A woman in a kitchen using a Wonderbag to cook
Photograph: Wonderbag / Time Out

南アフリカの女性を救う鍋バッグとは?

気候変動の連鎖的な影響を削減

Sophie Dickinson
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Sophie Dickinson
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気候変動の危機において、その影響を女性が偏って受けているという状況は、もちろん南半球でも見られる。しかし南アフリカの都市、ダーバンでは、行政が地球を救うと同時に、男女間の不平等を解消するソリューションを見つけたようだ。

その要となるのが、『​​Wonderbag(ワンダーバッグ)』。これは熱した鍋を入れておくと、何時間もかけてゆっくりと調理することができるという大きな布製の袋で、いわば電気を必要としない「スロークッカー」。二酸化炭素の排出量を削減し、大量の水の節約につながり、室内の空気汚染を減らす効果があり、まさに「Win-Win-Win」を実現できると、普及が拡大している。南アフリカでは、2020年だけも6万個が出荷されたそうだ。

A woman in a kitchen using a Wonderbag to cook
Photograph: Wonderbag

ワンダーバッグを発明したのは、ダーバンに住むサラ・コリンズ。2008年、彼女は市内で頻繁に起こる停電の最中にこのバッグを思いついたという(なんと、取材中にも停電があった)。その数年後、このバッグが広く普及するきっかけが訪れたのだ。

2011年、ダーバンが自らが残した環境上の遺産を「清算」していた頃、街では​​悲惨ともいえる気候変動会議が開催された。会議の成果について、ある活動家は「機会損失の物語の脚注でしかない」と批判。科学者たちは海面が上昇していくことで沿岸部の都市のインフラが破壊されると警告した。

そこでコリンズは、バッグのアイデアを市に持ちかけた。市はこれを受けてEnviro Champsという、地元の人々へのバッグをただ同然で普及させる計画を発表。その後は、バッグがキッチンにあるといかに有益かを住民に説得する必要があったが、コリンズにとってそれは簡単だった。彼女は「私は環境悪化に目を向けていましたし、その影響を最も受けるのは、一番排出量が少ない人たちであると考えていました」と振り返る。

このバッグは排出ガスや汚染を低減するだけでなく、食事を作るために必要な燃料の制限になる。それにより薪(まき)集めの時間が短縮されることは、社会的にも良いことだった。女性や少女が暴力を受ける危険性が最も高いのは、薪を取りに行っている間だったからだ。

コリンズは「食料や調理用燃料が不足しているところでは、ジェンダーに基づく暴力がまん延してるのです」と教えてくれた。さらに、コンロで調理するときの煙が命に関わる影響を及ぼすこともあるという。つまり、ダーバンの女性たちにとって、ワンダーバッグを日常の料理に取り入れる理由は実にたくさんあったということだ。

このバッグはすでに世界の150万世帯で採用されており、世界中のバイヤーの注目の的になっている。また、市の補助金制度のおかげで、このバッグが安く手に入る。ダーバン市は、2050年までにカーボンニュートラルになるという目標を設定。再生可能エネルギーへの転換、公共交通機関の整備、以前は荒れていた都市部の森林再生などに取り組んでいるが、ワンダーバッグの普及もそうした二酸化炭素の排出量削減のための戦略の一つになっているのだ。

コリンズは、ワンダーバッグについて、これが南アフリカのキッチンに普及し、食事のスタイルを変えてくれることを期待している。バッグのコンセプトは、「食材を入れて、沸騰させて、置いておくだけ。仕事から帰ってきて、すぐにおいしい料理が食べらる」。この簡潔なセールスポイントは、南アフリカだけではなく、世界中の人々にももっと響くであろう。

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