチャイハネといった喫茶店があふれ、人々の暮らしは喫茶と深く結びついている。

2021年5月1日、荏原町にオープンしたターキッシュ カフェ アンド バー ドアル(Turkish Cafe & Bar Dogal)は、そんなトルコの茶やコーヒー、そして酒を気軽に楽しめるカフェバーだ。営業形態も現地のスタイルにならい、昼休みを挟まず、昼から夜まで同じメニューを提供する。開店直後からトルコの酒を飲める貴重な一軒である(ただし、緊急事態宣言中は酒類の取り扱いはしていない)。  

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ここ数年、海外で人気を博したカフェやコーヒーショップの日本初出店が増えている。海外旅行はまだ気軽にできなくとも、都内で外国のカルチャーに触れたり、異国情緒に浸ったりするのはどうだろう。今回は中でも海外の雰囲気が満喫できる店を厳選して紹介する。

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東京在住の駐日大使にインタビューを続けている「Tokyo meets the world」。この中では、世界各国のSDGsの取り組みを学べるほか、「世界随一の美食都市」としての側面を持つ東京が、いかに多様な国の料理を提供しているかも掲載してきた。ここではインタビューの中で、各国の大使が「東京で自国の味を楽しむなら」と、勧めてくれた店を7カ国分紹介しよう。

本格ギリシャ料理、コロンビア産の本物のカカオ、オランダ人が愛する絶品つまみ、日本に1軒しかないクロアチア料理の専門店など、いずれも未知と美味の驚きに満ちている。ぜひ堪能してほしい。

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今年卒業を迎えた学生の多くは、卒業旅行を断念したのではないだろうか。「本当は海外に行きたかった」「最後の思い出づくりが、台無しになってしまった」と嘆いているのは、当然だろう。だが東京にはまるで、異世界に迷い込んでしまったかような空間を味わえるスポットがたくさんある。

ここでは、アジアからヨーロッパまで、海外旅行気分を体験できるレストランや雑貨店、在住外国人が集うスーパーなどを紹介する。学生時代を共にした友人と、プチ旅行を楽しんでもらいたい。

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「你好!几位?(いらっしゃいませ、何名様ですか?)」。店員さんの発する第一声が中国語の中華料理店がここ数年、高田馬場や新大久保などで急増している。中でも池袋はその総本山だ。

輸入食材がそろう中華物産店や、中国各地の郷土料理が楽しめるフードコートなど、まるで本国を旅行しているような気分に浸れる。町中華とはまた違う、現地で食べるような料理や雰囲気が楽しめる店を7軒紹介する。

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