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批評家の宇野常寛(うの・つねひろ)がプロデュースする「宇野書店」が、2025年8月1日(金)に大塚で開業する。オンライン書店では得られない、「たまたま」目に飛び込んできた本との新しい出合いを促すような選書が施されている。「いつ来ても、知らなかった〈面白そうな本に出会える〉」書店がコンセプトだ。
選書は、全て宇野が行った。当初は1万冊ほどをピックアップしていたが、すでに流通していない書籍も多数あり、6000冊に絞り込んだ。とはいえ、一人で選書するには膨大な冊数であり、「もう二度とやりたくない」と思ったほどだという。
選書するうえで外せなかった岩波文庫や中公新書などのオーソドックスなものから、吉本隆明全集をはじめ人文・社会科学の書籍を中心に、街づくり関連本、品切れが多く集めるのに苦労したというアニメなどのカルチャー関連本まで、特定ジャンルの本のみが並ぶ。

本の販売を主眼に多様な趣向を持つ客に合わせて満遍なくセレクトしたものではなく、宇野の審美眼にかなった書籍群であり、街の本屋ではお目にかかれない本も多い。岩波少年文庫も集められるものは、全て揃えた。

今後も書籍は、入れ替えを行っていくという。まるで宇野の書斎をのぞくように、批評家を形作ってきた書籍をゆっくりと見ているだけでも楽しい体験になるだろう。

宇野とともに宇野書店を手がけるのは、新しい形のデベロッパーを自負する東邦レオ。書店が位置するのは同社東京支社の2階だ。昨今話題に上がる「独立系書店」と比較すると、やや大きめな150平方メートルのフロアには、人工芝が広がる。

来店者は、靴を脱いで書店に入るというのもなかなかないスタイル。椅子とテーブルが置かれ、くつろぎながら読書したり、ワークスペースとして作業したりできる。スタッフは常駐しない無人書店であり、会計はセルフレジと、自由で開かれた書店空間になっている。今後トークショーや古本市などのイベントも、続々と開催される予定だ。

東邦レオは、コミュニティづくりやパブリック空間の活性化にも取り組んできた。宇野書店は商業施設の枠を超えて、地域の人々が集い、新たな知識や視点に触れられる公共空間として機能させたいという思いがある。本の販売による利益追求を第一の目的とせず、書店の存在を通してオフィスビルの価値向上、ひいては街全体の魅力向上を目指している。
宇野もまた本屋を公共機関的な空間ととらえ、街の本屋が消えていく中、書店の新しいモデルをつくることで、 状況に一石を投じたいと考えている。

ユニクロやLINEなど、充実した社内図書館を持つオフィスもあるが、宇野書店は誰でも入れる開かれた書店という形を取る。オフィスと組み合わせ、いかに持続可能な書店を築いていけるのか。批評家が手がける本屋に注目が集まる。
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