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日本が世界に誇るサブカル、「ガチャガチャ展」に行ってきた

上陸60周年!ユニークなカプセルトイが丸の内に集結

Mari Hiratsuka
Rikimaru Yamatsuka
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Mari Hiratsuka
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Rikimaru Yamatsuka
ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima | 「ギャルが折った折り鶴」
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現在、「丸ビル」で開催中の「60周年記念~ガチャガチャ展~」に行ってきた。「一体何が60周年記念なんだ?」と突っ込んでくる人もいるだろうが、ガチャガチャが輸入されて60年なのである。

ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima展示の様子

そう、あのハンドルをガチャガチャ回すと、透明なボール型ケースがコロンと出てくるアレ、あのマシーンがアメリカから日本へ輸入されたのが1965年で、すなわち2025年で60年なのだ。

そんなメモリアルイヤーを記念して開催する本展は、ガチャガチャの歴史はもちろんのこと、ガチャガチャを制作する各メーカーやクリエーターのブースを設え、ヒット商品を展示するほか、商品開発にまつわるエピソードや没ネタなども一挙公開するというものだ。 

ガチャガチャの歴史をひもとく

展示資料によれば、ルーツは1880年代。ニューヨークの地下鉄に設置されたガムの自動販売機だという。無人販売の幕開けとされるこの自動販売機は、時代とともに次第に形を変え、1930年代にはガラスボールにガムやピーナツを入れたタイプのものが出始め、やがてそれにオモチャを入れて販売するようになった。

これがアメリカのキッズにウケて、泣き喚く子どもを静かにさせることから「シャラップ トイ」とも呼ばれたそーだが、これが元祖である。で、1965年に日本に伝来し、ブームを重ねるごとに独自の進化を遂げ、サブカルチャーとして発展。その結果、今日のガチャガチャシーンがあるワケだ。

カプセルトイの水準を大きく超えたクオリティー

大まかな歴史を把握したところで、早速企業ごとのブースへ向かう。まず目に飛び込んできたのはスタジオソータという玩具メーカーだ。細部の造形までこだわっているというだけあって、そのクオリティーは「これガチャガチャの景品なんだ!」と驚くほどである。

ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshimaスタジオソータのブース
ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima「ねるねるねるね」のガチャ

特に代表作「紡ギ箱」は、サイズにしてもクオリティーにしても、その水準を大きく超えている。不気味ながらどこか悲劇的な感じもする造形はすごいし、ジョイント内蔵によってさまざまなポーズを取れるとか、バックストーリーを紹介するミニブックが付いているとか、マニアの心をくすぐる魅力が満載だ。

ちなみに最大のヒットは『ねるねるねるね』だそうで、60万個売れたというからすごい。

ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima「紡ギ箱」

その手があったか、と思わされるアイデア

続いては、ブシロードクリエイティブ。あらゆるホビーコンテンツを手がけるビッグカンパニー、ブシロードのグループ会社である。先ほどのスタジオソータとは違って、何ともとぼけた味わいのセンスが光る。

「瓦」や「石」「事務的なはんこ」など、「その手があったか」と思わされるようなアイデア商品が多い。没ネタもなかなかクレイジーで、ピスタチオのカラを割るとおじいさんが出てくるという「ピスタチオおじいちゃん」はかなりキている。

ちなみに、オレ的に推したいのは「幼稚園に通うあざらし」シリーズだ。かわいいから。 

ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima「幼稚園に通うあざらし」

それからトイズキャビン。ニッチでマニアックな立体商品を志し、オフィシャルに「好きな人は好き」と標榜するだけあって、トヨタのフォークリフトだとかマツダのロードスターとかラインアップがかなり渋い。「仮設トイレ」まであり、カプセルトイの奥深さを思い知らされる。

ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima「仮設トイレ」

個人的に洒落ていると思ったのは、「ケンエレファント」。同社は書籍レーベルを持ち、湯村輝彦による1980年代『ガロ』の表紙画集なんかを出している会社であるが、全体的なラインアップが裕福なサブカル感というか、趣味のよさを感じる。 

国内生産家具メーカー、カリモクの 1960年代デザインをカプセルトイに落とし込んだ「カリモク60」シリーズの質感表現は素晴らしい。このシリーズは大層ヒットしたそーで、当のカリモク社員も「自分たちの作っている家具はこんなにメジャーな商品なんだ」と感動し、工場のモチベーションが上がったという。いい話である。 

社会性のあるガチャガチャを目指して 

そして、キタンクラブ。その名前は知らずとも「コップのフチ子」といえば伝わるであろう、『サ道』で国民的漫画家となったタナカカツキが手がけたこのシリーズは、なんと累計2000万個を売ったというからすさまじい。ガチャガチャ史に残る超絶大ホームランとなった同シリーズの制作スケッチなども見られるほか、ビッグサイズのフチ子にも会うことができるので、ファンは必見であろう。

ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima「コップのフチ子」

企業ごとのQ&Aコーナーで、今後作りたい商品として「社会性やメッセージ性のあるガチャガチャをやりたい」と答えており、絶滅危惧種や環境問題をテーマに、障害のある方との共創ガチャを構想しているそうで、100いいねという感じである。絶対に支持する。 

問題作「ギャルが折った折り鶴」

個人的に一番面白かったのはブライトリンクである。ネットミームとして大いにバズった「ギャルが折った折り鶴」を手がけたメーカーといえば、分かる人も多いのではないだろうか。

ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima「ギャルが折った折り鶴」

5人のギャルがノリで作った折り鶴を、完全手作業で一つ一つ再現したというエポックメイキングな大傑作であり、付属の二次元コードでギャルの折り鶴制作過程の動画も観られる、というすさまじい凝りようは、もはや伝説といっても過言ではない。筆者がほたえ騒ぎながら興奮していると、メーカーの広報の方がやってきて、いろいろ教えてくれた。

ブライトリンクは社員の8割が20~30代の女性で、マメに会議を開き、面白そーなアイデアはガンガン採用して商品化にこぎ着ける、機動性の高いメーカーらしい。年間で実に180~200点をリリースするそうだが、そのほとんどはワンシーズンで販売を終了する。かなりヤバい世界だと思う。

ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima「ギャルが折った折り鶴」

ちなみに「ギャルが折った折り鶴」について尋ねたところ、はっきりと「赤字」と言っていたのが印象的だった。ミーム化するほどバズったからといってヒットにつながるわけではないのである。つくづく苛烈な業界である。

クリエーティブ論としてもナイス

ブースを見たのち、中央通路にズラリと並べられた各企業の新作ガチャを取材の名目で片っ端から回しまくって楽しんだ。浮世を忘れる程度には楽しかったが、これだけ各メーカーのヒット商品や名作が展示されているのに、ほとんどそれが販売されていないというのは少し物足りないとも思った。

ガチャガチャ展
Photo:Kisa Toyoshima展示の様子

権利とかなんかいろいろ大人の事情もあるのだろーけども。とはいえ、普通にかなり楽しい展示だった。メーカーやデザイナーへのインタビューコーナーは、純粋にクリエーティブ論としてもおもしろいので、新書ばっか読んでるビジネスマンにも強く勧めたい。 

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