四つ葉のクローバーをかたどったモチーフをアイコンとし、最高品質の素材と時代に左右されないエレガントなデザインで今なお人気を博すジュエリーメゾン「ヴァン クリーフ&アーペル」。その輝き続けるジュエリーとともにメゾンの歩みをたどる展覧会「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル —— ハイジュエリーが語るアール・デコ」が「東京都庭園美術館」で開催されている。
同ブランドとアール・デコは切っても切り離せない。今から100年前の1925年にフランス・パリで「アール・デコ博覧会」こと「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」が開催された。その時宝飾部門のグランプリを受賞したのが、アルフレッド・ヴァン・クリーフ(Alfred Van Cleef)と妻のエステル・アーペル(Estelle Arpels)が設立したハイジュエリー メゾン「ヴァン クリーフ&アーペル」だった。
約100年前とは思えない洗練されたデザイン
会場となる東京都庭園美術館では、ヴァン クリーフ&アーペルがアール・デコ最盛期に生み出した大胆なデザインのジュエリーや時計、工芸品が堪能できるほか、1930年代後半以降に熟練の職人によって制作された、花や生き物から着想を得た遊び心あふれるジュエリーも並び、これまでのブランドの歩みを余すところなく体感できる見応えある展示となっている。約250点におよぶメゾンのアイテムが集結する同展では、現代にも鮮やかなインスピレーションを与えてくれる洗練されたデザインの数々に心が躍るだろう。
宮内省内匠寮の技師・権藤要吉が基本設計を担当した同館は、アール・デコ最盛期のパリに滞在し、そのデザインに魅了された朝香宮夫婦の邸宅として1933年に竣工した。外観から内装の細部に至るまでアール・デコ様式で統一され、夫妻の好みと当時の美意識が凝縮された唯一無二の建築である。
建物には、アンティーク好きのファンも多いガラス工芸家のルネ・ラリック(René Lalique)によるガラスレリーフ扉やシャンデリアをはじめ、室内装飾家のアンリ・ラパン(Henri Rapin)や鉄工芸家のレイモン・シュブ(Raymond Subes)など数多くの職人による技が随所に施されている。まるで当時のアール・デコ博覧会会場がそのまま移ってきたかのようだ。
さらに、「大食堂」や「書斎」など各部屋の用途に応じて、壁やカーテンの色柄から家具や照明のデザインまで、細部にわたりデザインが工夫されているのも特徴の一つ。部屋の細部まで鑑賞してほしい。
淡いグレーの壁に薄ピンクのカーペットが敷かれた落ち着いた雰囲気の「妃殿下寝室」では、ダイヤモンドやプラチナがあしらわれた地にサファイアやエメラルド、ルビーがアクセントになったジュエリーが控えめにきらめく。小ぶりながらも印象的で、デザインの力強さが感じられるだろう。
メゾンの世界観と建築が調和することで、より一層ジュエリーの魅力が際立つ。室内の趣とジュエリーが響き合い、空間そのものが楽しめる贅沢な展覧会となっている。
会期は、2025年9月27日から2026年1月18日(日)まで。なお、同展は日時指定予約制となっているので、訪れる際は公式ウェブサイトでの予約を忘れずに。アール・デコの時代の空気感を丸ごと箱詰めした同展で、優雅な気分に浸ってみては。
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