コペンハーゲンがリードするサステナブルな5のこと

カーボンニュートラルの実現のための選択肢とは

Sorcha McCrory
テキスト:
Sorcha McCrory
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「コペンハーゲン」というワードは、この10年間で、サステナビリティの代名詞となった感がある。このデンマークの首都名が、同国が誇るプルセ(ホットドッグ)やハンス・クリスチャン・アンデルセンと同じように、世界で注目されているのだ。

しかもこれは単なるトレンドではない。2021年にタイムアウトが実施した都市調査で、コペンハーゲンは世界で最も「持続可能な都市」、そしてヨーロッパでは最も「グリーンな都市」に選ばれているのだ。

人々がこの街にそうしたイメージを持っている理由の一つに、市が2025年までにカーボンニュートラルの実現を公約にしていることが挙げられる。公約実現のため、市は環境に配慮した選択が市民にとって最も簡単な選択になるような取り組みに積極的。例えば、廃棄物発電所と都市型マウンテンスポーツセンターが融合したCopenHill on Amager Bakkeのような大規模施設を建設し、何万もの家庭や企業に「グリーンな」電気を供給している。

しかし、公約達成のための努力しているのは、自治体だけではない。地元の人々によるサポートも目覚ましいものがある。ラディカルな歴史を持つ都市型農業、革新的にソーシャルメディアを利用した超ローカルな循環型経済など、この街に住む偉大な人々はコペンハーゲンを「グリーン」に保つため、さまざまなことに能動的に関与してきた。

ここではコペンハーゲンがリードしている、5つのサステナブルなことと各領域における代表的なプロジェクトを紹介する。ほかの都市が倣うことができるかを考えてみよう。

1. アーバンファーム

The urban farms
Photograph: Anna Svetlova / Shutterstock.com

コペンハーゲンの至る所で見られる、アーバンファーム(都市型農園)。市民の手による緑化の実践、コミュニティーの取り組み支援、生物多様性を促進などの機会を提供している。

Øens Have
アーバンファーム兼レストラン。地元の人々が野菜を育てること、購入すること、共同の食事会で食べることを楽しんでいる。有機農業についての勉強会、ヨガのクラスも開催。

Byhaven2200
ナオルレブロでボランティアが運営しているガーデンプロジェクト。野菜やハーブが植えられた農園にはコミューナルテーブルがあり、コペンハーゲンの季節の恵みを感じることができる。プロジェクトには誰でも参加可能だ。

Havhøst
都市部で栽培されているのは野菜だけではない。Havhøstはコペンハーゲンの港で海藻などの再生可能な作物を栽培している。海藻は海からの栄養分を吸収し、二酸化炭素を蓄える。そして、多くの海洋生物が生息できる場所をを作り出すことでも注目度が高い。

2. グリーンな食材調達アプリ

コペンハーゲンのレストランでは、地元生産者から仕入れた旬の食材を使うのが基本だが、一般消費者が食料品を買う時にもそうしたことが実現できるサービスも充実している。

Blue Lobster
アプリベースのマーケットプレイス。環境への影響が少ない方法で取られた、サステナブルな魚介類を扱う。以前から街のトップシェフたちには利用されていたが、最近「家庭の料理人」たちも、このアプリを通して地元漁業をサポートできるようになった。

GRIM
野菜の定期購入サービス。デンマークのスーパーマーケットが買わないものを地元の生産者から購入し、食品ロスを削減している。形の悪い(でも常においしい)野菜と一緒に、何を作ればいいか分からないシェフのためにレシピが届くのもうれしい。

Birkemosegaard
1906年からバイオダイナミック農法を実践している家族経営の農園。デンマークの先鋭的な有機農法の歴史の好例といえる。新鮮な季節の食材が詰め込まれた『Thursday box』は、多くの家で、パントリーの主役となっている。
 

3. リサイクル+建物

The recycled buildings
Photograph: Irati Ventoso Cenzano / Shutterstock.com

建築業界は世界最大の汚染者の一つとして名高い。世界の二酸化炭素排出量排出量の40%、埋め立て廃棄物の30%は同業界関連のものというデータもある。コペンハーゲンでは革新的な建築会社や建設会社が、汚名返上のための挑戦を始めている。

Lendager Group
循環型社会を志向する建築事務所。現在、デンマーク初となる空き家を利用した住宅地、Resource Rowsを開発中。この住宅地は通常の方法で建設された同等の建築プロジェクトと比較して、二酸化炭素の発生を29%削減するという。

Stykka
デンマークのスタートアップ企業で、「建設業界を(環境問題の)解決方法の一部にする」というミッションを掲げる。手がけるのは、循環型のビルトインインテリア。テクノロジーとデジタルファブリケーションを駆使することで、廃棄物を最小限に抑え、コストを削減し、地元での生産を可能にしている。

Arcgency
造船所跡地であるRefshaleøenに誕生した、CPH Villageの開発を手がけた会社として知られている。同プロジェクトにおいて、同社は輸送用コンテナを再利用して、簡単に分解、移動、再組み立てが可能な学生向け住宅を開発。住宅のライフサイクル全体にスポットライトを当てた。

4. サステナブルファッション

コペンハーゲンには委託販売店からフリーマーケット、アプリまで、循環型ファッションための選択肢が豊富にある。2023年に開催されるコペンハーゲン ファッション・ウィーク(CPHFW)では、参加するブランドへ最低限のサステナビリティを満たすことを求める「サステナビリティ要件」が設けられた。このことで、この街はよりサステナブルファッションのリーダーとしての地位を確立したといえる。

Rewear(Les Deux)
Les Deuxが展開する循環型プラットフォーム。客から買い取った同ブランドの商品を、中古品として販売している。

Trendsales
​​循環型ショッピングのためのアプリの中でも、絶大な人気を誇る。ユーザー数は100万人を超え、毎月の新規出品は25万件。名実ともに、デンマーク最大のオンライン古着マーケットプレイスといえる。

Reshopper
子ども服やおもちゃの中古マーケットプレイス。コペンハーゲンの親たちの交流の場も提供する。

5. 安全かつ景観の良い自転車インフラ

The safe (and scenic) bike infrastructure
Photograph: William Perugini / Shutterstock.com

コペンハーゲンは、世界で最も自転車で移動しやすい都市の一つとしてよく知られている。これは、市が自転車インフラに投資してきた結果だ。2021年完成の「コペンハーゲンルート」のような道が、これからも街中心部の自転車移動のための環境を改善し、自動車の交通量をさらに抑えることに寄与していくだろう。

The Green Path

コペンハーゲン中心部の北側を斜めに貫いている自転車ルート。かつての鉄道線路跡に建設されたもの。ノアブロのレッドスクエアにある特徴的なSuperkilen公園や、Byhaven2200近くのS字カーブといった変化に富んだ風景が楽しめため通勤客だけなく、観光客にも人気がある。

自転車に優しい街のためのデザイン

コペンハーゲンでは自転車専用ルートを離れても、サイクリストは安心して自転車に乗ることができる。そのための重要な要素が「デザイン」だ。例えば住宅街では車線幅を狭くしたり、車道面のテクスチャーに変化を持たせることで、自転車と自動車の道の共有が実現している。

原文はこちら

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