伝説のヨーロッパ横断特急、復活計画が浮上

気候危機の時代に再び注目が集まる

Ed Cunningham
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Ed Cunningham
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最近では、クラフトワークの曲名として知られている「Trans Europe Express(TEE)」だが、かつては豪華でスピーディーな大陸横断旅行の象徴だった。

北はスウェーデンから南はイタリアまで、西はスペインから東はオーストリアまで、TEEの深紅の機関車は、1960年代から70年代にかけてのモダンなヨーロッパのイメージを体現していたのだ。1970年代のピーク時、TEEは31路線、130都市に就航。当時のディーゼル列車は、大陸を横断するほかのどの鉄道サービスよりも速く、豪華なものだった。

TEEは1995年に廃止されたが、最近になって復活の可能性が検討されている。その理由の一つには、現在のヨーロッパの国際列車の旅が断片的で不便だということがある。ドイツのICEやフランスのTGVのような鉄道サービスは、ヨーロッパ大陸のいくつかの都市間を高速で結んではいるが、TEEのように直接的で手間のかからないものはない。

また気候危機の時代である今、飛行機や自動車に代わる高速で安価な交通手段の必要性がこれまで以上に高まり、まさにそれはTEEがもたらすものだと、TEE復活の提唱者たちは主張している。確かに鉄道は、飛行機や自動車に比べてはるかに環境に優しく、よりシンプルな大陸横断旅行を実現するにはぴったりといえる。

ドイツの公式報告書は、2050年までに欧州連合(EU)域内でカーボンニュートラルを達成するためには、TEEの復活が中心となる可能性を提示。現在、EUでの旅客輸送に占める鉄道の割合はわずか8%だが、EUが環境目標を達成するためには、この割合を大幅に増やす必要があるという。

「TEE2.0」の計画は順調に進んでおり、EU加盟国の運輸大臣がTEE創設のための「趣意書」に署名済み。実現すれば、各列車は最低でも3つのEU加盟国を時速160キロメートルで結び、レストラン車両や無料Wi-Fiが完備された編成となる。また、小規模な路線網で夜行列車が運行される計画もある。

​​EUにはハンガリー、チェコ、ポーランドといった旧東欧諸国が含まれているため、TEE2.0は以前よりもはるかに大きな鉄道サービスになる見込みだ。実現には多くの障害がまだあると予想されるが、全て順調に進んだ場合、2025年には「伝説の鉄道サービス」が、バージョンアップし、必要不可欠なものとして復活しているかもしれない。

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