見本室タイルクラファン
Photo: ©︎Ayumi Okamoto

95年前のタイルショールームが解体危機、クラウドファンディングで支援募る

愛知で江戸時代から続く製陶所、タイル工業史の発展過程示す遺産の保存目指す

テキスト:
Hirokazu Horio
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窯業の町として知られる愛知県常滑で、江戸時代から続いてきた窯業史に残る産業遺産が解体の危機に瀕している。これを救おうと、有志による実行委員会が「杉江製陶所『見本室タイル』緊急救出プロジェクト」のクラウドファンディングを立ち上げた。

解体の危機に晒されているのは、「東窯工業」(戦前の名は杉江製陶所)が事務所として使ってきた「タイル見本室」という建物。この建物は95年前のタイルショールームだ。大正から昭和初期の日本のタイルメーカーの技術とデザインの精髄をそのまま観られる貴重な場所で、日本のタイル工業史の発展過程を物語るタイムカプセルである。

画像提供:©︎オカモトアユミ ©︎Ayumi Okamoto
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貴重な資料である救出対象は2つ。1つ目は床面の「無釉モザイクタイル」で、戦前のタイルカタログに掲載されたデザインが実際に組まれたパネルが何種類も残されている。

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2つ目は腰壁の「施釉陶器タイル」。これらは「美術タイル」とも称され、戦前のタイルの中でも技術的、デザイン的に最前線にあった製品だ。当時の建築界・陶芸界の研究と職人技が結実したもので、常滑にこうした最先端の「美術タイル」に挑戦した製陶所があったことはこの見本室の存在によって明らかになった。

このほか、制作できる職人が数えるほどしかいないといわれている、木材と真鍮(しんちゅう)という異素材の組み合わせが美しい貼板(はりばん)も、1928年のものと思われる製品が現存している。

建物の解体作業は進んでいるが、現状はタイル見本室の解体を一番最後にしてもらっている。約100年前の古い木造建築なので、重機が入れば30分で木っ端みじん。タイルを残すためには、パネルの形状のままタイルを切り出すといった丁寧な解体が求められる。

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こうした救出・解体作業のために、第1目標として100万円を設定。2022年6月22日時点で支援総額は300万円を超えた。100万円を解体費用に充て、今後も見本室タイルが見られるように環境を整えていくための方策として、第2目標を検討中だという。全く新しい形で編さんした展示や書籍化の企画も視野に入れ、行政との連携や後押しも促していく。

画像提供:©︎オカモトアユミ @Ayumi Okamoto
Photo: @Ayumi Okamoto

4月には「95年前のタイルショールーム」という見学会を開催、5月のゴールデンウイークには「タイル室見学会&工場構内発掘フェス」を4日間実施した。いずれも多くの人が押しかけるなど注目を集めている同保存プロジェクト。窯業史に残る産業遺産をアーカイブする活動をぜひ支援してみては。

杉江製陶所『見本室タイル』緊急救出プロジェクト」のクラウドファンディングの詳細情報はこちら

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