ゲリラ・ガールズ展
画像提供:ゲリラ・ガールズ展

ジェンダーギャップに抗議せよ、匿名集団「ゲリラ・ガールズ展」が開催

国際女性デーに向け、ゴリラマスクを被ったアクティビストたちの作品が渋谷パルコに

編集:
Hisato Hayashi
テキスト:
Honoka Yamasaki
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1985年、ニューヨークで結成されたゴリラのマスクを被る匿名のアクティビスト集団、ゲリラ・ガールズが、2023年3月3日(金)〜3月12日(日)の期間、国際女性デーに合わせて「渋谷パルコ」で「ゲリラ・ガールズ展」を開催。

インパクトのあるヴィジュアルで「Reinventing the "F" word: feminism!」(「F」ワードの再解釈:フェミニズム!)をモットーに、アート界のジェンダーギャップの問題へ皮肉とユーモアを織り交ぜて暴き出す。彼女たちによる独自の調査や統計、批評をもとにした作品を通し、ジェンダー格差が拡大する日本に息を吹き込む展示だ。本展では表現の現場調査団による統計資料も加わる。

ゲリラ・ガールズ展
画像提供:ゲリラ・ガールズ展

ハラスメント被害から社会の仕組みに問いかける

主催のセレクトブティックショップ「Sister」(シスター)は、2019年より国際女性デーに合わせてイベントを企画している。その背景は、Sisterのオーナーである長尾悠美も過去にハラスメントを経験し、社会の仕組みに疑問を抱き始めたことにある。

当時、ハラスメント被害を周囲に相談するものの「よくあること」「仕方ないこと」としてとらえられてしまい、日本の女性が置かれる立場というものを痛感したという。一方で海外の友人に相談すると、「具体的にどのようにアクションを取るべきか」など直接的な解決策について返答があったことを振り返った。

いまだにジェンダー格差の大きい日本--。2022年に世界経済フォーラムが算出したジェンダーギャップ指数のスコアをみると、日本は146カ国中116位だ。具体的な数字からも、日本社会の水面下にはジェンダー格差の問題が隠れていることがわかる。

このような中、Sisterは過去にドイツ発マガジン「TISSUE MAGAZINE」や、フェミニストのための出版社「エトセトラブックス」(グッズ提供)、メキシコのフェミニストアーティストのモニカ・メイヤーなど、国内外を問わずさまざまなアーティストと一緒に企画を行ってきた。

ゲリラ・ガールズ展
画像提供:ゲリラ・ガールズ展

新たな価値観を取り入れて、議論が生まれる可能性を

本展は倉敷芸術科学大学の川上幸之介研究室による全面協力のもと、ゲリラ・ガールズとのコラボレーションが実現した。准教授を務める川上は、2020年にゲリラ・ガールズの個展を主催した背景があり、アートを通してジェンダーの問題やフェミニズム以外にも、様々な社会問題について再考を促している。

コロナ禍から徐々に通常の生活を取り戻しつつある世の中で、ウクライナ侵攻が始まった現在、川上は、災害・人災の中で最も苦境に立たされるのは子供、女性、障がい者、高齢者、貧困層、移民といった社会的弱者といわれる人たちであることを指摘。また「問題について入りやすくするためには、視覚的にインパクトを持ち、ユニークな表現としてのアートが必要」と回答し、日本の現状について以下のコメントを寄せた。

「例えばジェンダーギャップ指数を参照すると、日本はずっと低い水準の数字のままです。この問題は一見、『女性という当事者だけの問題』だととらえられたり、『フェミニズム』という運動自体も日本では『反男性的な活動』だと思われがちです。しかし、男性も家父長主義(一家の長である男性が支配権を持つ家族制度から、このような原理に基づく社会の支配形態)的な考えによって、無自覚にしろ自覚的にしろ苦しめられている側面があります。

私たちは、この社会の中で偏差値の高い学校に入り、有名企業に就職すること、お金持ちになることこそが成功であり、目指すべきものだと教えこまれています。言い換えれば、自分の存在を『どのくらい他人を支配できるのか』といった基軸の価値観で判断させられているのです。

それが『男らしさ』と結びつけられ、女性もそのような男性への従属が『女性らしさ』だとして求めれがちです。このような社会では、本来持っている『自分らしさ』の打ち消しを強いられることになってしまいます」(川上)

ゲリラ・ガールズ展
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ゲリラ・ガールズ展
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展示会場では、Sisterとゲリラ・ガールズのコラボレーションアイテムも販売を予定。Sisterオーナーの長尾は、セレクトショップとして洋服という身近なアイテムをシェアすることで、ジェンダー問題を気軽に知るきっかけになったらうれしいと語った。売り上げの一部は、ゲリラ・ガールズの活動費として寄付、そしてジェンダー関連書籍を図書館へ寄贈される。

ゲリラ・ガールズ展
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また、2023年3月4日(土)には、「ヒューマントラストシネマ渋谷」でアメリカのフェミニスト、アーティストであるマーサ・ロスラー(Martha Rosler)が、雑誌「VOGUE」を読む姿を介してジェンダーの問題提起をする作品の上映会と、東京大学教授でフェミニズム、クィア理論を専門とする清水晶子の特別講演会「『フェミニズムってなんですか?』+上映『マーサ・ロスラーVOGUEを読む』」(翻訳 浜崎史菜)が開催される。

全ての人が当事者という意識を持ち、今年の国際女性デーはジェンダーについて考えよう。

Sisterによる過去の国際女性デー企画

2019年 Sister×TISSUE Magazine
2020年 「渋谷PARCO」「RBG 最強の85才」上映企画
2021年 「代官山蔦屋書店」エトセトラブックスのグッズ販売
2022年 Sister×モニカ・メイヤー

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