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画像提供:INSECTS
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大阪、独立書店5選

アートから韓国文学、リトルプレスまで新たな出合いを求めて

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昔からある街の書店が消えていくニュースは、大阪をはじめ各地から聞こえてくる。他方、チェーン店ではない独立書店が生まれ、工夫を凝らしながら「書店」という文化を守るべく奮闘している。

従来と異なるのは、古本と新刊のほかリトルプレスや同人誌を扱ったり、独自の視点で新刊を取り寄せたりして、棚が個性的であること。ギャラリーやカフェを併設してイベントを行い、古民家を改装するなど空間演出にも長けた店もある。また、「ボヤージュ キッズ」のようにZINE(ジン)を販売するスポットが増えているのも、書店の新たな形といえる。

ここでは、大阪の独立書店を5店紹介する。書店は、未知なる世界へ開けたワンダーランドだ。アートに小説、ノンフィクション、絵本など、新たな出合いを楽しんでほしい。

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国立国際美術館」や「大阪中之島美術館」があり、大阪のホットなアートエリアとして知られる中之島。アート系の書籍を中心に取り扱う「カロ ブックショップ アンド カフェ(Calo Bookshop and Cafe)」は、中之島にほど近い肥後橋に店を構えている。

芸術書の出版やアートスクール勤務などの経験を持つ店主によって、2004年にオープン。周りの喧騒(けんそう)とはうって変わり、階段を上がった先にある店内は落ち着いた雰囲気だ。

まず左手にカフェの注文カウンター、右手にはギャラリースペースがあり、本はそれらを超えた先に並んでいる。扱うアイテムは展覧会の図録や写真集だけでなく、リトルプレスやZINE、洋書、映像や音楽作品など、幅広い。

ギャラリースペースでは、関西のアーティストを中心にした展示のほか、「インドネシア・インディープレス・ブックフェア」など、目に触れる機会の少ない海外の書籍を紹介するイベントも開催している。

窓辺のカウンター席では、購入した本とともにゆっくり紅茶を飲んだり、ホームメイドの焼き菓子やチキンカレー(900円、税込み)などカフェメニューを楽しんだりもできる。美術館へ行った帰りに「もう少しアートな気分に浸っていたいな」と感じたら、ぜひ訪れてほしい。

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大阪市内でも古い住宅が立ち並ぶ町、田辺。そんなエリアには、良い飲み屋や食事処のほかに、新しい書店が近年できている。その一つが築90年を越える民家を改築し、古本をメインに、新刊も少し取り扱う書店「LVDB BOOKS」だ。

日本人アーティストの写真集、デザイン書、ビジュアルブックの充実ぶりもさることながら、欧米、アジアのアーティストによる作品集なども豊富に取りそろえている。特に台湾の写真家たちを紹介する出版社「Voices of Photography」との親交は深く、彼らの写真展なども開催してきた。

絵本、料理書、人文などの書籍に加えて、店主がえりすぐったZINEやリトルプレスも豊富。さらに詩集、超個人的な趣味性の高いもの、ほかにも音楽家が自ら作った音を入れた携帯型デジタル音楽プレーヤーとその解説書を同封したものなど、とにかくさまざまなものがある。8000以上はあるという商品が並ぶ棚は、眺めているだけでも、楽しくて時間を忘れてしまう。

関西出身の写真家である中村寛史の展示、最近さらに注目度が高まっている落語家の桂二葉の寄席など、不定期ではあるがイベントも積極的に開催。まさに「アグレッシブな書店」という表現がぴったりの店だといえる。店主の社会問題や政治に対する「アティチュード」が大いに店に反映されている点も魅力だ。

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ビルの2階に約16.5平方メートルという小さな空間に広がる「toi=問い」の世界では、「生きるということ」や「考えるを考える」「仕事って何だろう」など、独自の切り口で分けられた棚に書籍が並んでいる。

「トイブックス(toi books)」がオープンしたのは、2019年4月。店主は「斜陽産業」といわれる書店業界の良いニュースになればという思いから開業した。コンセプトは「良い本は答えだけではなく、新たな問いを与えてくれる」だ。

メインは小説や詩、短歌などの文芸書で、充実した品揃えが魅力。近年注目を集めている韓国文学やフェミニズムに関する本も丁寧にフォローしている。写真集や絵本など、目で見て楽しめるアイテムもある。狭いがゆえ、本の並びはどこを向いても「濃く」、幾度も手が伸びてしまう。落ち着いた雰囲気も相まって、長居してしまうこともあるだろう。

