車いす目線で考える 第2回「とりあえずバリアフリー」
YUTAKA SAWADA

車いす目線で考える 第2回「とりあえずバリアフリー」

バリアフリーコンサルタント大塚訓平が考える、東京のアクセシビリティ

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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タイムアウト東京  Open Tokyo > 車いす目線で考える > 第2回「とりあえずバリアフリー」

テキスト:大塚訓平

2020年東京オリンピック・パラリンピックまで、残すところあと2年。東京を中心に、急ピッチで各所のハード面のバリアフリー化が進んできた。しかし僕は、この急ピッチがある問題を引き起こしているのではないかと考えている。それは、整備することだけに集中してしまったが故に、実際に利用する当事者の意見が置き去りになり「使えない・使いづらい」という、「とりあえずバリアフリー」の設備や施設が多く生まれたということだ。

日ごろ、街中を車いすで歩いていると、「とりあえずバリアフリー」に出くわすことが多い。例えば、

①普通駐車区画と同じ規格の障害者等用駐車スペース

②奇妙な位置に手すりが設置された多機能トイレ

③踊り場がないスロープ

④点字ブロックの上に敷かれたマット

などだ。

車いすマークが描かれているだけの障害者等用駐車スペースになっている。普通駐車区画と同じ規格(幅2.5メートル)で、傾斜もあり、平坦ではない場所に設置されている。

左右の手すりの高さが合っていないため、体を支持するのが難しい。L字手すりの設置位置が便器から遠く、縦部分(立ち上がる時に体を支える為に必要)に届かない。同じく手洗い器も便座に座ったままの状態では、使用できない。

スロープを上りきった頂点部分に踊り場がない為、扉が開くまでブレーキをかけたまま待っていなくてはならない。

点字ブロックの上にマットを敷いているため、誘導ブロックと警告ブロックの認識が途切れてしまっている。

障害者をビジネスパートナーに

障害当事者の目線で設計、施工、運用がされていれば、上記のような事案は発生しないはず。単に法令にのっとって整備すればいいというものではなく、なぜその設備が必要なのか、どのように利用するのかをイメージして作ることが求められている。つまり、バリアフリーには「ビジョン」が必要不可欠なのだ。

では、どうすればいいのか。一番の近道は、障害当事者をビジネスパートナーにすることだろう。当事者が何に不安を感じ、何に不便さを感じるのかが分かれば、「とりあえず」という考え方はなくなり、無駄な投資に終わらず、本当にアクセシブルな設備と施設を作れるはずだ。

バリアフリー化はビジネス的にも賢い選択

しかし同時に、そのためには障害当事者自身がもっと学び、もっと成長しなくてはならないと、僕は強く思う。ダメ出しをするだけなら誰でもできるが、ほかの良い事例を参考にしながら、具体的な方法を提案し、そのバリアフリー化によって得られるベネフィットを、事業者側に分かりやすくイメージさせなくてはならない。

「社会的に良いことだから」では継続性もないし、ネガティブな発想で終わってしまう。バリアフリー化は、新たな客層の獲得などに繋がると知ってもらい、「ビジネス上賢い選択だから」とポジティブに取り組んでもらうための土台づくりを、僕たち障害者側がやるべきだ。

障害当事者目線の活用を推進し、誰もが笑顔で外出できる社会の実現に向けて

車いす目線で考える 第1回「"Thank you"と"Excuse me"」はこちら

大塚訓平(アクセシブル・ラボ代表理事)

1980年、栃木県宇都宮市生まれ。2006年、不動産会社オーリアル創業。2009年に不慮の事故で脊髄を損傷。車いすで生活を送るようになったことで、障害者の住環境整備にも注力するように。2013年には、外出環境整備事業に取り組むNPO法人アクセシブル・ラボを設立。健常者と障害者のどちらも経験している立場から、会社ではハード面、NPOではソフト面のバリアフリーコンサルティング事業を展開中。

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