『Tokyo Trans March 2021』
Photo: Mitsui Yoshida

日本初開催のトランスジェンダーマーチ、約400人が参加へ

11月20日『トランスジェンダー追悼の日』を終えて

編集:
Time Out Tokyo Editors
テキスト:
Mitsui Yoshida
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2021年11月20日、トランスジェンダーの人権とプライドを訴える『Tokyo Trans March 2021』が新宿で行われた。トランスマーチの開催は、日本で初の試みだ。主催したTRANSGENDER JAPAN(TGJP)によると、参加人数は当初50人ほどの想定だったが、結果として約400人の参加者が集まったという。

LGBTQ+のプライドを掲げるパレードは『東京レインボープライドをはじめ、全国各地でも開催されているが、中でもトランスジェンダーは世界的にもヘイトの対象とされやすく、判明している数だけでも毎年多くの人々が殺害されている。日本でもインターネットを中心に、トランスジェンダーへの差別的な発言が多く見られ、偏見が根強く残るのが現状だ。11月20日は、そんな望まぬ形で命を失った多くのトランスジェンダーを忘れないために制定された『トランスジェンダー追悼の日』である。

開催を前に主催団体TGJP共同代表の浅沼智也は、日本初となるトランスマーチを行う意義を「トランスマーチをすることで、トランスジェンダーはどの街にも住んでいると伝えたい。私たちの存在を否定させないために行う」と話してくれた。

『Tokyo Trans March 2021』
Photo: Mitsui Yoshida

当日、マーチの出発前には参加者のリレースピーチが行われた。ジェンダー、セクシャリティー史研究者の三橋順子や、トランスジェンダーの労働問題について相談支援などを行う労働組合、プレカリアートユニオン執行委員長の清水直子、男性や女性というジェンダーに当てはめない性自認を持つ「X(エックス)ジェンダー」当事者の自助サークルであるラベルX(エックス)代表の藤原和希など7人がマイクを取り、参加への思いを語った。

『Tokyo Trans March 2021』
Photo: Mitsui Yoshida

新宿中央公園からスタートし、新宿西口から大ガードを抜け、靖国通りから新宿二丁目まで練り歩く。マーチには当事者だけではなく、アライ(ally=「仲間」や「同盟」を語源とし、セクシュアルマイノリティー当事者を支援する人々を指す)の姿も多く、多様性に富んだ人々が参加していた。マーチを盛り上げようと仮装をして参加した人は「こんなに人が集まると思っていなかった」と興奮気味にコメント。

東京レインボープライド(TRP)も歩いたことがあるという参加者は、「沿道の人との距離の近さを感じた。特に歌舞伎町の前を通った時は、知らない人たちが良くも悪くも興味を持ってくれ、TRPとは違う緊張感があった」と、初開催の手応えを口にした。

『Tokyo Trans March 2021』
Photo: Mitsui Yoshida

主催団体TGJPの共同代表の畑野とまとは1990年代から、浅沼はドキュメンタリー映画『I Am Here -私たちはともに生きている-』を制作するなどして、それぞれトランスジェンダーの啓発活動を続けてきた当事者たちだ。

行進を終えた浅沼は、参加者たちに「今日まで生き延びてくれてありがとう。来年も生き延びて、また会いましょう」と語りかけた。歩きながら、自死を選んだトランスジェンダーの友人たちを思い出し、「トランスフラッグを手に歩く姿を見ていたら、死を選ばなかったかもしれない」と、目を潤ませながら悔しさを語った。

『Tokyo Trans March 2021』
Photo: Mitsui Yoshida

日々の暮らしを懸命に生き抜く、当事者たちの姿が垣間見える場面もあった。浅沼の元へ駆け寄り、心の内を打ち明けた女性がいた。「手術をして戸籍を変えても、トランスジェンダーだと職場に伝えたことで、仕事をクビになったりもした。私も生き延びて、今日この場に来れてよかった」と声を震わせていた。

主催団体のTGJPが告知を始めたのは、およそ1カ月前。マーチの最後尾が見つけられないほど、短い期間で約数多くの人が集まったことに驚きを覚えると同時に、そんな人々の姿から「トランスジェンダーは一人じゃない」という、温かく印象的な強い熱量を受け取った。

(2021年11月22日更新)

Tokyo Trans March 2021』の詳細はこちら

テキスト:吉田ミツイ

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