この店の小さな楽しみは、本を購入した際にもらえる「しおり」。おすすめの小説についての紹介文がみっちり載ったデザインで、読む手を止め本にはさむしおりが新たな本との出合うきっかけになるという演出は粋である。同様のデザインが施されたクリアファイル(A5サイズ、400円、税込み)もあるので、本好きの人への大阪土産にもいいだろう。

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2025年「大阪・関西万博」の開催地・夢洲を有する此花(このはな)区。昭和の下町風景が広がるのんびりとした地域だが、実はアート関連のヴェニューが増え、じわじわと注目を集めている。

その中でも必ず足を運ぶべきなのが、書店「シカク」だ。住宅地に現れる白い扉をゴロゴロと引き開ければ、そこには「普通の書店」では絶対に出合えない作品たちがズラリ。まるで一冊一冊が「読んでくれ!」と話しかけてくるような、アイデアと情熱にあふれたインディペンデント出版物が並ぶ。

例えば、日本の古い町並みを撮影した写真がたっぷり収められた「昭和街道」シリーズや、街中の看板などからユニークな形の文字を集めた「まちの文字図鑑」シリーズなどをパラパラとめくってみよう。きっと心が躍るはずだ。

さらに注目すべきはシカク出版。つまり、この書店は出版機能も備えているのだ。これまでの刊行物には、酒の楽しみ方を探求する酩酊対話集「酒の穴」や、多様な形で見ていて楽しい団地の給水塔を集めた「団地の給水塔大図鑑」などがある。

これらの作品との「逢い引き」を楽しむことができるのも、店主である竹重みゆきのたゆまぬ「ディグ(発掘)」があってこそ。同人イベントはもちろん、SNS上で気になった作家には自らアタックするという。

レジ周りを彩るキッチュなステッカーやピンバッジなどにも「胸キュン」してしまうこと間違いなし。誰かの熱烈な「好き」と商業的でない「緩さ」に触れ、心が充電されていくのを感じられるはずだ。

大晦日と元旦は休み。そのほか不定期の休みもあるので、訪れる際は店のInstagramをチェックしよう。

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大阪市内有数のビジネス街の外れにある東横堀川。周辺には近年、個性的な店が集まるようになった。まだそれほど店がなかった頃からあるのが、この書店。しかし中に入ると、茶やカレーを楽しむ人の姿を見て、一瞬頭に「?」が浮かぶかもしれない。じつは1階はカフェで、書店は表からは見えない、奥の階段を降りた地下にあるのだ。

秘密基地のような空間に所狭しと並べられているのは、文学にマンガ、エッセイに雑誌とあらゆるジャンルの本。元々は店名の通り古本をメインとしたお店だったが、近年は新刊の取り扱いに力を入れている。

「フリーマーケットやリサイクルショップが好き。ある人にとってのごみが、ある人にとっては宝になる。価値が一変するのがおもしろい」と語る店主。店内にはCDやTシャツ、服飾雑貨や文具なども置かれていて、宝探しをしているような気分になる。

2021年12月には、隣に絵本専門店「子どもの本屋ぽてと」をオープンした。保育園や幼稚園で読まれているような定番ものから、児童書まで幅広く取り扱う。鋭いセンスで選ばれた絵本自体もさることながら、絵本の歴史や作家同士の影響がわかる本棚作りも興味深い。

大阪をアートで巡るなら……

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大阪のホットなアートエリアとして知られる中之島や、アートの街・北加賀屋エリアなどには、個性あふれるギャラリーやアートブックを扱うショップ&カフェ、倉庫跡地の大型アートスペースなどが多数ある。そんな想像力が刺激されるギャラリーを厳選して紹介しよう。街歩きの参考にしてみては。

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旅行に欠かせない現地のアート情報。ここでは、一度は行くべき大阪のミュージアムを厳選して紹介したい。

一度見たら忘れられない外観の「国立国際美術館」や、建築家の安藤忠雄が設計を手がけた文化施設「VS.(ヴイエス)」遊べて学べる体験型施設の「ダスキンミュージアム」など、定番の大型美術館から、さまざまな専門のミュージアム、新たなアートスポットまで、多彩なミュージアムをセレクト。大阪旅行の参考にしてほしい。 

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