ひのはらアート
画像提供:ひのはらアート三塚新司「Slapstick」

「ひのはらアート2022」でしかできない6のこと

秋川渓谷など5会場で全13組の作家が展示、紅葉と現代アートが共演

編集:
Genya Aoki
テキスト:
Runa Akahoshi
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東京都の檜原村にある秋川渓谷流域を中心に、地域回遊型アート展「ひのはらアート2022~生活藝術とむらのよさ」が2022年11月23日(土)まで開催している。

昨年の試験期間を経て、今回が初開催となる。築100年越えの古民家をはじめとする全5カ所の会場で、総勢17人のクリエーターが作品を展示。秋川で育んだ蜂蜜を発酵させた酒や、文化庁メディア芸術祭アート部門大賞を受賞したanno lab(あのラボ)によるテクノロジー作品など、見どころ満載だ。

Runa Akahoshi
Photo: Runa Akahoshiへんぼり会場。秋川渓谷は東京屈指の紅葉スポットでもある

会場の一つである檜原村人里(へんぼり)では住民による植林運動が行われ、スギの代わりに紅葉が植えられており、古民家と紅葉が織り成す美しい景観がアートとともに楽しめる。

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Photo: Runa Akahoshiたちばな屋で提供される「天然ヤマメの塩焼き」

秋川沿いには眺めのいいカフェや地元食材の食事処「たちばな屋」などがあり、自然を満喫できる。東京のアート展示会場とは思えないロケーションだ。

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画像提供:ひのはらアート石塚隆則「Fallen angels」

同芸術祭のコンセプトは「生活藝術とむらのよさ」。一体どのようなことを指しているのかを解説するとともに、同イベントの見どころをダイジェストで紹介しよう。

1. 山郷に溶け込むアートに触れる

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画像提供:ひのはらアートNanaAkua「くさびらたちの森」

昨今、檜原村を含む山間部や離島などで、自然を維持する持続可能な生活様式や地域づくりといった社会育成への取り組みが進んでいる。

「新たなクリエーティブな活動や暮らし方、働き方が生まれ始めています。こういった社会育成とアートの可能性を融合したものを『生活藝術』と呼んでいます」と「ひのはらアート」ディレクターの岡田智博は語る。

アーティストの作品を鑑賞するだけではなく、山郷の原風景や自然と作品の融合体験、ここで過ごす時間こそが同芸術祭の醍醐味(だいごみ)なのだ。

2. 野生のサルを横目に鑑賞する。

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Photo: Runa Akahoshiアーツキャンプひのはら外観

岡田は「現代アートの見立てによって、檜原という土地が持ついろいろな『むらのよさ』という魅力の解像度が上がるようになっているんです」と話す。例えば、展示会場の建物にはサルが入ってくることがしばしばあるという。それほど自然と人の暮らしが近い場所で展示される作品には、都市で観るのとは異なる魅力が宿る。

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画像提供:ひのはらアート中谷健一「グリッジたぬき」

出展アーティストの一人であり、2018年から檜原村に在住している現代美術家の菅谷杏樹は、檜原の「むらのよさ」について以下のように語る。

Photo: Runa Akahoshi
Photo: Runa Akahoshi菅谷と作品「Amborosia・醸」

「自然が多く川がきれいだということは大前提ですが、ここは地形の関係で近代化が遅れたんです。東京なんですけど、そういう空白の時間が独自のものにしています。すぐ近くに先人たちの知恵や、学び取れるものがたくさんあります」

3. 最先端のテクノロジーに圧倒される。

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画像提供:ひのはらアートanno lab x 黒川良一「float」

「樋里コミュニティセンター」に展示されている「第25回文化庁メディア芸術祭アート部門大賞」を受賞した、あのラボ(anno lab)の「float」は、水滴で光を表現するデジタルアート作品。一つ一つの作品が大がかりなので、拠点である九州以外で観られる機会はまれだ。

会場の上部分から放物線を描く水のカーテンに特殊なプロジェクターを使用し、水滴に映像を照射する。暗い空間に現れるダイナミックな光の動きと、それに合わせた音楽演出は圧巻である。

そのほか「アーツキャンプひのはら」では、デジタルアート集団「チームラボ」の作品「生命は生命の力で生きているⅡ」も設置されている。

4. 世界最古の「酒」を味わう。

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画像提供:ひのはらアート菅谷杏樹「Amborosia・醸」

檜原村在住の菅谷は、異種の生き物と人間の関係性について考えながら作品を制作。自らが「種をまいて、育て収穫する」という発想のもと、自然物での表現を模索している。

ひのはらアート
画像提供:ひのはらアート

展示場所は築100年以上の古民家の2階で、昔は実際に養蚕をしていたという。菅谷の作品「Amborosia・醸」は、秋川で育んだミツバチから今年採れた蜂蜜を発酵させた世界最古の「酒」(ミード)を展示したものだ。

会期初日に醸し始めた「酒」(アルコール分1%未満)を、同芸術祭の場開きとして来場者に振る舞う「収穫祭」が12日(土)と13日(日)に行われるという。普段味わうことのできない最古の「酒」を味わってみては。

5. 若手アーティストの作品を発見する。

Runa Akahoshi
Photo: Runa Akahoshi早坂葉「裸足可能域〈檜原村〉」

同芸術祭では、若手の気鋭作家の発表の場にしたいという意図もあり、「山のよさ」に惹かれた作家と山郷の恵みを共有するというテーマでオープンコール(展示公募)を実施。秋田県在住の現役大学生である早坂葉は、はだしで村内の山河を歩き、その到達可能地をグラフィック化するプロジェクト型作品「裸足可能域〈檜原村〉」を「へんぼり会場」で展示している。

新宿ミロード
画像提供:ひのはらアート早坂葉「裸足可能域〈檜原村〉」

5. 秋川渓谷の新たな特産品を手に入れる。

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画像提供:ひのはらアート池城安武のアパレル商品

参加クリエーターたちの作品は、ポップアップストア「ヴィレッジひのはら」で購入できる。ポップな作品で人気の池城安武による檜原の紅葉をモチーフにしたアパレル商品や、工芸作家のナナアクヤが森の仕事で生まれたおがくずをアップサイクルして生み出した「ひのはらの木のねんど」などが販売されている。

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画像提供:ひのはらアートNanaAkua「ひのはらの木のねんど」

この粘土を使い、キノコなどの「森の造型」作りに参加できるワークショップも週末に開催されている。実施日や予約方法は公式ウェブサイトを確認してほしい。

ここでしか体験できないアートを通じて、檜原の「むらのよさ」を発見してみては。

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