Punk! The Revolution of Everyday Life
画像提供: Punk! The Revolution of Everyday Life

貧困、階級、女性、性的マイノリティーの解放―パンクと社会の関係性を考える

上野・藝大美術館陳列館で「Punk! The Revolution of Everyday Life」展が開催

Hisato Hayashi
Honoka Yamasaki
編集:
Hisato Hayashi
テキスト:
Honoka Yamasaki
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2021年から国内6カ所を巡回してきた「Punk! The Revolution of Everyday Life」展が、2023年4月28日(金)〜5月9日(火)、東京藝術大学の毛利嘉孝研究室の主催、倉敷芸術科学大学の川上幸之介研究室の企画により「東京藝術大学大学美術館 陳列館」で開催される。

Punk! The Revolution of Everyday Life
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「パンク」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。多くの人は騒がしい音楽、派手なファッション、暴れる観客といったイメージを持つかもしれない。しかし、パンクの原点をたどると、単にそのようなイメージではない側面が分かる。

パンクは一般的にはアメリカのガレージ・ロック・シーンから生まれ、イギリスのバンド、セックス・ピストルズやザ・クラッシュ、ダムドなどの登場をきっかけに広まった、反権威的で社会への批評性を持った音楽だとされている。この「批評性」は、現在では貧困、階級、戦争、女性、人種、性的マイノリティーの解放へと用いられることが多い。

Punk! The Revolution of Everyday Life
画像提供: Punk! The Revolution of Everyday Life

パンク・ロックと現代アートの研究者であり、本展のキュレーターでもある川上幸之介は、本展で取り上げている「橋の下世界音楽祭」を紹介してくれた。

橋の下世界音楽祭は、バンドのTURTLE ISLAND(タートルアイランド)のメンバーである永山愛樹が主催し、2011年の東北大震災をきっかけに「自分たちの暮らしをどうしていくか、みんなで考える場」として生まれた。アジアの近隣諸国からゲストアーティストを招き、「自分たちの住む土地の文化、生活の在り方を見つめ直すような大衆芸術音楽祭」として投げ銭(*)で成立している。

*2022年は新型コロナウイルスの影響によりやむなく入場料を設定した

この祭典は単なるライブではなく、障がい者にしか演じられない身体表現を追究するパフォーマンスグループ「劇団態変」を招いた演劇や、野生の動物の解体方法、鍛治、子どものための広場づくりなど、現代社会において失われつつある文化のワークショップも展開されている。

会場はその名の通り、橋の下だ。出展者は自前で電気を用意し、建物はほとんどが廃材で作られている。参加すると「合理化と経済至上主義、大量消費型の使い捨てが主流」という社会への再考が促され、この社会に対して「生きにくい」と感じていた自分を責めるのでなく、他の生き方や考え方を持ってもいいのだと肯定的な考えを与えてくれる。

Punk! The Revolution of Everyday Life
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川上がパンクに出合ったのは、ザ・ブルーハーツを聞いた小学生時代。イギリスのパンクとアートの魅力に引かれ留学した。そして、現在まで聴いているパンクについて調べることで、パンクが「個」を支えているだけでなく、社会的に弱い立場に置かれた少数の人々を解放し、より良い未来に向けた手立てとなっていることを知る。

さらに、今の世の中が求める「誰一人取り残さない社会」とは何か、それをどのように擁護し得るか、などの問いに対するヒントが与えられていることを知ったという。

Punk! The Revolution of Everyday Life
画像提供: Punk! The Revolution of Everyday Life

本展では、パンクがこれまでに取り組んできた社会問題に対する実践と批評とは何か、現代に生きる人々の日常生活にどのような影響を与えているのかといった、パンクと日常生活、そして社会との関係性について迫る。会期中には、トークイベント「アジアのパンクシーン」「DIYとパンク」も開催。さらにパンクの奥底を知ることができるだろう。

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