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テキスト:Aya Ueno(フードライター)
広尾駅から徒歩2分。西麻布の住民やメキシカンファンに親しまれた「トウキョウ タコス チャチャチャ(Tokyo Tacos ChaChaCha)」が、タコスの激戦区ともいわれる東京・広尾にリニューアルオープンした。大通りから一本外れた小道に位置するが、黄色や青を基調としたポップな配色と、ビルの外壁に掲げられた大きな旗が目印となり、思わず足を止めてしまう存在感を放つ。

シェフの池田克巳は、イタリアンやフレンチのレストランで12年以上腕を磨いた料理人。独立後にタコスに興味を持ち、メキシコへの渡航経験のない中で、国内で出合ったメキシコ人の主婦から学んだ家庭の味やレストランで培った知見から、独自のレシピを構築した。
時にパン作りのようにトルティーヤを練り、時に日本の調味料で「東京らしさ」をプラスする。「カルニータスは、コンフィのように仕込むとしっとりしておいしいですよ。みりんやショウガを使うと、どこか親しみのある味になるんです」と池田は語る。

まずは、同店の主役であるタコスを食べてみる。ランチには、タコスが2種盛り、3種盛りから選べるランチセット(2,200円、以下全て税込み)を勧めたい。
ほどなくして、大きなワンプレートにクラッシックなシーザーサラダを添えた3種のタコスが、日替わりスープとともに運ばれる。3色のトルティーヤにカラフルな具材があふれんばかりに包まれたその姿に、まずは目を奪われた。何枚食べても腹にたまらないイメージのあるタコスだが、満腹で帰ってもらおうという池田の思いが詰まっている。

オーダーしたのは、8種の野菜とキノコにソイミートを合わせた完全ビーガン仕様の「チリコンカン」と、八角が香るしっとりとしたジューシーなポークに、伝統的なランチェラソースをパイナップルとチリで味付けした「ポークカルニータス」。そして同店のタコスメニューで最初に生まれたという、タラの切り身を使った「フライドフィッシュ」の3種類だ。

一口食べた瞬間、「東京タコス」というコンセプトがふに落ちる。イタリアンや和食の技法も自在に取り入れた素材の味もさることながら、特筆すべきは、メニューに合わせて使い分けられた自家製サルサだろう。
しっかりとしたインパクトを持ちつつも、主役であるトルティーヤの香ばしさと具材のうまみを、そっと後ろから支えるような存在感がある。例えば、「フライドフィッシュ」に使用しているのは、トマトベースのメヒカーナソースとサワークリーム。さらに、フライの下にはすりつぶしたオイスターとマヨネーズが敷かれている。
天ぷらの要領で、パン粉を使用せずに薄い衣で揚げたしっとり肉厚なタラと、香ばしく優しい味わいを持つ自家製トルティーヤの一体感の秘密は、このサルサあってこそだろう。よりスパイシーさが欲しいときは、池田が国内外からセレクトした10種類以上のチリソースで好みの辛さや「味変」を楽しんでほしい。

また、「フムスと広尾BRODさんのパン」(900円)もチェックしておきたい。自家製フムスに、同じく広尾にある北欧ベーカリー「ブロッド(BRØD)」のみずみずしいサワードウを合わせて食べる、何とも贅沢なコンビネーションだ。ボイルしたひよこ豆は薄皮をむき、ゴマは国産の練りゴマを使用することで、苦みやえぐみのないまろやかな食感に仕上がっている。ガーリックがきいた、一度食べると止まらない味わいだ。

「タコスショップ」というだけあり、リキュールで楽しむオリジナルカクテルや、ナチュラルワイン、クラフトビールといったビバレッジも充実。食後の余韻まで楽しい。

メキシコ人もうなる、「東京タコス」という新しい形。ソースの奥深さ、食文化を交差させた食の楽しさを改めて感じさせてくれる、ここだけの一皿をぜひ堪能してみては。
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