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六本木の「トゥーワン トゥーワン デザインサイト(21_21 DESIGN SIGHT)」にプリント工場が出現した。これは、「いいもの」を探究する「ISSEY MIYAKE」から出発したプロジェクト「GOOD GOODS ISSEY MIYAKE」と、前例のないものづくりに取り組むエンジニア集団・nomenaによる企画によるものだ。

GOOD GOODS ISSEY MIYAKEとは、2018年にスタートした、実験的な発想で独自の雑貨開発に取り組むプロジェクト。さまざまな分野の専門的知識を持つメンバーが集まり、曲げわっぱから着想得たバッグなど、主に遊び心あふれるプロダクションを行っている。
同プロジェクトでは、「プリント」という言葉が図柄や印刷を指すだけでなく、痕跡や印を残す行為も含むことに着目。プリントすることと「いいもの」を作ることの両立に至るまでのプロセスを可視化しようという試みだ。

会場に足を踏み入れると、室内全体がビニールで覆われ、まるで展覧会の準備中のよう。中央には、工場を思わせる無機質なアルミフレームの骨組みが剥き出しになった、プリンティングマシーンが鎮座している。
マシーンには、幅約50センチメートルのキャンバス布がロール状でセットされ、ベルトコンベアと同じ仕組みで台の上をゆっくりと移動していく。


台の上には、キャスターやボールチェーンなど、ホームセンターで手に入りそうなランダムなオブジェクトが設置されている。それらがスタンプを押すように上下したり、ワイパーのように左右に動いたりと、あらかじめ決められた動きで布の上をなぞり、特有の痕跡を残す。

このマシーンには、来場者が無作為に介入することもできる。マシーンの横に取り付けられたクレーンゲームのコントローラーのようなレバーを動かすと、オブジェクトを別の位置に移動させたり、色を切り替えれる。そして、時間の経過とともに、痕跡は複雑さを増していく。


未完成品を展示する試み
会場でプリントされた布は、今後、GOOD GOODS ISSEY MIYAKEのプロダクトへと生まれ変わる予定だ。つまり今回の展覧会は、完成品を展示するのではなく、遊び心あふれるプロダクトを提案し続けるGOOD GOODS ISSEY MIYAKEらしい製品が誕生するまでのプロセスを見せる試みなのである。

「いいもの」とは、背景に物語があるもの
ISSEY MIYAKEというブランドの根底にあるのは、人々の感情や生活を豊かにするという姿勢だ。彼らはその姿勢が現れる製品を「いいもの」と呼び、その背景には時間の積み重ねや、プロジェクトに携わった人々の思想がある。
今回のプロジェクトもまた、背景に物語があり、それ自体が「いいもの」を裏付ける価値となっている点で興味深い。



完成品が展示されていないからこそ、議論や想像の余地が残されている同展。マシーンを眺めているうちにさまざまな思考が呼び起こされるだろう。「良い製品」や「良い作品」とは何かを問い直すきっかけにしてほしい。
会期は8月28日(木)まで。なお、マシーンの稼働時間は13〜19時なので、注意が必要だ。
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